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「なるほど、オーラという概念がない…ねぇ…」



ふむふむ。とアイオラの父親が頷いて茶を啜っている。


とりあえず自己紹介をして、やはり目の前のイケメンはアイオラの父親とわかった。

名はコルディエというらしい。


…それにしても、イケメンだ。


アイオラはまだ未成熟で、未成熟だからこそ中性的で神秘的な色気があるが、

父親の方は神秘的かつ、成熟した雄の色香も感じられる。


その肌は透き通るように綺麗でいて、四肢にはしなやかに美しい筋肉がついている。


瞳は息子とそっくりで綺麗なコバルトブルー。息子のアイオラはタレ目だが、父親の方は少しキリッとした印象だ。多分アイオラのように光の加減で色が変わるのだろう。


髪はアイオラよりも濃い銀色で長く伸ばして後ろで一つに結われている。


目鼻立ちがハッキリしている、とてつもないイケメン。


そんなイケメンが湯のみで茶を啜っているのは、なんだかミスマッチに思える。


ティーカップで優雅に紅茶とか飲んでいる方がしっくりくる見た目だ。

アイオラは、ホットミルクがよく似合いそうだが。


話が逸れた。










「パパなら何かわかるかもと思って…ちょうどタイミング良く帰ってきてくれてよかったよ」


俺の横で、俺の手をニギニギしながらアイオラが父親に笑いかけた。

きっと俺が不安になっているのをオーラとやらで感じ取って安心させようとしてくれているのだろう。



息子の言葉にコルディエは頷きながらお茶を飲んで、とりあえず一息と息を吐いた。



「ふぅ…」


コトリと湯呑みを置いて、じっとこちらを見つめてくる綺麗な瞳に、アイオラに見られている時とは違うドキドキを感じた。


多分俺は、少しこの人が怖いんだ。



そう思っていると、

「そう、怖がらなくても大丈夫だよ」


と、俺の心境などバレバレなようで、軽くか苦笑された。



「…す、すみません…」


罰が悪くなり少し俯く。



綺麗な人は顔が整いすぎていて、何を考えているのかわかりにくい。その為、少し怖く感じるのかもしれない。

それと、俺にはオーラというものはわからないが雰囲気に少し圧があるいうか、なんというか…。


独特な空気を持っている人だと思った。


「大丈夫だよ、コクヨウ。パパは悪い人じゃないから…」


眉を八の字にしてずっと俺の手をニギニギしてくれているアイオラに弱々しく笑いかけながら、この子には出会ってからずっと助けられっぱなしだなと思った。

なんとも情けない…。



「なるほどね…」


ふむふむ。と、もったいぶったように顎に手を当てて頷くコルディエ。


「なんだよ。なんか分かったんなら早く言え」


コルは何でもかんでも1人で完結しやがる。

とリョクレンが先を急かした。



「アハハ…ごめんごめん。いやね、君この世界の人間じゃないでしょ?」


謝りながらしまりなく笑い、妻を宥めたコルディエだったが、俺の目を見て子供のような笑みに変わり、二パッ!表情を変えた。


「え?!」


俺を含めた周りが、コルディエの言葉に驚愕する。

その中で、先に声を出したのはリョクレンだった。


「この世界の…って…どういうことだ!?説明しろ!!」


掴みかからん勢いでこちらに迫るリョクレンに言葉が詰まった。

別に隠しているわけでは無いし、なんなら相談したかった話題だが…コルディエが何故、俺が異世界人であることがわかったのかという驚きの方に脳内が全振りしてしまって反応できない。


口をハクハクと動かすだけで言葉を紡げないでいると、ギュッと握られていた手に力が入ったのがわかった。

先程までの優しいニギニギとは違って、存在を確かめるかのような握り方に感じた。


横をむくと、俺を心配していた時と同じように眉を八の字にしているアイオラの顔があった。


その様子が気になったが、先にリョクレンの問に答える事にした。


「…はい。俺は、多分この世界の人間じゃありません。…気づいたらこの世界にいて、道端でアイオラに会って…今ここに居ます」


俺にも何が何だか…。と、続けるとリョクレンは少し落ち着いたのか椅子に座り直す。


自分でもよくわからない事なので、説明しろと言われてもこれくらいしか話せることは無い。



「そうか…」


俺の少ない言葉に、リョクレンが腕を組んで考え出す。その表情はなんだか暗く感じた。

その様子に

「何か気になる事でも?」


と、リョクレンの腰に手を回し、寄り添うよに張り付いたコルディエは妻の様子をオーラで何かを感じ取ったようだ。


張り付く旦那に、身体を預けるように重心をかけたリョクレンの様子を見て、2人は日頃からこの距離感なのだとわかった。


「あぁ…。……俺の故郷に、異世界人についての伝承があってな…」


「本当ですか?!」


帰れるかもしれない!と前のめりになるも、先程の暗い表情が脳裏を過る。


「…………チッ…あああっ!クソ!!……」


返って来たのは期待の言葉ではなく、舌打ち。

その様にビクリとして深く座り直すと、アイオラに握られている手がさらに強い力で握られたのを感じた。


「…アイオラ?」


少し痛いくらいの力で握られ、気になって声をかけるとアイオラはハッとして力を緩めてくれた。

アイオラの爪が俺の手にくい込んでいたようだ。


「あっ…。ご、ごめん!大丈夫?」


握っていた手をさすってくれたが、まだ何か落ち着かない様子。


「…どうした?大丈夫か?」


「……あ…」


アイオラは目を泳がせて、何かを言おうか、言わまいかと迷っているようだ。


「うん?なんだ?」


リョクレンの話も気になるが、今はアイオラの様子の方が気になる。

何せ、この世界に来てからまだ数時間かそこらだろうが、その間ずっと俺のそばにいてくれた人間だ。


俺たちのやり取りに気づいたリョクレンも、待ってくれているようで先にアイオラの話を聞くことにした。

言葉を促すように、握られている手に、こちらから力を込める。

すると、漸く決心したようで


「…………コクヨウ…帰っちゃうの?」


と、若干の上目遣いで恐る恐る聞かれた。







可愛すぎて…心臓が痛い…。







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