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覇王セリスの後日談  作者: ダンヴィル
1章、平和な世界
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契約内容


 私とセリスさんは商業ギルドに訪れました。


 この国で商売をするためには商業ギルドに登録し許可を取る必要であます。

 商業ギルドは冒険者ギルドと違いどんな小さな村にでも施設が存在すると言われていて、商業ギルドの無い村は私の故郷以外では一度として見たことがありません。


 商業ギルドへ来る途中にギルド内で出来ることを簡単に説明をしまして、途中話してくれたセリスさんが前にいた国でのシステムなのですが、セリスさんの方では大きな売買をする場所も冒険者ギルドと一緒になっていたり、銀行というお金を預ける専門の施設が存在するらしくてとても興味深かったです。


「はい、確かに。手続きは以上となります。

 これが商業ギルドの証明書です。売買を行う際に必要な証明書となり、再発行の際には全額負担となりますので無くさないようお気をつけください」


 初めは商業ギルドでの登録はしない予定でしたがセリスさんが登録をしたいと言うので登録を済ませました。


「セリスさんお疲れさまです」


「ありがとうメリル。次は向こうに行けば良かったんだよね?」


「そうですね。行きましょう」


 冒険者ギルドと違い商人ギルドは証明書を持っていると年間の売り上げの一割を払うという義務が生じます。

 ですので最初の予定では契約させずに私が代わりに物を売るつもりでした。


 今回のように高額な売買をする場合商業ギルドを使う理由ですが、商業ギルドなら商品次第ですぐに商会へ繋いでもらえ交渉次第でより大金を受け取ることができます。

 同時に売り上げの一割を抜き取られた状態で渡されるので年間売り上げの合算にはカウントされません。

 商会も持ち込まれた商品が貴重なモノであればある程良き関係を築きたい訳ですから商業ギルドから情報が直通するシステムを年間売り上げの差し引きによる支払いとは別口で多額を支払い有益な情報が最優先で入るようにセッティングされているとか……この辺は私からしてみたら天の上の話すぎて詳細まではわかりません。

 しかしそのシステムによってただの行商人がたまたま拾った何の鉱石かわからない物を売り、それがあまりにも希少な魔石であった為大手商会によるレートレースに入り一発逆転したなんて実話が存在するくらいです。

 その魔石とは別ですけど、偶々拾った錆び付いたなまくらの剣でそこに彫られていた家紋が見覚えがあるなと軽い気持ちで鑑定したら消失したはずの過去の英雄の剣だと判明した事があったなんて、すぐ側で発生してそれはもう大騒ぎでした。

 まったく、羨ましい限りです。


 そんな訳で今回取引相手として繋がったのは何と、大手商会でもこの辺では最も力のあるイザベラ商会との商談となりました。

 そのせいでアシストするどころか私が緊張してしまい、殆どセリス一人で交渉を終わらせてしまいました。


 交渉後にお金を受け取るか商業ギルドの口座に預けるかを選べるのですが、セリスさんは収納魔法を簡単に使用できるそうなので手元に持っておいた方が安全という話でした。

 ですが今回の手続きで口座を作ったので口座にも半分入れておくつもりだそうです。


「この度は良き品を誠にありがとうございます。

 今後ともイザベラ商会をご贔屓に」


 これぞ一流という見本のような美しい礼に私達は送られる。


「ふぅ……緊張しました」


 店が見えなくなってようやく解放された気がする。

 疲れた。


「メリルのお金じゃないんだから気軽にすれば良いだろうのに」


「そうもいきませんよ」


「まあ私の為に頑張ってくれたと考えたら嬉しいね。

 ふふ、なんか気分が良い。私の大好物のキャンディーをあげよう」


「ありがとうございます」


 セリスさんからキャンディーを貰い口にし甘い味が口に広がり緊張から解放された疲労が和らいでいく。

 セリスさんもキャンディーを口にし、楽しそうに話し出す。


「それにしてもたった三本だったのにけっこうな額になったものだね」


「1度の売買でここまでの値段になるなんて思っても無かったですよ……」


 それこそ先程例えに上げた英雄の剣とどっこいどっこいじゃないでしょうか?


「昔愛用していた中古品だったが、どれもこれもワイバーンくらいなら狩るのに申し分無いからね。

 多少扱いにくかったのを使いやすく調整したのもあって良い値が付いて良かったよ」


 今回セリスさんか売った物は魔法金属製を贅沢に使用した魔法武器です。


 それだけの物を当然のように所持していて、木製の食器でも売り払うかのような気楽さでそれらを売った魔法使いはきっと私の想像を軽く越えるくらい物凄い魔法使いなんだなと思いました。


「それにしても、予想以上に時間かかってお腹すいたね。

 せっかくだし私が奢るから何処かで食べていかないかい?」


 思いましたが、全面に好意をのせた猫のようなイタズラっぽい笑みを浮かべて気前良く奢ると言ったセリスさんの姿は、先程凄い魔法使いだと、ほんの少しだけ萎縮してしまっていた私に親しみやすさを感じさせました。


「良いのですか?ではお言葉に甘えて……

 ターニャは寝込んでますし……元々ギルドで鍛練すると話してたので別行動でしたし二人でですね」


「そうそう、さっきちょっとだけ見て良いなって目を付けた料理があったからそこで良いかい?」


「はい!」


 セリスさんが目を付けたと言う料理のある店へと向かう。

 セリスさん程気品溢れた人の選んだ場所なのですから期待するのも無理無いと思うんですよ。

 ですが実際は………


「う…………」


 私はその店を見て少しだけ抵抗を覚える。

 入り口では昼間だと言うのに当然のようにお酒を飲んで騒いでいる人達がいます。

 タバコの臭いも強いですし、つい足を止めてしまいます。


「どうしたんだい?」


「い、いえ。なんでもありません」


 私はその光景を見て少し躊躇しましたが、セリスさんは全く気にしていない様子です。

 この辺はターニャと同じ冒険者なんだなと思いました。


 冒険者と言う人達は何故かこう言う場所を好む方が多いのですよね。

 単純に量が多いからなのでしょうか?

 ソーセージ等のお肉が好きな人も多いですし。


 セリスさんが自分を冒険者だと言うように少しだけ冒険者らしい一面を見ることができた気がしました。

 しかし……正直に言うとセリスさんの見た目だとこの店は似合わない気がしてつい苦笑してしまいました。


「さて、それじゃあこれが契約通りの二割以上の料金ね」


「っ!?」


 簡単に注文を済ませてすぐの事、小銭でも扱うかのように金貨の入った袋が机に置かれる。


 私はそれをすぐに懐にしまい周囲を見渡す。

 周囲は先程と変わらず昼だと言うのに酒を飲み笑い会う酔っ払いが多く、焦ったのが変に目立って要らない事をした気がしてなりませんね。


「フフフ、誰も取ったりしないからそんなに慌てなくても良いだろうに」


 私の反応が面白いと言うかのように小さく笑う。

 しかし私は冷や汗ものですよ。


「セリスさん、金貨は20枚もあれば家が立ちますよ?」


「私の家は金貨20枚じゃ買えないな~。

 そうだね、今度連れていこうか?

 ただちょっと高い場所にあってすごく生活しにくいけどね」


 猫のような笑みを浮かべるセリスさんはそう言いながら人差し指を立てる。


「そんな気軽に帰れる距離なのですか?」


「聞いて驚け!我が家は飛行移動だけでなく転移魔法を搭載し雷を放つぞ!フハハハハハハ!!!」


「それは……何ですか?家じゃないという事だけはわかりましたけど……」


 そんな感じに他愛ない雑談をして時間を潰していれば料理が運ばれてきます。


 うん……凄く肉々しいガッツリとした料理。

 お肉とチーズで美味しそうではあるけれどとても多い。


 私の小柄な体型は当然として、セリスさんの美しい容貌とはほど遠そうなそれをセリスさんは豪快に食べ始める。

 その様子を出来る限り真似しようと食べ始めますが、やはり私にこれを全て食べきるのは難しそうです。


「そう言えばこれで契約は済みましたよね。

 これで死んでしまうなんて物騒な事は無くなって肩の荷が降りましたよ」


 ある程度料理を口にしてから私は契約の事を口にする。


 するとセリスさんは動かしていた手をピタリと止めて私の顔色を伺ってくる。


 元々の目付きが鋭いのもあってわかりにくいですが、少ない時間ながらセリスさんの様々な感情はもちろん、人柄から行動の理由や何を自分の価値としてるかもを見逃さない。と真剣に向き合い感じてきた私には感知能力に頼らずともなんとなくわかります。


 何故かはわかりませんが………怒られるのを恐れてる子供みたいな……そんな感じで…………


「……セリスさん?契約は済んだのですよね?」


「……すまない、本当は今朝すぐにでも言おうと思っていて、その、ターニャの出来事や、友達になれて、浮かれてしまい忘れていた」


 セリスさんは収納魔法から取り出した契約書を広げる。


「この契約の6番なんだけどね、『新たな身分証』って書いてあるでしょ?

 この『新たな』と言うところが重要であって、この冒険者ライセンスと商人ギルドの証明書って何年前から世間にあるものなのかな?」


「……少なくとも『新たな』と言えるほど最近作られたものではありませんね」


「うん、そうだね。更に言うなら『新しいの価値観』は人によって全然違う。私から言わせてもらえば、1日でも世間に響いてしまった情報は新鮮味が無いとしか言えないよ」


 た……確かに………むしろその考えはどう考えても商人の思考回路のような…………


「で……ですがそれはあまり関係ないのでは?

 5番の双方が認めれば契約は破棄されると書かれていますし」


「認めればね。……メリル。あのね、気を悪くしないでほしいのだが……」


 スゥと一息吸って決心をしたのかセリスさんは真っ直ぐ私の顔を見る。


「わかっている事かもしれないが、私はメリルを試したんだ。

 私の本当の望みは仲間を作る事で、最終目的は友達を作って一緒に過ごすことなんだよ。

 それは誰にでもできるくらい当たり前かもしれないけれど、私にはそれがとても難しい。

 何故なら私は力を持ちすぎているから」


 セリスさんは半分ほど食べたお肉を素手で握る。

 すると肉は沸騰するかのような、ジュアアァァ……と音を立て、やがて原型を留めぬチリと化して消えました。


「力を持ちすぎるとその当たり前が簡単に手に入らないんだよ。

 例え力を使いこなせていようが皆が私を利用しようとし、できないなら恐怖し驚異を無くそうと命を狙ってくるからね。

 こっちへ来たのだってその重荷を全部投げ出して友達を作って、その当たり前というモノの中で楽しく過ごしたかったから来たんだ。

 本当に下らないと思われるかもしれないけれど、私にはそれはどんな高価な物よりも価値のあるモノなんだ」


 契約書を丸め机の上に置き指を指す。


「私の目的を踏まえるとこの契約は私にとって正に一石二鳥どころか一石三鳥以上の代物。

 まず1つは身分証を手に入れ行動しやすくなる。

 2つ、単純に資金が手に入り金銭感覚を理解できる。

 3つ、契約相手の人柄を見定めて面白そうなら契約を持続させ私の目的に足り得る存在か見極めるまで共に行動し、つまらない奴ならトンズラする。

 この契約の6の『新たな』は『私の望む新たな』と書ている。

 この『新たな』は『世間的に新たに出回った物』と『まだ使用されてない新品の物』が『私の気分』でいくらでも変化するんだよね」


「なんか……子供の言葉遊びみたいですね……」


「確かにそうかもしれないけれど、商人なら覚えておいた方が良いよ。

 同等の条件で取引を行うとか、具体的に何を指してるかわからない言葉を使ってハメるのは基本だからね」


 セリスさんはいつもより少し力のない笑みを浮かべ水を一飲みした。


「それでこの契約の5。

 これも双方が認めれば契約は破棄されると書かれてる。

 けれどこれは『双方が同時に認めれば』なんて書かれていない。

 つまり、片方が1度でも認めてしまえばもう片方は好きなタイミングで認めて契約を破棄する事ができるんだよね」


「……完全にハマっていますね」


「そうだね、メリルはまんまとハマっちゃったね。

 ただ、ここまでメリルの事を気に入るのは誤算だったけどね。

 こうやって話しててメリルに嫌われるんじゃないかって恐怖を感じるなんて、年上の威厳や魔法使いのプライドもどこに行ったんだって自問自答したいくらいでねぇ……」


 そう言いながら椅子に体をもたれ天井を数秒眺める。

 セリスさんから感じるのは小さな期待と大きな不安。

 私なら受け入れてくれると思いながらも、それでも不安で仕方ないという風な魔力を感じる。


「メリル、こんな契約で縛らなくても私をメリルの側に置いてくれないかい?」


「……あの、何故私なんです?

 優柔不断で度胸も無い私のどこがそんなに気に入ったんです?」


 私の言葉を聞いて一瞬ポカンとしたが「アッハハハハハハハ!」と急に笑い出します。


「フフフ、優柔不断?

 馬鹿言うんじゃないよ、ちゃんと立ち止まって考えられているの間違いでしょ?

 度胸がない?素直で結構だね。フフフフ」


 まるで開き直ったように力強くそう言った。


 ただ、これは演技。

 不安で押し潰されないよう空元気で吹き飛ばそうとしている。


「……ちょいと手を出してくれないかい?」


 セリスさんがそう言い、私は素直に従うと両手で掴まれた。

 両手から柔く暖かな光が漏れていてとても暖かい魔力を感じる。


「昨日、メリルはちゃんと答えてくれたじゃないか。

 私がその答えを見つけたのは取り返しのつかない失敗をして大切な物を失って初めて見つけたんだ。

 だから、そんなメリルなら私の力のみに頼る事は無いと思ったんだ。

 力を求めるのは正しい大人のあり方かもしれない。

 ただ、大人であろうとしすぎると自分を見失う物さ。

 メリルは大人を保ちつつ自分であろうとした。

 それはこの私ですら一度見失った物だよ?

 確かにメリルの力はまだまだ弱いけど、私は確かにメリルの強さを確認した。その強さはきっと私が側に居ようと変わらない。

 だけど、もしその強さが折られそうになった時は私が守ってあげるから……私と………友達でいてくれないか………?」


 そう弱々しく私の顔を覗いてきたセリスさんの表情に一瞬ドキッとした。

 頬は赤く、本当に弱々しく涙を浮かべ、私の知っているセリスさんとあまりにもかけ離れていて……


「……私は契約が完遂された事を認める」


 そう口にされた途端に机の上に置かれた契約書は青い炎を発して一瞬で燃え尽きた。

 そしてセリスさんは私に優しげな笑みを見せてくれた。


 しかし契約書が燃え尽きても私の手を離そうとせず、笑顔とは対照的にその両手が震えているのが分かる。

 だからこそ、私はセリスさんの手を両手で包んだ。


「……ドリーミーであるこんな私で良ければ今後ともよろしくお願いします」


「言ったね!今絶対聞いたからね!

 覇王は都合の良い事は絶対聞き逃さないからな!

 よし、契約しようじゃないか!」


「もうその契約は沢山です!」


「え?……そうかい?………あ、そう言えば今更だが何で私の事は呼び捨てで呼んでくれないのかい?」


「え……友達でも年上をさん付けしないのは少し躊躇いがありますし……」


「……ターニャは良いのに?」


「ターニャとは……1つしか変わりませんし……」


「……そっか。でも、今はまあ良いや。

 ねえ、これからメリルの事沢山教えてくれないかい?」


「セリスさんの事も教えてくれるのなら良いですよ?」


「ん?私の事が気になるのかい?

 私の基本となる事を教えてくれた師匠は6人も居てね、全員が盗賊だよ」


「やっぱり盗賊だったんですか!?」


「えっ?……んん?やっぱりって?」


 その後私とセリスさんは互いに沢山聞き会いました。

しかし聞きたいこと全て聞くには時間の関係でできそうになく、これからの長い旅の間にでも聞き会おうという事で落ち着きました。


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