地下
「な……なんですかあの空の巨大な岩は………」
巨大な岩……確かに今の位置からは城は見えませんしね……
それよりセリスの事だから私やターニャにしか見えないようにしているのかと思っていましたがどうやら違うようです。
ハリーさんだけでなく学生達もとても驚いた様子で、レイル教授なんて歓喜の声を上げてテンションがおかしな事になってますね。
「セリス大変です!また天空城が見えていますよ!?
このままではまた帝国中が大騒ぎです!」
いきなり現れた天空城が一応帝国の領土となっている黒雨の森に攻撃を仕掛けたって大変ですよそれ!?
天空城はこんな深い穴を開けるだけの魔力攻撃が可能なんて知ったら国中がいつ攻撃されるか分からない恐怖で混乱してしまいます!
「いや、この位置からじゃないと見えないようにしてあるから平気だよ」
「いや、私らには見えてるだろ?」
「ターニャもハリー君と行動してて悪い気はしてない様子だし、学生はミィの友達だろう?
レイル教授には単純に見せたかった。自慢したかったからね」
「自慢ですか?」
「今回のゴタゴタ終わったら乗せてあげるのも良いかなって」
「本当か!?じゃあ聞きたいのだが今のは……」
メリー教授が飛び付いた。見た通り。
尻尾がピーンと立っていて興奮しぱなっしで感情の魔力が凄い。
セリスも「良く聞いてくれた」という様子なので難しすぎる事は勝手にさせておきましょう。
セリスが大丈夫と言い切ったのですし天空城は置いといても平気でしょう。
それより……
「ターニャ、ハリーさんと行動してて悪い気はしてないって、具体的にどう思っているんですか?」
私としてはこっちの方が気になる。
男女の関係とは無縁そうなターニャですもの、可能性があるなら気になる。
「それは……」
「それだけど男縁無いんだから理想の男は諦めてセシル君で妥協したらどうなんだ?
正直、ここまで純粋な好意を向けてくれる相手は今後絶対に現れないぞ?」
煮え切らない様子のターニャに割り込んできたのはミィさんで、ずいぶんと割り切った提案をしてくる。
「いや、だが2回しか合ってないし……」
「乙女か」
驚いた……ターニャのこんな表情初めて見ましたね。
ミィさんも言いましたが乙女って言葉がピッタリ………ターニャねぇ。
「何ニヤニヤ見てるんだ?」
「いやぁ、ターニャがねって」
照れちゃって可愛い。
「強要はしないがキープしとくくらいアリだと思うぞ?
もし嫌なら突っぱねれば良いだろ」
「嫌なんて言ってないだろ…………」
「だってさ、良かったな~」
「は、はい……」
ハリーさんの様子にミィさんは笑顔を向ける。
「ねえねえミィちゃん、さっきからミィちゃん他人の事ばかりからかってるけどミカエルさんと何か無いの?」
「いやいや、アーちゃんさ、するにしても魔法大学卒業してからかな」
「え?そんな余裕……てっきり卒業後教授目指すのかと思ってた」
「え?何で?」
「だって十分な実積残しそうじゃん」
「いやエアボードは……あ~…………でもそういう道も楽しそうだね」
「でしょ?」
ミィさんと親しそうに話しているのはアーちゃん……あ、思い出しました、確かアンナさんの筈です。
「アンナさん……でしたよね?」
「え?あ、はい、アンナです」
「その……ミィさんがミカエルさんとって本当ですか?
あまりイメージが………」
「本人が目の前にいるんだから直接聞けば良いだろ。
ミカエルの事は嫌いじゃないからそういう関係になるのもアリだとは思っているぞ?」
「とか言って告白されるまで何も言うつもり無いでしょミィちゃん。
自分から言っとかないとそのうち………修行とか言い出して山籠りしそうな気がするんだけど…………」
「あり得る。ミカエルならやりかねない」
えぇ……どこら辺に惚れ込む要素があるのあの人。
向こうでセリスが天空城の事を簡単に説明をしていてそこにミカエルさんも混ざってますけど……失礼ですがそんな人がセリスの話を本当に理解しているんでしょうか?
それよりミカエルさん身長二メートルありそうなくらいおおきいんですよ?
それに対して…………
「……おっ?なんか言いたい事があるならハッキリ言うんだぞ?
ミィお姉さんは怒らないからな?」
「い、いえ……ミィさんが小さめなのもありますがミカエルさんが大きすぎるんだと思うんで」
ミィさんの身長は私と同じくらいの145くらい。
その身長差はあまりにと大きくて……
「私とセリスですらかなり身長差ありますが、私とセリスの倍くらいは開きがありそうですよね?」
「あ~……確かにミィの○○○にミカエルの○○○○○○のは物理的に無理そうだよな」
!?
えっ……ターニャ?嫁入り前のお嬢様が何言ってるの!?
ハリーさん!ハリーさんいる前で何言ってるの!?
確かに身長差気にしましたけどそんなところまでは……
「え……あの………私は別にそこまで考えては…………」
「ば~か、私はミカエルの○○○を○○○○に○○○○で○○○○○されたくらいで壊れるような柔な体はしてないぞ?
魔王以前に私は狼系ワービーストでも最強種なのは伊達じゃないぞ」
!?!?!?
「いやいや、さすがにそこまでしないんじゃないか?
案外ああいう奴に限ってソフトな感じだったりとかあり得そうだが?」
「いやいやいや、もしかしたら○○○じゃなくて○○で○○○を受け止めさせるのを求めてきたりとか」
「どんな性癖歪ませたんだよそれ、○○を○○○○○○までならまだ分かる」
なにこれ…………なにこれ。
「下品ね」
「………ですね」
アンナさんに激しく同意して頷く。
私達を他所にセリスに呼ばれるまでターニャとミィさんの下品なトークが続きました。
ターニャ……ミィさんはともかく貴女いったいいつそんな知識を得たんですか、正直聞いてて怖かったんですけど………
・
「よし、到着」
天空城によりできた大穴をレビテーションで降りてきました。
穴の下は日の角度の問題で真っ暗ですがセリスの魔法で周囲を見渡せる状態です。
しかしまあ……本当に綺麗なまでの丸い大穴だなぁとまるで他人事のように見上げてしまいます。
「なんか……既に自分がとんでもないこと言ってしまった気がします……」
「こういうのセリスの方じゃ後の祭りって言うんだぞ」
「後の祭りですか、なるほど。何と言うか……言い得て妙ですね」
天空城で大穴を開けた理由ですが、セリス曰く綺麗に大地を取り除きたかったらしいです。
経験上地下に研究施設がある可能性があると言うのですが、実際に降りてみて分かったのですけど廊下があります。
その廊下まで行くのに飛行するかクレーターを昇るなりしないといけないのと、どっちから行けば正しいのか分からないという問題が存在しますが入り口を探す手間は確かに省けました。
「…………」
まあ、どちらに行けば良いか分からないのは確かなのですが………
「セリス、たぶんあっちに行けば下の方へ続いています」
「ん?何か分かるのかい?」
「はい、向こうの方が魔力のような臭いがしてくる……ような………すいません、私も何でそう思うのかよく分からなくて………」
「まあどうせ手当たり次第で行くつもりだったからそっちから行こうか」
「あ、あと杖返しますね」
「いや、それはメリルが持っていておくれ。
その方が安心できるから」
「そうですか?分かりました」
・
ミィさんを先頭に、セリスを最後尾にして廊下を進みます。
やはり光源が無いのでセリスの魔法で照らしている状態です。
廊下を進んでいるといくつか部屋があるので一つ一つ中を確認しましたがベッドが1つあるくらいで何もありません。
こんな場所に廊下があってベッドが置いてある部屋がある時点で変である事は確かなんですけど………
「よっと」
そんな気の抜けた掛け声でミィさんが仮初めの魔王に触れると、とてつもない音と共に仮初めの魔王は廊下の奥へ吹き飛び激突して潰れるような音がする。
「はぁ、これで何匹目?」
「地上で遭遇したのを合わせれば23だ」
「そっかぁ……セリスは殺させない方が良いと思ってたけどいざとなったら頼むかもね」
そうですよね、まだ数十分くらいだというのにもう10体以上と遭遇しています。
この場所の異常さから学生達は帰すかという意見も上がりましたが、レイル教授が終わるまでは帰らないと言い出して他の人達も同じように……
このような危険な場所にセリスやミィさんなんて強すぎる護衛を付けて探索できる機会なんて今後もう無いと結論付けてから帰るという選択肢を選ぶ理由が無くなったそうです。
「………あ。そこに罠があります。
解除するので少し待ってください」
「お~、頼んだ~」
む、今回の罠は連鎖的に小さな爆発を起こして物理的に通路を埋めて侵入者を押し潰す感じですか。
さっきのもそうですけど殺意が高いですね。
……………ふぅ、これで完了。
「終わりました」
「だんだん手際が良くなってきてるんじゃない?」
「その分罠と罠の間隔が段々狭まってきてますよね」
「原始的な細工はともかく魔法的な罠を見破るの私苦手なんだよなぁ……本当に助かる」
「これだけ多いとここの住人は生活が不便だよな」
「魂に反応するタイプなので登録しておけばかかりませんよ?」
「そうなのか」
「ま、本当なら罠なんて置き去りにして全力で走り抜けるのが最速なんだけどこれだけ人数がいるとね」
「それができるのはミィさんやセリスくらいだろ」
「そうかもな~……っと、なんか広いところに着いたぞ」
扉を開き中に入るとそこは書庫といったような広い場所でした。
今までの部屋と違って天井が高く、その天井まで届くほどの本棚がズラリと並んでいる。
これだけ沢山の本棚があるというのに本が入りきっていないのか、それとも単純に戻していないだけなのか、床に本が積み上げられていたりと高価なはずの書物が雑に扱われているように見えます。
「これは凄いな……」
「そうだね、効率を考えて3グループに分かれて探すか」
「え?3グループって3つ目の大丈夫なのですか?」
「強い奴だけで固めれば大丈夫だぞ。
ミカエル一人で仮初めの魔王を同時に3匹は相手にできるぞ」
「じゃあターニャも一人で3相手にできまね」
「いや、悔しいが私は1匹、2匹でかなり辛いな」
そう苦い顔をすターニャに対し、フッフッフ……と腕を組み「それはどうかな?」と自信ありげなレイル教授が割って入る。
「私とメリル君も加えれば20は行ける気がするよ?
そもそもメリル君がいる時点で不意打ちを受ける事は無いだろうし」
「え……私は「ま、そういう訳でメリル、ターニャ、ミカエル、レイル教授と………セシル君と従者のネイティは当然付けて5人も戦えるのが纏まれば良いだろうね」
「前衛3人後衛2人護衛対象1人なら大丈夫だろ~」
…………当然のように私が戦力にカウントされてしまいました。
当然私は後衛ですよね?ま、まあ5人もいれば大丈夫な気がします。
ただ、ここでは狭いですし魔砲は封印ですね。
セリスから借りた杖を使いましょう。
この後緊急の時用の魔法具を渡されたりして行動に移りました。
3方向に分かれての行動。
う~ん……まあ私の方は大丈夫な気はしますけど、セリスは大丈夫でしょうか?
最近は減りましたけど急に一人の世界に閉じ籠りますからねセリスは。
・
………で、私達の方なのですが。
「この本重要な本な気がしま………あぁ、また駄目です読めません」
「よし、任せろ!ふむふむ、これはまた………屍食教典儀って凄いの見付けてきたなメリル君」
「そんなに凄いのですか?」
「ええ、人種を止める方法すら載ってる不死に関係する禁書クラスだよこれは」
「えっ……」
「何で若干引いてるんだよ……さっきからピンポイントで引き当ててこっちが引きたいんだけど」
セリス達と分かれてから歩いて魔法具等を探そうとレイル教授が言い出して本は見向きもしないで進んでたのです。
しかし、どうしても、何故か、なんとなく、何でなのか自分でも分からないけれど、それがとても気になって本を手に取り開く。
けれど読めない。文字が古すぎるのか暗号化されているのか読めない。
読めないけど気になるからとりあえず持っていく事にしました。
これが最初。
その後も何度かそれが続いてハリーさんに質問されまして、その本を皆に見せたらなんとレイル教授は読めたんですよ。
しかもセリス程では無いにしても物凄く早く読み上げてしまって。
それからは今のようにレイル教授が読んで内容を簡単に説明してくれます。
「ちなみにゾンビの生成方法とかも記されていて死者への愚弄は約528年前に世界協定による法律で禁忌として扱われるようになったんだよ。
だからこれも表向きは存在してはいけない類いの物だね」
「え……えっ?…………ターニャ?」
「……はぁ、まあ一応帝国の貴族だし証拠として預かっておくよ」
「ありがとうございます」
自分で見付けといて何ですけど本当に助かります。
なので深々とお辞儀をしました。
研究資料として王国に持ってかれるのも、自分で持つのも怖いですよこんな危険な本。
「まあ呪い系統の魔法ではあるけど魔法具には関係無いから私には不要な産物だね」
「え?死霊系統じゃないんですか!?」
「死霊系統なんて系統は無いんだよ。
呪い系統の中にある攻撃的な魔法の大半が死霊魔法というだけ」
「そうなのですか……」
驚いた……セリスは教えてくれませんでしたから。
「メリル、もしかしなくてもセリスが教えなかったのは知ってほしくないからじゃないのか?」
「なるほど」
確かにそういった事は何度か口にしていますよね。
こういう事は知らなくて良い、知ってほしくないとかそうやって無理矢理話題を終わらせたり。
それに、種族を止める切っ掛けになる事は教えないと言ってましたからたぶんそれに当てはまるのでしょう。
「それ以前に死霊魔法を知ろうとする行為が犯罪スレスレだぞ?」
「あはは……ですよね~」
うん、世界協定で禁忌って言っているそれに触れるって……
「それにしてもドリーミーが優秀だというのは知っていたけどここまで優秀だなんて思っていなかったよ。
確かドリーミーは他人の魔力から感情を読み取り心を見通せるのだろう?」
「見通すまでは行きませんけど感情を読み取るくらいの危機感知能力が無ければ今頃絶滅しているんじゃないですか?」
「ふむ……ドリーミーは人種として極端に弱い部類であるからその可能性はあるね。
魔力への理解力やらを取り除けばどれを取っても他の人種に劣る。
そもそもドリーミーは数が減りすぎてその生態をドリーミー自身も把握できていないのが問題であり、神話の話になってくるが蠱惑の翼も正体不明だね。
名前からして幻惑魔法の最上位を越える能力である可能性もあるが………」
こんな所で蠱惑の翼という単語を耳にするとは。
私は使えるらしいですが意識的には使えませんので余計な事言って質問攻めにされてはたまりません。
答えられるような事は何一つ知りませんもの。
「あ、でもドリーミーの中にはある程度過去の出来事を覗く事ができる人が~…………」
「………どうした?」
「………私が本を当ててるのはもしかしたら過去を感じ取っているからかもしれません」
「……はぁ?」
何言ってるか分からないって感じにされてしまいましたけど、私も何言ってるのかよく分からないです。
そう感じただけですし。
「少し待って下さい……」
…………………いける。
「………アカシックレコード」
私がそう呟くと同時に、周囲の魔力が私へと集まる。
そして激流のように様々な光景が私の脳裏を過る。
………ミィさん?
私の脳裏に目まぐるしく、まるで万華鏡のように映る複数の光景の中でミィさんが魔方陣を描く姿が見えた。
・
「………メリル?」
アカシックレコードと呟いてからそこにメリルの存在感が無くなった。
目の前にはまるで良くできた等身大のメリルのオブジェが置いてあると誤認してしまうほど生物としての存在感が無い。
「うわ、メリル君本当にアカシックレコード使えてるよ。
それもこんな簡単に……」
「これがアカシックレコードの効力なのか」
「あぁ、この場所で過去に起きた出来事を見る事ができる力である。
ただこれを使用している間は膨大な情報処理に追われるため無防備になってしまうんだよ」
「ふ~ん……」
存在感無いのに口を絶え間なく動かしてぶつぶつ呟いて……
顔の前で手を振ってみたけど本当に反応無いな。
「…………水色に白の装飾か、金に余裕ができてから良い布買うようになったよなメリル」
「当然のようにスカートの中覗くの止めなさい。
魔法使いへの侮辱だよ、男は向こう向け」
スカートを捲って潜り込むように覗いたら当然のように叱られた。
いや、メリルってエロい話苦手だから、ここまで集中?……まあ集中で良いか。それでここまで集中していると邪魔したくならないか?
普段のメリルなら絶対に反応するだろうに全く反応しなかっけどさ。
「魔法使いにとって侮辱?
教授は魔法使いじゃなくて呪い系統の教授で、メリルは魔法が得意な商人だから大丈夫だ」
「なるほど。確かに私にとって魔法具が大好きであっても、魔法はその為の手段でしかないからそれと同じだと言うことか。
だがそれとこれとは話は別だ」
「そうだな、同意見だ…………メリル?」
相変わらずぶつぶつと何かを口にしているメリルの手が動いていて、その手から光の線が伸びる。
「メリルッ!!!」
「………えっ!?何ッ!?」
魔力も込め大声でメリルを威嚇した事でようやく戻ってくれたようだが遅かった。
メリルが描いた魔方陣が起動し私達は別の場所へと飛んでいった。




