表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覇王セリスの後日談  作者: ダンヴィル
三章、闘技大会
45/119

覇王セリスの後日談3


 4月4日

 祭りが終わった次の日なのだが、今回はもうファスタムから出る事になった。

 あんな事になったし今は見逃してくれているだろうが長く滞在すればファスタム辺境伯が何か言ってくるかもしれない。

 二日酔いで死にそうだったターニャには悪いが魔法薬で強制的に全快してもらい町を出た。


 荷馬車の中でファスタムで起こった事を説明していた時なのだけれど、メリルがずっと言いたかったがタイミングを逃し続けていた事を思い出して……



 ・



「……と、セリスが踊るようにミスリルの剣でバッタバッタと薙ぎ倒してですね」


「魔法使えよ。手抜きしてたのか?」


「それだと簡単過ぎるだろう?剣だって使わないと鈍ってしまうし」


「それはそうだが……」


「仮にあの場面で魔法を使うとしたらメイルシュトロームとかエレクトリカルカノンになるだろうねぇ」


「聞いたことありませんね。どれ程の過剰威力なんですか?」


「流石メリル。どちらもダンジョンその物に影響を及ぼすよ」


「たぶん影響なんて表現じゃ足りねーだろそれ」


「話が反れましたね、その後……いろいろあってセリスが人形を召喚して………セリス、少し良いですか?真面目な話です」


 このタイミングでメリルが思い出したんだよね。

 まあこの時の行動がそれを言わせる原因だったから当然なんだけど。


「ん………何か少し怖いけど構わないよ」


「では……この前にセリスがしていた戦争の話もそうでけど、セリスは何でもかんでも最悪の事態ばかり想定しますよね」


「ん?まあ最悪を考えておかないとそれより最悪が起きた時の絶望が凄まじいからね」


「うん、セリスが真面目に考えてくれる事は嬉しいですよ?

 けれどやっぱり何かしら行動に移す前に教えてほしかったです。

 私も時々、これくらいなら良いかなってなりますけど、セリスの場合特に意識して貰いたいんです。

 今だからわかりますが、セリスの基準はその強さに比例して大きいんですよね、これくらいまでなら報告しなくて良いって範囲が」


「なるほど……確かに言われてみればそうかもね」


「ですよね。それで今回の戦争云々についてもなのですが、予め相談してくれていればもっと別の方法を取れたかもしれません。

 セリスは最悪の事態を避けるために悪い事態を甘んじて受ける姿勢ですし、それだけの覚悟がある事もわかりますけど……

 何でもかんでも一人で抱え込みすぎです。

 それだけ強い力を持つのだからそうなってしまうのもわかるのですが……」


 この時のメリルはとにかく言いづらい、というよりどう伝えたら良いか悩みながら話している様子だったが伝えたい事は十分把握できた。


「なるほど……つまり私はお節介だった訳だね」


「あ、いえ、そこまでは……」


「ううん、わかってるからそれで良いんだよ。

 前々からそれはわかっていた。

 大切な人に力の全てで幸せになってもらう事の何が悪い。

 メリルを選んですぐの頃はそう思っていたんだよ私は。

 けれどメリルが望んでいなければお節介でしかないと理解した。

 こんなにも頑張っているメリルの行いを踏みにじるような行為になってしまうから止めよう。

 そう考えて、わかっていても不意に抜け落ちてしまうんだ。

 それこそメリルの言うように私自身の力からそう抜けてしまうのかもしれないね。

 私もこの世界に来て、メリル達と過ごして、メリル達と同じものを食べて、やっとこの世界の住人になれた気がするんだ。

 だからこそ普段は強すぎる力は使わない。

 だからこそ、守る為に必要だと思った時は絶対に使うから」



 ・



 私の考えを伝える事はできたがそれでも胸に刺さるものがあったのは事実だ。

 この辺は難しいけれど向き合うしかない。頑張ろう。



 4月5日

 とても平和だ。

 小さな村で泊まる事にしてターニャを捻る。


 今回のターニャは目眩ましを使ってきたが、目眩ましでできた隙を使って「私の手に渡った」武器を回収するのは駄目だ。

 呪い系統魔法が使えるとわかったなら絶対にしてはいけない失敗だ。

 一度相手に渡った武器は手にしてはならない15点



 4月6日

 今日は雨だったのだけど……



 ・


「あ、セリス。ここにいましたか」


「ん?どうしたんだい二人とも」


「セリスこの紙持ってみろよ」


「ん、わかっ………」


 私が触れると紙は黒くなり崩れてしまった。


「あちゃー」


「こりゃスゲーな」


「え?その……ごめんね?」


「ううん、ただの試作品だし良いよ。

 触れた人の魔力量によって色を変える紙を作ってみたけどセリスは測定不能だね。

 測定不能だと崩れちゃうのか……」



 ・



 ……と、最近教えた魔法具の作り方で面白い物を作っていた。

 私のような魔力を直視する事ができる奴ばかりだった前の世界では存在しない発想に驚かされた。

 そして驚く事にこれは魔力をどれだけ抑え込んでも結果は変わらない。

 つまり隠す事ができない。

 メリルはもしかして天才かもしれないね。


 ちなみにメリルは青でターニャが緑だった。

 白、ピンク、赤、黄、緑、青、紫、グレー、黒の順番で黒が一番高い事を想定していたらしいが、その上に消滅という段階ができた。



 4月7日

 目的のロンドミシアに着いた。

 商談を済ませてから魔法具の作り方アドバイスが欲しいと言われて手伝った。

 珍しくターニャも参加し、メリル作疾風の矢ができた。

 製作難度としては中級クラスなのだが案外簡単に作ってしまった。

 恐るべしドリーミー。



 4月8日

 ターニャを捻ったが当然のようにメリル作の殺傷能力高い魔法具使うのはズルイと思う。

 ターニャ曰くヒューマン相手じゃなくてドラゴンに挑んでるつもりだから別に問題無いと言われたが、私が並のドラゴン程度と同格か。つまらない冗談だと思った。


 4月9日

 今回はメリルと模擬戦をした。

 と言ってもほぼ私が生きた的になってたのだが。

 しかしメリルが使う魔法はどれも精度が高く、中でも一度他の魔法が触れるとその魔法を強化し連鎖的に発動するチェーンマジックという呪い系統の設置型オリジナル魔法を作成していた事にはとても驚いた。

 メリルは最適化の最終段階である覚醒が済んでいない為1度に大量の魔力を使えず小出しするしか無いのだが、それなら初めから外に出しておいてクッキーでも作るかのように纏めて丸めた方が良いと思ったなんて、訳のわからない目の付け所。天才だね。



 4月10日

 町を出て小さな村で一休み。

 これから酒を飲む。



 4月11日

 メリルが興奮した様子で空を指し「あれ見て、ドーナツみたいですよ」と、その現象を一番初めに気が付いた。

 なんと白虹が月にできていた。

 魔法で上手く調整して3人一緒に写った写真など沢山撮った。



 4月12日

 追い剥ぎに遭遇したのだが……



 ・



「全員で40人です」


「中々多いな」


「前も言った気はするけど有象無象が千居ようが敵じゃないよ」


「まあ今なら少しわかるな。

 それじゃちょっと様子見してくるよ」


 そうやって降りたターニャが岩影へ消えるのを見送ったのだが、すぐにゾロゾロと沢山引き連れてきて何事かとメリルと目を合わせた。


 なんでも彼らが言うには村の方で土砂崩れが発生し、別の村へ行く近い方の道が完全に塞がってしまったらしい。


「お願いします!何卒、何卒!」


 鉱山にある村で岩場地帯なので畑は当然無く、既に食用でないものも食べてしまったとかで生きる為に恵んでくださいと武装した連中に頭を深々と下げられた。


「……なんだいこれ?」


 つい漏れてしまった。

 平和平和とは思っていたが盗賊になってもおかしくない連中まで平和主義者とは恐れ入ったね。

 武装してるのは念のためだろう。

 命まで奪おうと覚悟してる奴は一人も居なかったが、逆にそれがムカついた。

 まあ殺しはしないけどさ。


「仕方ありませんね。セリス、大鍋を出して下さい」


「え?あ……あぁ、わかったよ」


 メリルに言われたように大鍋を用意する。


「ウォーター」


 メリルのウォーターで鍋が水一杯になり、大量の小麦粉と野菜をグズグズになるまで煮込み当然のように炊き出しを作った。

 しかも餓えた状態で重い物を食べると死ぬという事を覚えていたのかとびっきり薄いスープだ。


「セリス、お願いがあるのですが食肉になりそうなのを狩ってきてくれませんか?」


「私が?……メリルじゃなくてコイツらの為に?」


 助けてくれと願ったくせに武器を外そうとすらしなかったコイツらの為に私が?

 それもメリルを置いて?


「お願い、セリス」


「……………わかった。わかったからもう」


 流石にズルイ。

 そんな真っ直ぐ見詰められたら断れないだろう。

 この時メリルがしていた表情は、真剣だけれど不安そうで、メリルの見せる表情の中でも屈指の美しさがあるものだった。


「ありがとうセリス」


「あぁもう、ズルイというか図太いなぁ……」


 とかぶつぶつ言いながら私は崖から飛び降りて下の森でモンスターを狩り食料確保して色々大変だった。



 ・



 私達は少し快適な普通の旅を楽しんでいるので大きな魔法は基本使わない。

 けれど闘技大会に間に合わなさそうなら魔法でとっとと移動しようと決めてこの村で開通を待つ事にした。



 4月13日

 村での食料事情をある程度解決したのでゆっくりと過ごした。

 メリルが外の風景をキャンパスに描いていたのでそれをずっと眺めていた。

 集中している時のメリルの表情はとても美しいと思う。



 4月14日

 鉱石探してそれなりに本気で掘り進んでいたのだが……



 ・



「…………」


「何したらこうなるんだよ」


 石油が沸いた。

 良く燃えるだけのゴミじゃないか。

 途中から純度の高い魔鏡石が取れていた時点で気づくべきだったね。

 堀当てた勢いで私は外まで流され全身ベタベタになり間欠泉のように吹き出すその光景を眺めていた。


「あの……この黒い液体って何ですか?」


「石油だよ。良く燃えて燃やすと殺傷能力低めな毒をばら蒔くゴミだよ」


「良く燃える……何かに使えないのですか?」


「籠城戦の時に燃やすとかかねぇ?」


「なんだそれ……毒も出るんだろ?エグいな………」


「とりあえず魔法で埋めよう」



 ・



 その後立て札を立て、どうにかした付近で穴を掘るなと注意書をし、駄目になった食料の確保をしに崖から飛び降りた。

 どうせなら温泉でも出てくれれば良かったのに。



 4月15日

 結界の中でメリルが一人で石油を鍋に入れて熱していたのを見つけた。

 何故そんな奇行をし始めたか分からず目を疑った。

 どうにも毒が出るのだから錬金術に使えるんじゃないかと思ったのだとか。

 私も混ざって熱した石油にポーションの原料を混ぜたり、インクが作れないか割合考えて紙に塗ってみたりと楽しかった。

 この時のメリルは純粋に魔法を楽しむ魔法使いの表情をしていたし、私もとても楽しかった。

 それにしても、やっぱりメリルは天才だ。



 4月16日

 昨日、というより最近の行動はあまりにも女性らしくない。

 なので手間だがいつも以上にメリルのオシャレに力を入れてみた。

 指の隙間に魔力で熱を発生させカールにしてみた。

 メリル達がカールをモコモコと言い出したのは凄く可愛かった。

 ついでにターニャの髪もモコモコにして私のもしてみたは良いが、私はもう少し髪を伸ばしてからやるべきだったね。



 ………………………………………………………………………



 4月28日

 ようやく道が開通した。

 こっちの世界の魔法使い貧弱すぎだ。

 まあその分とても楽しめたし写真も沢山撮ったからね。

 メリルは石油が気に入ったのかマジックポーチにビン10本分も入れていた。

 ようやく出発だと思った矢先、大量の荷馬車等が通った影響で巨大なモグラ、アースドラゴンが出現した。

 恐らく土砂崩れもコイツが原因だろう。

 メリルもターニャも物凄く怯えて可愛かった。

 しかしターニャは腐ってもこの私が鍛えたのだ。

 たかがモグラに怯えるなんて許さない。

 私とモグラどちらが怖いか言ってみなと全力の半分ほどでターニャに殺気を当てればセリスに決まっていると即答だ。

 当然だ、私ならモグラなんぞ拳一発だからね。


 そしてターニャ一人で戦わせてみたけど案外簡単に勝利してしまった。

 それでも良い経験になっただろうね。

 その後アースドラゴンを引きずって引き返した。



 4月29日

 今日は休んで明日出発。

 ターニャが魔力痛になったのでマッサージでほぐしたらメリルにもやってほしいとねだられて幸せな1日だった。



 4月30日

 今度こそ出発だ。

 一昨日の出来事が嘘みたいに平和だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ