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覇王セリスの後日談  作者: ダンヴィル
2章、軽い刺激
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答え


 町を進めば様々な楽器で音楽が奏でられている。


 中には楽器と言えるかわからない、水の入ったコップ等で音を出す光景などそれはとても興味のそそるものも見受けられました。


「不思議ですね、水の量が違うだけでこうも音が違うなんて……」


「水だけじゃなくてノコギリなんかも曲げた角度で音が変わったりするんだよ?」


 隣にいるセリスはそう言いながらクッキーを1つ口に入れ、私にも食べるか聞くように差し出してくる。


「そうなんですか?あ、いただきます。

 ところでセリスは何か演奏できたりするんですか?」


「ん~……私はピアノとバイオリンを少し……」


「……聞いといてなんですが意外ですね」


「本当になんだね」


 いやだって……セリスの居た世界と言うのは物騒すぎる気がするし………


「てっきりそんな事してる余裕は無かったんじゃないかと思えってたから……」


「間違ってないけどそれでも色々やってみようとする人は居るんだよね。

 その物騒な弱肉強食の世界でもお人好しはどこまでもお人好しのまま死んでくれたし。

 変わり者はどこにだっている。

 でも、私はそんな変わり者に心の底から感謝しているよ。

 でなきゃ私はメリルに出会えなかったからね」


 私の手を握りセリスはとても嬉しそうにそう言った。


 その表情がどこか色っぽく感じて私は恥ずかしくなるけれど、それもまた心地良い気がして私も握られた手を握り返す。


「それなら私もその人にどれだけ感謝をしてもしきれませんね」


「あの馬鹿の事だから笑って気にするなとか言いそうな気がするけどね」


 話をしながら足を進めていると屋台の並ぶ通りが私の目に入ります。


「そういえばけっきょくあの通りを見れてませんでしたね、行きましょう」


「ん、そうだね」


 セリスの手を引きそちらへ向かう。


 この通りは人が多いものの、先程の通りとは違い人の動きがゆっくりで私はこちらの雰囲気の方が好きですね。

 遠くから聞こえてくる音楽がちょうど良い感じなのがとても良いです。


「ふ~ん……魔法スクロールなんかも売ってるのか………」


「こういう所ではたまに掘り出し物なんかもありますけどハズレの方が多いですよね。

 そもそもスクロールにしては安過ぎですからねぇ……」


「まあ見た感じほぼ全て外れだね」


 そう言いつつセリスはその屋台の前で座り並べられてるスクロールの1つを指差した。


「これ貰えるかい?」


「銀貨1枚になるよ」


「1枚ね」


 支払いを終えて店から離れてから機嫌よさげに話しかけてくる。


「ま、私の眼にかかればこんなものだよ」


「商人としてはたまったものではありませんね。

 何の魔法を買ったんです?」


「呼びたいものを呼び出す魔法だよ。

 はい、もう改良したからいざって時にでも使って」


「え……使う機会が来ない事を祈ります」


「まあ普通使わないよそんなの」


「ですよね」


 つまりこれでセリス……ではないにしても防衛にしては過剰な何かを呼び出せるって事ですよね?

 離れる事なんてまず無いつもりですし、今の御時世じゃ使う機会なんて無さそうですけどね。

 仮にあるとしたら想像もつかないくらい大きなお金が動く取引きで嵌められたかした時じゃないですかね?

 それで殺し殺されたって話しは商人じゃわりと有名な話しですし……


「ん…………えっ!?」


「メリル?」


 私がそれを見つけたのは本当に偶然でした。

 セリスも不思議そうに私の視線の先を追い納得した様子です。


「あ~……うん、すまないお兄さん」


「ん、なんだい?」


「その絵を描いたのはお兄さんかい?」


「あぁ……これは1月頃かなり話題になってただろ?

 これを描いたのは12月頃に実際に俺が見て描いた空飛ぶ城だよ。

 もしかして知らないかい?」


「知ってるけど具体的にどう話題になったかまではねぇ」


「そうかい?この城はね……」


 内容を纏めてしまうと12月頃に突然現れ四時間ほどで消えた謎の空に浮かぶ城であり、それは多くの人々に目撃されたそうです。


 そこから誰が言ったかはわからないそうですが、城には強大なモンスターが眠っている。

 国王や帝国ですら想像できないほどの金銀財宝が眠っている。

 多くの戦争で消滅してしまった太古の技術が目覚めた等々噂が独り歩きしていたらしいです。

 しかし現れて消える以外は本当に何事もなく謎だらけなのだと男の人は語ってくれました。


「……セリス?」


「う~ん、そこまで大事になってたとは思ってなかったなぁ……」


 あ、この反応知ってましたね?

 叱られると思って報告を……しなかった感じでもなさそうですね………

 でも一応言っておきましょう。


「私が知ったところで何もできないかもしれませんけど、教えてくれても良かったじゃないですか」


「すまない、あの時はメリルの体調が悪すぎて変な心配させたくなくてそのまま忘れていたんだ」


「あ……なるほど、そもそも天空城呼んだの私の為ですしね。

 しかし何故そうなったんです?」


「天空城は文字通り次元を越えてワープしてきた、その為に使った魔力は私が思っていた以上で魔力不足によって一部の機能が停止してしまっていたんだよ。

 初日だけ私や天使の魔力も使って調整してなんとかしたんだけどそれなりに時間が掛かってね」


「一部の機能が……ねえセリス。

 もし天空城が魔力不足で墜落したらどうなります?」


「仮に墜落してもメリルは絶対に守るしアンドロメダが目覚めるだけだから問題無いよ」


 あんな超巨体大天使がもし暴れまわったら帝国も王国も簡単に滅ぶ未来しか見えないのに問題無いって……


「あの、セリス、お願いですから私にわりやすく、それのいったい何が問題無いか教えてくれませんか……?」


「目覚めたら今度は別の方法で封印し直すから大丈夫大丈夫。

 メリルが居るから封印だけど私単騎なら少し無茶すれば倒せるレベルの相手だし」


「そんな事は一生起きないでほしいですね……」


 私の心配を他所にその後もセリスは大丈夫大丈夫と笑っていますがそんな事になりかけていたとは……

 それに良く考えたら先程の男の人が話してくれた独り歩きしている噂の大半は当たってるじゃないですか……


 一度天空城の事は忘れ戻り、屋台を見て回っていると私は木彫りの置物を目にして足を止める。

 その中の1つ、何処となくミィさんに似た魔力を纏っていて、その置物の姿も女性に見えなくもなくて気になった。

 この木彫りの置物は不格好だけれど禍々しさというか、力強さを感じさせる鎧を纏った女性の置物。


「メリル」


 私はセリスに呼ばれてようやく目を放す事ができた。


「なんですそれ……えっと、気持ち悪い?」


「え、可愛くない?」


 セリスが楽しそうに見せてきたのは作り物の蛇です。

 物凄くリアルでテカテカしてると言いますか……

 あ、でもつぶらな瞳をしていますね。


「良く見たら可愛い眼をしてますけど妙にリアルですね……」


「そこが良いんじゃないか。

 これそこで金貨1枚で売ってて買っちゃった」


「ボッタクリじゃないですか!?

 スクロールより高い玩具ってなんですか!?」


「ふっふっふ、これ実は魔法具だったりして」


「えっ!?

 それなら確かに……しかしなんてヘンテコなデザインの魔法具なんでしょう……」


「フフフ、その真の力を見せてあげよう!」


 とセリスがバッと手を出すと蛇がセリスの腕をシュルシュル~と廻るように進み、指の隙間に顔を出して口を開くとジャバーッと水が出てきました。


 出た水をセリスが魔力で上手く操作して水のボールを作り空き瓶に入れた。


「なんか……吐いているみたいですね。

 作者の感性を疑いたくなる程に変な魔法具ですね」


「まあこれただの玩具だったのを私が無理矢理魔法具にしたんだけどね」


「なにをしてるんですか!?」


「ここを押すと空気中の魔力を吸収して自動で上質な魔力水を製造する魔法具だから金貨1枚じゃ買えない魔法具だよこれ?」


「知ってましたけどセリスって変なところで馬鹿ですよね!?」


「そんなに誉められると照れるじゃないか」


「む……むぅ~っ!!」


 何故でしょう!

 何故か物凄く負けた気がする!

 この痒いところに手が届かないような言い知れぬこの……なんでしょうかこれ!?


「むぅ~……セリスは楽しいですか?」


「メリルが可愛いよ。金貨一枚じゃ足りないくらいの買い物だったね」


「つまり完全にからかわれている訳ですね……」


「それもあるけど、せっかくの祭りだしもっと軽く考えても良いんじゃない?

 メリルさっきから金額ばかり考えてないかい?」


 いやまあ別に金額のことだけじゃありませんが……

 でもそう言われるとそんな気もしますね。


「……確かにそうかもしれませんね。

 楽しみ方はそれぞれですし、何よりもう店を持つ契約も達成してますしお金にはかなりの余裕ありますものね」


「でしょ?」


「でもその蛇はやりすぎです」


「そうかなぁ……可愛かったんだけど……」


「値切りくらいしましょうよ……私とそれ、どちらが可愛いですか?」


「断然メリル。……けど可愛いの方向性が違わない?」


「私もそう思います。

 でも私よりセリスの方が可愛いと思います。

 可愛くて綺麗って物凄く反則だとも思います」


「ねえ……もしかしてメリル怒っているのかい?」


「怒ってなんていませんよ?」


「なら良いんだけど」


「それより次はあっちを見に行きましょう」


 その後も私達は買い物を楽しみました。

 セリスの変に片寄った目利きの良さは凄いと思いましたね。

 焼き物の知識なんかもあってお皿の造りの良さを理解して購入していたのに、ナイフ等のシルバーの良さはわからず不良品も纏めて購入しそうになっていましたし。


 お昼はそこら辺の屋台で出している物を少しずつ食べていくという感じで済ませました。

 珍しかったのは魚のハンバーグなんかですね。

 一口サイズになっててセリスで二人で分けて食べたのですが、これがとても美味しかったです。


 ある程度回り終わったら時間がまだあったので行商の為の時間を多めに取る事にしました。


 知り合いの商人達は私が親しげに話し掛けても誰だかわからずとても困惑していたのが印象的でしたね。

 メリルだと言った時の反応は面白かったです。


「お、もう出し物が動き出しているね」


「本当ですね、この時期私は南の方に居る事が多いので初めて見ましたが……なんだか凄いですね」


 祭りを巡っている間に見た藁で作られた馬が運ばれて行く。

 あの馬は3体存在し、祭りの最後として焼きはらい霊を馬に乗せて冥界へ送る。


 その炎の周囲で皆は霊を祝福するため演奏や躍りをして安らかに眠る事を祈る。


「う~ん……皆当然のように踊ってますけど難しそうですね」


「そうだね~……あ、そうだメリル。宿に戻らないかい?

 少しだけ遠いけどあの部屋の位置なら窓から炎が見えて悪くない位置取りだろうし、私達だけ違う躍りをしてても目立たないだろう?」


「なるほど、それは良い案ですね」


 私とセリスは部屋に戻る。

 ターニャは戻っていない様子からして外で飲んでいるか模擬戦を挑まれて戦っているかのどちらかなんでしょうね。


「ではメリル、私と1曲踊っては下さいませんか?」


「はい、喜んで」


 セリスは大袈裟な程の振る舞いで膝を着き手を差しのべてくる。


 私がその手に触れると少し強めに引き寄せられる。


 私の腰に手を置き踊る体勢に入ったセリスは猫のような笑みをして、その力強い瞳で私の眼を真っ直ぐ見つめる。


 もう何度も練習した動き。

 部屋が狭いので大きな動きはできませんが、それでもセリスと踊るのは楽しい。


 本当に……本当に楽しい。

 練習したての頃はあんなに難しくて辛かったのにこんなに楽しいなんて……


 その時、私の中で1つの疑問が浮かぶ。


 その疑問は、私が今まで抱えていた疑問を嘲笑うかのように、一瞬にして全ての疑問の答を出してしまった。


 私が今思い浮かべた疑問は、何故こんなにも楽しいのか。


 答えは、私を大切に思ってくれる人と居て、誰も私を邪険にする人が居ないから。

 セリスと言う、私をしっかり見て、確かに認めてくれている人が居るから。


 その答えは他にも私が浮かべていた疑問。

 昨日何故あの様な行動をしたのかと言う疑問の答えでもあった。


 セリスだ。

 セリスがあの行動の原因で答えだから。


 私が兵にあんな態度をしたのは、私にとって最も信頼に値するセリスが認めてくれた部分を否定されたからだ。


『とても素敵な翼を持ってたんだね、隠しているのが勿体ないくらいだと私は思うよ?』


 何時だかセリスが言ってくれた言葉。

 私はドリーミーである事に少しだけ自信を持つようになったのも、セリスが……


「……メリル?」


「あ……ごめんなさい、何故か涙が出てきて……」


「大丈夫かい?

 もしかして足を痛めたりとか……」


「違いますよ、セリスは本当に過保護ですね。

 でも、だから私はセリスが大好きです」


 セリスの言う、私が"私"であること。

 その意味がわかった気がする。


 私は、私自身の事があまり好きではなかった。

 ドリーミーとして生まれた事を恨んだ事だってあります。

 けれど、こんなにも素敵な人が認めてくれる私であるなら誇る事ができるから。


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