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覇王セリスの後日談  作者: ダンヴィル
1章、平和な世界
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出会い

半分くらい清書したらと言いましたが1日1ページというペースでできているのでもう上げていく事にします。


清書しながら書き足したりしてますので誤字脱字があった場合は書き足した部分の可能性が高いです。

毎日20時に投稿されるよう予約しますね。


「………確かに、確認させていただきました」


「今後とも我等バイル商会をご贔屓に」


「はい」


 握手を交わし、いつものように流れで軽い情報交換へと変わる。


 僕……私の名はメリル。

 将来自分の店を持つ事を夢見て町や村を転々とする行商人を生業としています。


 私が仕事中自分の事を『僕』と呼ぶのは僕が女だからです。

 ただ女性であるだけで嘗められる職というのはいくつも存在して、当たり前ですが行商人なんて職は女性のするようなモノではありません。


 繰り返しますが私の夢は自分の店を持つことで、親族に店を持っている人が居ないのであれば必要な事で、そうでもしなければもっとリスキーな手段を取らなければお金を集められません。

 そんな手段は取りたくないので私は真っ当な手段の1つであり、形は違えどれっきとした商人としての道を選ぶことにし普段から男の格好をしている訳です。


「……ふぅ」


「お疲れ様、メリル」


「ターニャ」


 取引を終えて一段落着いた私に軽い様子で声を掛けてきた金髪の女性はターニャ。

 ターニャは冒険者というモンスター討伐等をしてお金を得る仕事をしています。


 行商人である私の護衛を長く引き受けてくれてとても助けられています。

 冒険者と行商人ですから当然契約による関係ではありますが、お互いに友人として認識していて、ターニャは私の種族を知ろうと全く態度を変えなかった一番の友人です。


「ええ、天高くにいる化物のような商人が相手でしたから疲れましたよ」


「はは、まあ気持ちは分かるぞ。

 ぺーぺー冒険者がベテランに囲まれてダメ出しされる感じだろ」


「ん……ごめんなさい、その例えはちょっとわからないですね」


「そりゃそうだ」


 ターニャと初めて知り合ったのは彼女がまだFランク冒険者だった頃です。

 初めて見た時は整った美貌に一瞬目を奪われそうになったくらいでして、平民じゃまずありえない、きっとお貴族様だ!と思いました。

 貴族は時々趣味か何かで冒険者になりたがる者がいると聞いたことがあったから、その時はそれかと納得しました。


 しかしそう納得した状態で実際に関わってみたターニャの言動と言ったらそれはもう……

 ターニャはお貴族様じゃない。お貴族様に失礼です。

 もしターニャがそうなら中規模商会の従業員の時点で大貴族様の振る舞いですよ。

 実際の貴族様なんて遠目でしか見たことありませんけどターニャの振る舞いと比べるのは失礼すぎます。



 ・



 冬が近付いてくる秋の終わり頃なこともあり夜が来るのが早く、酒場が賑わうのはもっと早いこの時期。

 私達は居酒屋の上の階、宿の一室で微かに聞こえる少々耳障りな喧騒を音楽として聞きながらお酒を楽しむ事にしました。


「ごめんなさい、ターニャ」


「お前毎回謝るの止めろって言ってるだろ?」


「私も何度だって言うけど、これは譲れません。

 あと、ありがとう」


 深く被っていたブカブカの帽子を外す。

 私の頭にはコウモリのような羽が垂れ下がるように生えている。


 私の種族はドリーミーと呼ばれている種族だ。

 この世のありとあらゆる物に魔力と呼ばれる力が存在し、私の種族はこの羽を通してどんな人種よりも正確に魔力を感知でき、それを気味悪がられ嫌われている。


 具体的に何故嫌われているのかと言うと……

 人の心が読めてしまうからです。

 正確に言えば感情がわかってしまうから気味悪がられます。


 私の羽は人が帯びた魔力の揺らぎから正確に読み取り感情までも理解してしまうのです。

 この力があるからこそ商人として大きく成功しているところではありますが、それでも気持ち悪いと言わてしまうので隠しています。

 今の時代でとヒューマン意外の種族は人種差別される時はされますが、ドリーミーはその中でも屈指の嫌われようです。


 ですから、ターニャのような数少ない信じられる人の前でのみ私は帽子を外す事ができます。


「もういいって。お、これ良いお酒だな。

 この様子じゃさっきの商談上手くいったのか?」


「まだわからないけど今はそれなりにね。

 ただ、この辺ではまだ鉄の値上がりが起きていないようですので目的の岩塩を買うついでではありましたがそれなりの数を揃えられましたから良い出だしになりそうです」


「ふ~ん。なら次は鉄が不足してるところ……

 ギュルレの方は火事があったって話しを聞いたけど流石に遠いし……次は何処へ行くよ?」


「ギュルレよりは近いですが、少し遠い場所にあるフォンドへ行こうかと」


「それならギルドの本部が近いな。

 メリルの売買も軌道に乗ってるしいい加減ランク上げる試験でも受けに行こうかな」


「いやいや!まだCランクを雇える程の余裕はありませんよ!」


 ターニャは私の言葉に「ん~……」と唸り、人差し指を立て提案してきます。


「じゃあ、あと一年待つから。

 それまでに上手くやって……と言うよりメリルも冒険者やれば良いんだよ。

 せっかく魔法使えるんだからさ」


「やりませんよ。

 私は商人として成功して親を見返すんだって何度言わせるんですか」


「私も何度だっていうけど、形だけでも登録してくれればパーティを組んで金を貰わず私と行動できるよ?

 私だけなら衣食住満たしてくれればそれで十分なんだが……

 私も冒険者。冒険者ギルドはそうやって金を得るんだから同業者とペアを組むならともかくボランティアはできないからなぁ」


「う……それは分かっているのですが…………」


 今のようなターニャの勧誘は一度や二度ではありません。

 それだけターニャが私の事を認めてくれている事は理解できるのですが、私は純粋な商人としての実力で腹を抱えて笑ったお父さんを見返さないと意味がないんです。

 その目標が無ければ今頃冒険者に登録だけして行商を続けています。


 まあ……こういうお酒があるからこそできる少し嫌な話しはお酒に弱いターニャが酔い潰れる形でいつも途切れるんですけどね。


 そして予想道理と言いますか、お酒弱いのにハイペースで飲むから既に眠たそうに体を揺らしています。


 ターニャのその様子を合図にお開きとするのもいつも通り。

 灯りを消し明日に備え私達は眠りにつきました。




 ・




「はぁッ!メリル!」


「はい!ライトニング!!!」


 私の指先から雷が放たれ二匹の狼に直撃する。

 そして残りの狼は雷の轟音に驚いたのか逃げ去っていく。


「お疲れメリル、やっぱり冒険者に」

「なりません!」


 フォンドへ向けて進む途中で珍しく狼の群に遭遇し無事に撃退できました。


 この辺は帝国と王国の国境線付近で、すぐ側で両国の旗を掲げあっているだけあってとても治安が良いのです。

 帝国と王国は協定を結んでおり実質連邦国と言っても過言ではない関係でありまして、帝国と王国を繋ぐこの辺はとても治安が良くなければならない場所であり、モンスター等は間引かれ危険がとても少ない筈なのにですが、やはり町の外、絶対はありません。


 なので今回のように狼が出るのはその「絶対ではない」に当てはまるくらい本当に珍しい出来事です。


「それじゃ冬も近いしさっさと毛皮剥ぐか」


「この時期に狩れましたしね、棄てるのは確かに勿体ないですからね」


 ターニャが3匹、私が2匹。

 安い部類の狼型モンスターの毛皮とは言え馬鹿にはできません。

 冬が近く毛皮の需要が多くなり値上がりするのは当然の事で、5匹分の毛皮は少なくない収入になります。


 そう判断した結果時間を使ってしまい、夜を過ごす予定である川の側へも辿り着いていないのに夜を迎えてしまいます。


 狼の毛皮を諦めれば良かったというのは結果論でしかなく、毛皮を剥ぐ時はこの時期の日が沈む早さを見謝っていたから諦めるなんて選択肢は出ませんでした。


 しかし例え視界が遮られていようとも私の魔力感知能力を使用すれば夜でも周囲が鮮明に見ることができます。

 他人との関係を築くにはあまりにも邪魔な悪評ですが、それにさえ目を瞑ればとても便利な力だと思います。


 そうして荷馬車を進めていくと遠くに火の灯りが見えてきます。


「お、先客がいるみたいだな」


「そうみたいですね、やはり暗いと不安になってきますので助かります」


「そうだよな……ん?」


 私達が会話をしているといきなり火の灯りが消えてしまいました。


「………なんで火を消したのでしょうか?」


「たぶんだが……もう寝るんじゃないか?

 旅初心者は意外とやりかねないからな。

 もしくはすぐに火を起こせる魔法使いとか」


「なるほど」


 この時はターニャの言葉に納得し、何の警戒もせずに進んでいきました。


 しかし、いざ荷馬車を降りて近づくと違和感を感じます。


「ん?……誰もいないな」


 確かに少し前まで火を起こしていただろう木材からは熱を感じます。

 けれどターニャの言うように、その側に人の気配を感じられません。


 その事に気付いてすぐ魔力感知によって視野を広げた時、私の背後から迫ってくる人を見つけて思わず振り向いた。


「ーーーーーーーーーーー?」


 瞬間、冷たい感触が喉に触れた。

 けれど、それよりも私は聞いたことの無い言語で何かを語りかけてくる女性に目を奪われた。


 月明かりの中その赤い瞳が……弱く………不安になるような灯りで光っているように見えて…………


 流れるような肩程の長さの銀髪をしていて、まるでおとぎ話に出てきそうな魔女を連想させる真っ黒な服装。


 その目付きの鋭い女性は自信に満ち溢れたような、けれど優しさを感じる笑顔を向けていた。


 その笑みは同性である私ですら引き寄せられてしまいそうな程強い色気を感じる魅力で、まるでこの世のものとは思えない美しさ、力強さ、神々しさ。

 そして、認識を誤認してしまうような妖しさを彼女から感じた。


 この出会い、異世界から舞い降りた覇王セリス・アルバーンとの出会いを始まりとして私のありふれた人生は大きく変動していくのをこの時の私は全く想像もしていませんでした。


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