表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覇王セリスの後日談  作者: ダンヴィル
1章、平和な世界
18/119

覇王セリスの後日談1


 10月13日

 この日、私は役職とかそういう面倒臭いモノを全て捨て去り異世界へとやってきた。

 ここには私を覇王と呼び、その名を聞いただけで恐怖する失礼極まりない奴等がいない。私は自由だ。

 歩いて少ししたらミィが復活した。

 あれだけ憔悴していた魂が美しく輝いて見えるほど回復していたのであの様子なら大丈夫だろう。



 10月14日

 人に会えないし町どころか村すら見えてこない。

 道を間違えたのだろうか?


 珍しい生き物を発見できたりで飽きはしなかったからずっと歩いてた。

 飽きたら飛ぶつもりだった。


 10月15日

 メリルとの出会いを果たした日だ。

 初めの印象としては覚悟や意識が足りず自信の無い平凡な人種。

 しかし努力家であり一度決めたら余程手痛い目に合わなきゃ曲げない不器用さを持つ。そんな印象を彼女から受けた。

 その場の気分でコロコロ変える私とは正反対だからこそ相性が良いんだろうね。


 10月16日

 冒険者登録をした。

 メリルの商談も眺めたりもしたのだが、やはりまだまだ未熟という印象を受けた。

 まあそれはどうでも良いだろう。


 私は良くも悪くも人を見る目は確かだ。

 僅な筋肉の動きも見逃さない。

 その僅な動きから突然目の前にナイフが飛んで来ていたなんて経験もあるからね。

 それと比べたら並み相手なら筋肉の動きからどういう行動が可能で、何故そんな事を、どう思ってそんな事をしようとするのか考え目的を見抜くくらい簡単にできる。

 できなければ私はとっくに死んでいた。

 一対一で過ごす時など本当に同じ一秒なのか疑問に思うほど時間が凝縮する。一秒が永遠に感じられる程の集中力。例え視界に第三者が居なくとも、目の前の敵が存在を教えてくれる。

 目の前のソイツの視線が、筋肉が、声色が、吐く息、吸う息が私の視界を無限に広げる。

 もう一度書くが、私ほど人を見る目のある奴を私は知らない。

 私が覇王であり続けられたのは冷たく、どこまでも潜ってけるようなこの集中力の存在が一番大きいのだから。


 そしてメリルは信じて良い。

 私の全神経、鋼鉄を切り裂く刃以上に研ぎ澄まされた感覚がそう認めた。

 メリルは信じても構わない。

 私は覇王から私に戻ろうとも自分の並外れた才能を信じる所だけは変わらないだろう。

 もし、メリルが私を信じさせたまま信頼を裏切ったのであれば、それは私の、覇王の実力不足。メリルは覇王以上の存在だっただけ。

 強き者が生き、弱き者は死ぬ。ただそれだけ。


 10月17日

 今朝方、帽子を外したメリルの姿を見た。

 ヒューマンの耳とワービーストの耳を持ったハーフ特有の四つ耳なのかと思っていたが、蝙蝠の翼が垂れ下がっていた。

 メリルはドリーミーと呼ばれる種族らしい。

 私の世界には存在しない種族。当然だが、この世界に来なければ絶対にメリルには出会えなかったと痛感させられた。

 だからこそ運命的な何かを感じさせられた。

 この瞬間から私はメリルに依存しはじめた。

 趣味の1つである人形に見立ててメリルを散々着せ替えさせたりした。

 自然と楽しんでいたが冷静に考えればどれだけメリルを気に入ってしまったのか、自問自答しても今もその答えは出ず、更に深みにハマっている自覚がある。


 10月18日

 思い出すだけで恥ずかしい。

 それでもこの日の出来事は忘れることは無いだろう。

 私は、ようやく救われた気がした。


 10月19日

 今朝一番にターニャが弟子にしてほしいと言い出した。

 弟子を取るなんて悠長な事をしたことの無い私はそれなりに喜んでいたのだが、ターニャは私から魔法でなく武術を学びたいとふざけた事を言い出したので軽く捻った。


 昔の私はとにかく魔法が大好きで、魔法が大好きになれたのは家族である彼等の役に立ちたかったかというシンプルな理由であり、気付けば大魔法使いだ。

 そんな私から魔法でなく武術なんてと気に障ったが、冷静に考えれば魔法使いとして弟子を取っても武術は教える。

 魔力が切れてからも戦えなければ生きられないからね。

 とは言え一度断ったのを受け入れるのも癪だし模擬戦だけならいつでも受ける事にした。

 アドバイスも入れてやるから後は自力で強くなれ。


 そんなターニャは私の動きばかり注意して自分の動きが疎かだった。

 100点満点だとして5点というところだね。


 10月20日

 今日から日記を書こうと思う。

 馬車旅は時間が腐るほどあるからね。

 既にこの世界に来てからの出来事は全て書き記した。

 これから私の一生を書き記すつもりでいる。

 この日記は『覇王セリスの後日談』と名付ける。


 今日はリンデルの町を出る日。


 移動中ミィの事を二人に話した。

 ミィの奴は今何をしているのだろう?

 魔王の事は前にメリルに話したが、この世界で一番初めに出会ったのがミィだと話したのは今日が初めてだ。


 そもそもミィの話はあまり話したくない。

 ミィと過ごした時間が楽しかっただけに魔王との戦いはとても辛かった。

 その心臓に杖を突き刺した時の感覚が、腕を伝う友の血の感覚が今でも忘れられない。

 もしミィを完全に消してしまっていたのであれば、私は後悔なんかのマイナス的な感情に耐えられなかったかもしれない。

 いくら忘れる術に優れていても限度があるのだから。


 今思えば、ミィと仲良くなれたからこそ私は友達が欲しいと思ったのだと思い知らされる。


 さて、明日は雨が来るので今から用意をしなくては。


 10月21日

 今日は雨、そんな感じの匂いは昨日からしていた。

 天候を察知する力は生きる術として必須だと彼等に口を酸っぱくして言われていた。

 その事を私が他の人に教える日が来るとはね。

 人生何があるかわからない。


 メリルが私の忠告を聞き入れてくれていた事もあり、今日は小さな村の教会で泊まることになった。


 暇なのでメリルが買い込んだ剣に魔力を付与した。


 10月22日

 雨も止んだので昨日の分もターニャを捻った。

 一昨日私が使った手を意識しすぎで駄目10点。


 それにしても……昨日も今日も教会で出たのは芋か。

 芋しか無いのか?パンが食べたかった。

 メリル曰く教会では普通の事らしいが金に釣り合ってない。

 私はそうかと頷きこそしたものの、どっかの大きな教会のお偉いさんが寄付金を少しずつ自分の懐に入れて裕福に暮らしてるんだろうなと思った。


 どこの組織も規模が大きくなるにつれて何処かしらが腐るのは世の常であり、それは人種の本能だろうね。

 そう言った意味では己の本能を理解してるからこそ良く向き合い考える事のできる、理性あるリッチ等の方が私は好きだったりする。


 10月23日

 今日はメリルに物凄く叱られた。


 ・


「セリス、少し話があるので来てください」


「ん……わかったよ」


 フリルの町へ来てメリルは売買をしに行き、戻ってきてすぐこの言葉である。


 メリルの口調はいつもとは違い何処か厳しさを感じさせる物で疑問に感じたが大人しく従う。


 メリルに連れられ部屋へ戻ってくる。


「セリス、私の商品に魔力付与をしましたね?」


「あぁ、教会でどうも暇だったから……その時に……ね……」


「何をしていると思っていたらそんな事していたのですか……」


 メリルが露骨にため息をついた。


「……怒ってるのかい?」


「怒っていませんよ」


 そう言いつつも私はメリルがとても怒っているように見えて恐怖を感じた。


 メリルならきっと、そんな事は無いだろうが、してはいけなかった。

 もし万が一に許してもらえなかったらどうしようと、酷く恐怖した。


「あ……あぁ……そうかい……」


「……そんなに怯えないでください。

 怒ってなんていません。これは言わなかった私も悪いですから。

 けれど、だからこそちゃんと伝えなければいけません」


 メリルに頬を撫でられる。

 その時にようやく気付いたが、怖くて顔を伏せてしまい目線どころかメリルの顔すら見れていなかった。


「だから泣かないでください。

 私もセリスと居たいから伝えるんです」


 泣いている……私が?

 その言葉が信じられなくて、衝撃的で、私はメリルを真っ直ぐ見つめた。

 相手の嘘を見抜こうとする生き抜く術であり、私の悪い癖だ。


 メリルの表情は、とても不安そうで、確かな温もりが、愛情を感じさせる空気で間違いなく私を心配していた。

 こんなに強く私を見てくれている事にほんの少しだけ安心感を覚える。


「私が泣いている……?」


「セリスは意外と泣き虫ですよね」


「…………」


 メリルの手がゆっくりと離れる。

 私は自分の涙を拭い、小さく「ありがとう」と伝えてメリルの顔に向き直る。


「ん、その様子なら話しても大丈夫そうですね。

 それで、魔力の付与はむしろ良い考えだったと思います。

 付与の分はセリスに渡せば良い訳ですからね。

 しかしですね、私はもう少して商人として大切なものを失うところだったのですよ?」


「利益はその方が出るんじゃないのかい……?」


「確かにその方が利益は出ます。

 しかし私はあの剣を一般に普及しているただの鉄の剣だと言って提示したんですよ?

 相手が魔力を感じてそれを口にした時に咄嗟に普通の鉄の剣にそこまでの魔力を付与できる職人とコネクションを持てましたと言い訳して切り抜けました。

 切り抜けはしましたが、私はあの瞬間商人として利益に直結する必要不可欠な信用を失う所だったんです。

 あれだけの魔力の付与がされているのに見極める目利きも無い商人が信用足り得るかと言われればあり得ないと私は答えますよ?」


「……」


 メリルが言っている事の何一つとして間違っていない。

 信用はどれだけのお金があろうと買えはしないのだから。


「……まあ、そこはもういいです。

 それよりも、セリスはそんなに私の事を信用できませんか?」


「そんな訳ない……」


「だと思います。

 ですがセリス。私は前にも言いましたが友達って言うのはお金でどうこうできる存在では無いと思っています。

 けどセリスは私の利益になる事を進んで行って、まるでセリスが私の側に要る事が得ですよって宣伝してきているような気がしたんです」


 今まで優しげに語っていたメリルの声色が少し弱くなっている。

 私はそれを聞いて恐怖は無くなったが、強い不安を抱いた。

 メリルを泣かせてしまう。

 私は……友達の慰めかたなんて知らない………


「そんなことしないと私はセリスを友達と呼ばないと、認めないと思ったのですか?」


「いや……違う……そんなつもりで私はやったんじゃない……」


 メリルの言葉を聞いてとても不安で、後悔で一杯になった。


 取り返しのつかない事をしてしまったと焦りが生じ、何を口にすれば良いのか分からない。


「……フフ、セリスって魅力的な大人な雰囲気ありますけど、やっぱり泣き虫で、子供っぽいですよね。

 親しくならないと絶対にわからないことですけど」


 メリルが私の頬に触れる。


「ほら、泣かないで下さい。

 また涙が出てしまっていますよ?

 私は嫌ったりしませんし、怒ってもいないんですから」


 またしてもメリルに言われるまで泣いている事に気が付かなかった。

 "自分"の事なのに、自分が、"覇王"が他人の誰より優れているから生きられたと思っていたのに……

 私自身が"セリス"の事を分かっていなくて恥ずかしくなった。


 私は、どこまで"私"の事を見失ってしなってしまっていたのだろう?

 "私"がこんなにも弱虫で泣き虫な存在だったなんて知らなかった。

 この私が叱られて子供のように泣いてしまうなんてとてもじゃないけど、考えたことすら無い。


「あ、いや、ちょっと待ってくれ……恥ずかしい………」


「私の泣き顔はあんなに見ておいてセリスは駄目なんですか?」


 この日、メリルと親しくなって私も1つわかった事がある。

 メリルはもしかしなくても意地悪でからかうのが好きだ。

 けれど、そのからかいは愛情からで、正直悪くないと思った。


 けどここでそれを言えばもっとからかわれそうで言わない事にした。


 ・


 その後、メリルと契約を交わし商売として魔法具を作る事を約束した。

 そして今回の魔力が付与された分の金額を貰うことになった。


 結果的にお互いに良い方向に収まった訳だが、私は2度と同じ失敗をしないと心に決めた。


 10月24日

 今日もターニャを軽く捻った。

 考えてはいるもののいかんせん素直すぎる10点


 10月25日

 私の冬用の服が少ないから買うようにとメリルに言われれしまった。

 なので私のローブと同じ素材のワンピースをメリルに貸して着せてみた。


 私の服は冷気耐性熱耐性持ちであり、斬撃はもちろん、矢等も防ぎ、魔法耐性がとても高く常に快適なのだ。

 天使どもの羽をむしって作っただけあって申し分ない。


 更にこれは魔法武具扱いであり、着用者のサイズに自動的に変化する。


 メリルは派手すぎると水色のワンピースをすごく恥ずかしそうにしていたが、とても似合っていた。


 本来そのワンピースは羽織ったりしてドレスのような仕立てにするのが正しいのだがメリルの場合は変なゴテゴテ着けない方が似合っていると思う。


 メリルに着せてみて、薄着なのに全然寒くないと正しいけれど期待していた反応とは少し違う反応をした。

 もっと恥ずかしそうなかわいい反応を見たかったんだが、この辺私も意地悪だと自覚がある。

 やっぱり私とメリルは愛称が良いのかもしれないね。


 ターニャはちゃんと捻った。

 万が一にもあのタイミングで私が転倒すると思ったのだろうか?

 飛び付きたくなるような甘い誘惑、手の上で踊らされてると気づかない1点


 10月26日

 今日もターニャを軽く捻った。

 目線でフェイントを入れたが効かなかった。

 少しは腕を上げたかと思ったが私の目線まで把握しきれてないようだ5点


 今日は町を出た。


 10月27日

 他の行商人の車輪が壊れたらしく直してやった。


 対価として少しの甘味を貰ってメリルとターニャと仲良く分けた。

 甘いものは好きなのだが、私の苦手なタイプの甘さを持つ蜂蜜を固めた不格好なキャンディーだったので隙を見てメリルの口に優しく入れた。

 なんと言うか、小さいのもあって小動物のようでメリルがかわいい。

 友達を小動物のようにと評価するの変かもしれないが、守るべき存在だと強く意識させられる。

 私はもう二度と失わない。

 仮に私とメリル、どちらかしか生きられなくなる驚異が現れたのならその時は私の番だ。

 アイツやミィがそうしてくれたように。


 ターニャは当然捻った。

 今日は文字通り捻って叩き付けた。

 何をされたか理解できてないようだ2点


 10月28日

 ターニャを軽く捻った。

 蹴りをするのは良いが重心まで気を付けていない5点


 村で一泊する事になった。


 10月29日

 ターニャを軽く捻った。

 魔法使いに魔法使われて理不尽だとか言われてもねぇ……1点


 今日は映像記録の魔法具と映像を映す魔法具を1つにし小型化させる事に成功した。

 片手で撮れるが映像の記録まではできなくなり写真しか取れない。

 まあ基本私に必要なのは初めから撮った光景を絵にできる効力だけなのでこれで十分。

 今日だけで沢山撮影をした。

 これから多用する事になるだろうな。


 10月30日

 ターニャを軽く捻った。

 魔法のフェイントに引っ掛かりすぎ1点


 試しに合図を送ってターニャに足払いするところをメリルに撮らせてみた。

 タイミングは完璧だったがブレが激しい。

 こりゃ要改良だね。



 ……………………………………………………………………………………………………………………



 11月3日

 雨が来そうな気がする。

 今日もターニャを捻り無駄な時間を使った事に後悔を覚えながらペースを上げさせた。


 けっきょく町にも村にも着きそうにないので森で休むことになった。


 11月4日

 雨は降らなかったが雪が降った。

 ターニャはともかくメリルはヒューマンより寒さに弱いらしくとても震えていた。

 嫌がるメリルに無理矢理私のスペアである宵闇のローブを着させた。

 一度着てしまえば性能の良さを知り感謝と謝罪をしてくれた。

 メリルの女性らしい格好を、いつ同業者と出会うかわからないという場所でしたくないというのもわかる。


 商人であるメリルは女性だと思われれば嘗められる。

 これは種族とかでなく商売の世界がそうらしい。

 だからこそメリルは男の格好をしている。


 私はメリルの夢を聞いている。

 その夢を叶える為に努力をするメリルの姿はとても魅力的で、その支えになれればと私は思う。

 叶えるだけなら簡単だ。しかしそれではメリルの努力を否定する事になる。だからこそメリルを支えるだけに留め事にし、現状私ができるのはここまでだろう。


 11月5日

 今日も雪は降っている。

 止む気配がない。


 11月6日

 雪は止んだ、雪のせいでペースは落ちているがチャンスだ。


 11月7日

 雪崩で道が塞がったのでルートを変更するがそちらも雪が多すぎて危険そうだ。


 私が魔法で消し飛ばす案を出したが却下された。

 反対側でどうにかしようとしている人達が要る事を確認しという事と魔法余波で二次災害が出るかもしれない故に却下せざるを得なかった。


 冷静に考えればそんな事すぐにでも思い付きそうだが、私はその考えに至れなかった。

 理由は明白、メリルの身を案じてだ。


 冷気耐性があったとしても長時間となるとじわじわと確実に負担になっていく。


 メリル達曰く、これ程の雪が降ったのは5年以上前らしい。

 宗教国家の方と比べるとこの辺は良く雪が降るらしく、慣れているのが幸いして迅速に行動の選択を行えているのかもしれない。


 11月8日

 メリルが少し咳をしはじめる。

 エリクサーを飲ませようとすると勿体ないと叱られてしまった。


 だが所詮エリクサーも消耗品であり、切り札は切るべき時に切るものであって抱え落ちるなんて間抜けにも程があると私は反抗した。


 それでもエリクサーはそんな安い薬じゃないとメリルと喧嘩になりそうになったので私は降りざるを得なかった。

 当然、これもメリルの身を案じての事。


 メリルは心が強くても、体は弱すぎる。

 私が無理矢理なんてしてしまえばどれだけ痛く、怖い思いをさてしまうかわからない。

 もしかしたら、少し力を入れすぎてあの細い腕を折ってしまうかもしれない。


 メリルの身を案じて喧嘩になる事を避けたとその時は考えたが、今はメリルに嫌われる事が嫌で逃げたんだと理解している。

 それでも、行動に移れない。

 物理的にも、精神的にも傷つけてしまうかもしれないのは事実なのだから。


 覇王と呼ばれたこの私が随分と臆病になったものだ。


 11月9日

 メリルだけでなくいい加減ターニャも限界に近そうなので、先月くらいに町でメリルに着せたワンピースを無理矢理着せてみた。


 ターニャはこんな便利な物があったのなら早く出してくれと怒っていたが、そもそもメリルに着せた時に要らないと言ったのはターニャであり私はちゃんと聞いたので悪くない。

 悪いのは全てターニャだ。


 11月10日

 また雪が降り始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ