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覇王セリスの後日談  作者: ダンヴィル
最終章、大きな決断と私達の一生
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私達の一生


 私の名前はメリル・アルバーン。

 私の国では同性同士では結婚できない法律でしたが女性同士でも子供はつくれると魔法的理論によって証明し、何十年と先まで過ぎてようやく一般の人にも女性同士でも言うほど変な事では無いという認識になった頃に結婚し、アルバーンへと変わりました。

 ダンヴィルの方は妹がいるので妹が残してくれる結果となりました。

 ちなみにですが、同性婚ですが世の中女性より男性同士の比率のが多いのです。

 どちらにしろ子供をつくれるので問題ありませんね。



 それは置いておいて、私とセリスの間に子供ができ、店もしつつ子供の面倒も見て魔法書を書いたり新たな魔法を作り出したりしていた私達はこの世界の発展へ大きく貢献したという事になっていまして、今では教科書なんかにも名前がのっている程です。

 私達がしてきた事はただ自分がしたかっただけの自己満足だというのに、可笑しな話ですよね。


 手始めにセリスの世界の魔法的常識を初心者向け、中級者、上級者向けと纏め、どうせ纏めたのだから清書は任せて書籍にしてばら蒔いて、初心者向けとして出したのは手柄が欲しかった人に横取りされてしまいましたが、それ以降はその反省を生かしてちゃんとお金が入るようにしましたし問題ありません。


 次に様々な不明点の数値化。

 個人能力測定カードを作成、さらに個人能力測定カードを量産する魔法具の作成に成功し一定の魔力を持つ者であれば作成可能になり、自分の実力に見合った依頼を受ける事で冒険者の死者が今まで以上に減り、様々な目安を付けやすくなりました。


 測定カード量産魔法具の作成が終わった頃ですかね。

 セリスが覚醒についての理論を纏め、それを証明しました。

 それは民間人には無関係でしたが………


「ねえメリ~。なんか私城に呼ばれたのだけれどどうしたら良いと思う?」


「へ?城に呼ばれたって何したの?」


「さあ?でもほらこれ」


「ん~……これ、王族の烙印だよね?えっ?偽造……な訳無いか」


「うん、そうだね……」


「………臨時休業にしましょう」


 という感じで、国の裏側のほぼ全域に大変な騒動を起こす事になり、軍事体制の見直しなんかにもなったという話でして、それを直接聞かされてセリスが王命により呼び出されて当然だと理解したと同時に私も巻き込まれて大変でした。

 セリスに習って訓練を手伝ったり魔法の勉強させたりして引き継ぎの者としてティナさんの一人に来てもらうまで本当に大変でしたよ。


 その騒動が一段落し、爵位式で実績を認められ褒美を与えなければ国として示しがつかないと言われてしまい辞退できなくなってしまいました。


「うぅ~……欲しい貴重金属も自力で取りに行くし本当に思い付きませんね………どうしましょう?何か貰わないと逆に失礼なんですよね?」


「国には面子ってのがあるからね。

 それに形だけでも繋がりがあるって周囲に証明したいんだよ」


「なるほど……大規模な商談に似てますね。

 自分に不相応な高級時計を持ったりして……どう考えても要らないわよ」


「その時計は絶対必要なんだよねぇ~。

 それならダメ元で土地でもねだってみたらどうだい?」


「土地なんて貰ってどうするんです?」


「そりゃ~………メリルなら作れるでしょ?魔列車」


 このセリスの提案を即座に受け入れ、なるべく村も町も無くただただ広い土地をくださいと言ったら貰えてしまいました。


 真っ先に自宅から転移できるよう設備を整え、店と子育ての合間合間で作業していたのですが1年でなんとか形にしたトロッコサイズの小さな魔列車を途中経過の報告で「この20倍以上大きくて100倍以上効率の良いモノを作る予定です」とセリスが魔列車の写真付きで国に報告してくださりまして、またしても王命により魔列車開発に力を入れる事になってしまいました。


 おかげで店は従業員を増やして完全に任せる形になってしまって……

 ですが、とても充実していました。

 何故なら商人と魔法使い両方をこれでもかって楽しめたのですよ!

 結論から言えば魔列車を形とさせるまで10年掛かりましたが本当に充実していました。

 どれだけ安くできるかの商談、思い付いたアイデアをつぎ込んで失敗して考えて、また足りないモノを大量に買うのに商談して、私達の二人目の子供、デニスの妹のアレッタをセリスが産んで益々忙しくて、これが楽しくない訳がありません。


 普通の人なら仕事ばかりと思うかもしれませんが、私達は普通ではないのでデニスとアレッタの面倒も沢山見ましたよ。

 なんせ私達には睡眠なんてモノは必要ありませんからね。

 雇った技術者や職人に休んで下さいお願いしますと頼まれるくらいには良く働き、良く面倒をみて、隙をみてはセリスとイチャイチャしたりして、唐突に始めるセリスと私の劇のようなやり取りは知らないうちにこの職場の名物にされていました。


 そんな中で育ったデニスとアレッタですから、幼いのに沢山な経験をしていましたよ。

 ですからターニャの娘であるダルクちゃんとジャンヌちゃんと変な所で認識の違いが出てデニスが泣いちゃって、泣かせちゃった二人が困った様子でつられ泣きしてしまい、アレッタまで共鳴するように泣き始めるてしまったりと、今でも良く覚えていますよあの光景は。

 私が止めに入るのですけど、けっきょくはミューズの方が上手でミューズがとても頼もしくて、それでもミューズにばかりに懐くもので、私もセリスも少しだけ悔しかったり微笑ましかったりしていましたね。


 ミューズですが、魔列車がやっと魔列車の大きさになった頃、義務教育の年齢になったので学校へ行くことになったんですよ。


「いや、ミューズに義務教育必要無いだろう?

 それよりデニス達を見てもらったりとか色々あるし」


「そうですけどこれも必要な経験です。

 それにコネクションは大切ですから、誰かと強い友人関係になれればそれで良いのでは?」


 と、多少セリスがごねましたが説得の末に無事学校へ通ってもらう事になりました。

 その2年後、魔列車が完成してすぐダルクちゃんとジャンヌちゃんも義務教育となりデニスとアレッタが少し寂しそうでしたね。


 魔列車が完成したと言いましたが、繋がっているのは私の家のあるレドランスの手前と城の存在するブルンガルドの手前、そして王族から貰っただだっ広い土地のみです。

 ここまで来ると私達より線路を作っていた職人達に任せた方が良いので手伝いが必要な部分以外は全て彼等に任せていました。

 先にどこへ線路を繋げるか注文をするのは私達でなく王族ですから、本当に必要最低限の補佐しかしませんでした。


 そう、補佐に回って初めて知ったのですが……

 なんと私、知らないうちに貴族にされていました。

 正確にはセリスを貴族にしようとしたらしいのですが、セリスを取り込むのに私を取り込む方が効果的だとターニャが進言したらしくて……

 まあ、準魔法騎士という仮貴族もいい所なんですけどね。


 私を貴族としようとする国と、貴族の血のみを重んじる貴族で血塗れな事があったそうですが気付いた時には全てが終わっていて、私もそろそろ化物の仲間入りかななんて浮かれていたのに、セリスの足元にも及ばないティナさんですら越えられるイメージがちっとも湧きません。

 それだけ大事で私を中心に起きていた筈なのに、私に気付かれず終わらせるってティナさんは本当に化物ですわ。

 そんな血生臭い事より私にとってミィさんがミカエルさんと結婚したという事の方が大きな出来事でした。


 ミィさんのお祝いをしている間に私の領地はホワイトウィンドという名前になってました。


 魔列車に話を戻すのですが、路線が増えると今度はエネルギー問題が発生しまして魔力効率は問題ありませんが元々の魔力が少ないんですよねぇ。

 どうするべきか考え5年行き詰まりました。


 思い付いたのはセリスと夜中イチャイチャし終え、何となく窓から外を見たら雪がとても積もっていまして、まだ止む気配がしないその様子を見て、そういえばこんな雪の日に行ったんでしたっけと考えが過り……


「………ねえセーちゃん」


「なんだいメリー?」


「魔列車ですけど古代竜クラスの魔石があるなら手っ取り早く今の問題を解決できるって言ってましたけど、もしかして天空城に封印されている大天使を使えば解決しません?」


「えっと……あのねメリー?あれはただ長生きしただけのトカゲがどうこうできる存在じゃなくてね、古代竜なんて長生きだけの弱い存在が束になってもどうにもならない存在だよ?」


「うん、でもあやかし桜ならどうにかできるんじゃないの?

 あれって冥界の力を吸収して光っている訳だし、私なら作れるよ?

 ううん、作りたい。

 またあの景色を見たいしデニスやアレッタにも見せてあげたい。

 ねえ、やってみて良い?良いわよね?お願い、セリス」


「………はぁ、そんな目で見ないでおくれ。

 わかった、良いよ。私が全力でサポートするから力一杯ぶつけてみ」


「ありがとうセリス!愛してます!」


 そうしてできたのが現在観光地になったホワイトウィンドの町をスッポリと覆う巨大な光る桜、あやかし桜です。

 この桜を見る為だけに魔列車で遠くから来る人も少なくないと聞きます。

 このあやかし桜の下には大天使が埋まっていて、天使の魔力を吸い取るあやかし桜を魔列車の供給源にしている事は国家機密ですよ、フフフフフ……


 他にも様々なモノを作りましたが、デニスがダルクちゃんと結婚したり、本の虫であり教授になったアシュリーは魔法学校に引きこもっていて帰って来たと思ったらミィさんの六男と学生と教授の関係でありながら交際をしたいと報告してきたり、そして生まれた子供達がまた結婚して、そのまた子供達がまた結婚して………


 思い返せばあっという間の350年だったと思う。


 私達は本当に好き勝手やって、世間が素晴らしいと絶賛するモノのその殆どが、なんとなく思い付いたから作ったモノばかり。


 そんな私達二人、私の寿命がもう目の前に見えた頃、怖くないようにって、今日、セリスが先に行った。


 沢山の名も知らない人達がセリスを称え、泣いてくれて、恐怖で全てを支配した覇王が、もう失うのが怖くて泣いてばかりだった女の子が……こんなにも沢山の人達に…………

 それが心の底から嬉しくて、孫や娘達とは違った涙を私は流した。


 その後親戚だけで集まりセリスのなんやかんやを済ませて、ミィさんに親戚同士のみでの葬式では私が雑にしていた理由を的中されられてしまいましたが皆には話さないで貰いました。


「おはようメリー。パンと卵のスープにソーセージで良いかい?」


「おはようセリス。えぇ、それが良いわ」


「それじゃササッと作るね」


 いつものように起き、いつものように席について二人で朝食を取………


「あ……アハハ、今肉体が無いから食べれないの忘れてたよ」


「もうセリスも年だからねぇ~。物忘れ激しいのはしょうがないよ~」


「む……渾身の冗談をかわされた………流石メリー」


「何年一緒に過ごしてきたと思ってるのよ。

 まあ変わらず愛してるけど」


 私達に老いは無い。しかし寿命は確かに存在する。

 老いる事の無い私とセリスは、最後に起きた大き過ぎる騒動である鏡の中の事件から容姿も頭の回転の早さも全く変わっていない。


 セリスは力で無理矢理引き伸ばしていた寿命を無理矢理縮めて私より数日早くに死んだだけで、私と一緒に輪廻へ帰る予定です。

 今はレイスに似たモンスターのような状態になって私へソーセージを食べさせようと近づけ私もノリノリで食べさせてもらう。


「介護が必要なんてメリーもお年だねぇ」


「えぇ、お年ですからねぇ」


 そんな風にクスクスと笑いあっているとひ孫の一人が起きてきた。


「あ、おはようございます……メリルばあ様………セリスばあ……様?」


 可愛い可愛い一番遠い孫娘のイザベラちゃんが眠たそうに目を擦りながら挨拶をして………


「お母様!お母様ーッ!!!」


「ほら、セリスが怖がらせちゃうから逃げちゃったじゃない」


「私のせいかい?」


 私もセリスも地味に意地悪な所も相変わらずで、お互いクスクスと笑う。


「……で、真面目な話なのだけど私の魔石はちゃんと新鮮な状態で取り出せたのかい?」


「もちろんよ。誰に言ってるの?これは私達の最終目標なのよ?」


「そうだね、私達の一生だ」


 この後家にいた一族で大騒ぎしましたがとくに問題ありません。

 ですが「私はただの悪霊だから生きてるよ」というセリスの発言が変なところに入って爆笑してしまい、予定より早く死ぬかと思ったなんて事がありましたね。


 まあ少し寿命が伸びただけで、その5日後無事に私も死んだんですけどね。

 ちゃんと私の魔石と羽も外してから燃やしたので準備は完了。

 最後の最後、私とセリスの肉体から取り出した高濃度の魔石をその剣へ嵌め込む。


「……完成したね、メリー」


「えぇ……今まで見てきたモノじゃ比較する重石にもならない程圧倒的に大きな力を感じるわ………」


「そうだねぇ。私の魔力が可愛く思えるなんて経験は初めてだよ」


「…………で、この剣の名前けっきょく何にしようかしら」


 この言葉を切っ掛けに私とセリスは2年考え続けました。

 現在冒険者をしていて、私の葬式の後すぐに旅に出たミューズが戻ってきて私達の気配に気付いてくれて、隠し実験室で永遠に案を考えている私達を発見してくれて助かりましたけど、帰ってこなかったら地縛霊になってましたね。

 これがモンスター化というものでしょうか、素直に怖いと思いましたよ本当。

 でも楽しかったんですよ?

 ミューズに「まだ成仏してなかったの?」と言われてから2年も経ってたと聞かされるまで時間の感覚を忘れるぐらいには楽しかったです。


 それよりミューズが発見してくれた事は正に運命的だと私もセリスも思ったんですよ。

 なんせミューズは白夜の黒三日月魔法商店の名付け親です。

 ミューズの名前を付けるネーミングセンスなら良いだろうと考え託した結果………


「魔剣セリルセイバー」


「「え?」」


 私達の生涯で疑問符が重なるなんて経験は初めてでした。

 死んでますけど。


 それより何でそんな名前にしたかと聞いたのですが、

「セリス様とメリル様の名前を足しただけだよ?」らしいです。

 なんとも分かりやすいですが本当にそれだけかと聞き返しても頷くのみ。


 私達がミューズをどうするべきかと視線で会話をしようとした時です。

 ミューズの体が紫色にあやしく光り、名付けた魔剣セリルセイバーも共鳴するように光り、形を変えていき……

 それはまるで魔王の姿の時の爪のように禍々しい色合いの剣となり、ただでさえ桁外れな力を秘めていた魔剣が更に高い次元へと力を増幅させたのです。


 これには私もセリスも嬉しい誤算すぎて笑いが止まらず、その勢いでこの魔剣はセリルセイバーで決まりました。


 そして最後の最後、私とセリスは誰も居ない森でその剣を二人で持ち、お互いの顔を見合い意思を合わせ……


「「魔剣セリルセイバーよ!時空を切り裂け!!!」」


 下から上へ切り上げたその刃は時空を切り裂き世界に隙間が発生する。


「行くよメリル!」

「ええ!」

「「せーのッ!!!」」


 魔剣セリルセイバーを時空へと放り込んだ。

 同時に切り裂かれた時空の歪みも消滅する。


 私達が魔剣セリルセイバーを作ったのはけっきょくのところ楽しむため。

 私達がこの一生でどれだけ探求し続け楽しみ続けたかを形としたものが神器にも負けない究極を追求して作り上げた魔剣。


「さあ、いったいどんな奴に拾われるのやら」


「私達の疑似人格も入ってますし気に入られなきゃ使われないわよね~。普通の人じゃ使えないでしょう」


「面白い奴が良いね」


「優しい心を持った人が良いわね。子供好きなら尚良し」


「………まあ、けっきょく選ぶのは魔剣セリルセイバーであって私達じゃない。

 私達も私達で向かうべき場所へ行こうか」


「そうね。次もセーちゃんと一緒に生きていたいわね」


「そうだね。私はずっと側にいるよ、メリー」


「ん、期待してるね」


 セリスが差し出す手を取り、私達は光へ目掛け空へ飛び、煙のように天へと消えた。

 願わくば次も、ずっと、幸せな時間をこの人と………


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