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覇王セリスの後日談  作者: ダンヴィル
最終章、大きな決断と私達の一生
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効率良く消耗を抑制し信頼を勝ち取りつつも大きな利益を得る事こそ商売の理想


 5月25日


『今年も始まりました第九十九回闘技大会いぃぃっ!!!』


 人がごちゃごちゃと沢山居る中に混ざっている最中。

 あまりにも暇で魔力感知を利用して全面を見渡しているとそんな声が響き渡る。

 魔力感知で見渡している光景はイメージとしては上から上空に透明な板を張り付けてそこから全面を見下ろす感じでして、声が響いた響いた事で周囲の人達に変化が起こる。

 あきらかにやる気を出して剣を抜くまではしないものの強く握る者など……ふぅ、こんな中に混ざる事になるなんて去年じゃ考えられませんね。


『解説は私、メイベルと過去四年連続優勝き記録を持つレオンハルトさんが去年に引き続き担当を受けてくださいました!

 今年の大会はどうなると読みますか?』


『魔神セリスが居る時点で出来レースだろうから準優勝が優勝しょうね。出場者は魔神セリスに当たらない事のみ祈るのみというのも正直どうかと思いますがこればかりは仕方ない』


 すぐ始まるものかと思っていましたがこの話しが中々に長く、それを聞いていて去年は気にもしませんでしが5月とはいえ直射日光の中でただボーッと立たされる選手は大変だったんですね。

 なんて他人事のような事を考えていると何人かが話の間に気配を殺して移動しているのを感知したのでそれに習って私もリングの真ん中を目指す。


 その移動中今日夢の中で話した内容を思い出しどうしようか悩む。

 その夢の内容ですが………



 ・



「や、おはようメリル」


 目を覚ますと目の前に楽しそうに品定めするような視線を向けるセリス……ではなく覇王と、見覚えの無いはずの図書館の光景を視界に入れ、ここのソファで昨日眠りに付いた事を思い出す。


「ふぁ……おはようございます………」


「珍しいね、随分と寝不足のようだ。

 この世界でも考えすぎれば疲れるのだが、それと同じように現実でも疲れすぎると僅かに疲労を持ち込む事になるんだけどそこまでなのは初めてだ」


「精神世界にそんなモノがあったんですね。

 悩みって言うのは簡単な事なんですけど……」

「知ってるさ。見ていたからね」


 起き上がりつつ説明しようとしましたが断ち切られました。

 いや、覇王が私の視界を通して事情を把握している事は知ってますよ。

 けれどそうじゃなくて言葉にして聞いてもらいたいことってあるじゃないですか。今のは正にソレですよ。

 こういうのは下らない理由ほどしっかり口にしたいものです。

 しかし覇王はそんなのお構いなしです。

 もう慣れましたけど。


「バトルロイヤルの解決法だけど、覚醒者のメリルが開始と同時に真ん中で最大出力の最上位風魔法で吹っ飛ばせば終わりさ」


「雑すぎません?」


「ソレで良いんだよ。風だけじゃ吹っ飛ばせない奴なんてゴロゴロ居るだろうけど、その吹っ飛ばない奴が吹っ飛んで来た奴と衝突して吹っ飛ばないかどうか……

 言っとくけど風圧込みで障害物がくるとなると必要な実力に天と地ほどの差が出るものだよ」


「具体的にどれくらい?ターニャくらい強くないとダメなの?」


「ターニャは相性の関係で吹っ飛ぶだろうけど最低限そんくらい必要かな」


「なるほど。やはりそういう所は数値化して具体的かつ効率の良いエネルギー量の算出ができるようにしたいですね。

 それじゃ今日も頑張りましょうか」


「それじゃいつも通り私は宝を愛でるとしよう」


「はいはい」



 ・



 いつもは夢の中での出来事は夢の外では忘れるようにしていたけれど、忘れては意味が無いので今日は覚えています。


 というより随分と楽しそうな事を独り占めしてましたね夢の中の私。

 今後アレは現実でも試行錯誤しながら創りましょう。


 などと考えていると開戦の音が鳴り響く。


 負ける要素を見付ける方が難しいので私は余裕をもって行動する。

 覇王は風の魔法で良いと言っていたけれどそれじゃ不確定要素が多すぎると思うんですよね。

 そもそも考え方が雑すぎます。

 もっと他の属性も組み込み少いエネルギーでより効率良く無駄を省き魔力消費量を抑制しつつ覇王が提案した方法よりずっとモノを遠くへ吹き飛ばす強力な魔法。

 風、雨、音、幻、磁力、衝撃………

 羽から伸びる魔繊手(ませんしゅ)を駆使して一瞬で書き上げた魔法陣の中心に魔力を通していく。

 それに反応するかのように杖に埋め込まれた魔結晶が光だし、より私の魔法を高めてくれていて、僅な浮遊感のような不思議な感覚の中で解き放つワードを呟く。


「カタストロフィ」


 魔法が発動するまで一秒もかからなかったでしょうね。

 卵のカラのように私を覆う黒いモヤのようなモノが出現し、確かな衝撃と共に風のように大きく広がり吹き飛ばし、リングを砕き…………


「…………」


 や……やり過ぎた…………

 皆リングアウトで私だけが異常に亀裂の入ったリングの上に居て……って、このままじゃ不味い!急いで私は魔法を行使してリングの復旧に取りかかった。

 そのタイミングで爆音のような歓声が会場を覆い解説も入るけれど、壊したり作成するのよりも直す方が基本的に大変なんですよ。

 ましてやこのリング、端から端まで亀裂の無い場所を探す方が大変なくらいにはボロボロじゃないですか。

 セリスが手伝いに入ってくれたからすぐに終わりましたが解説や観客の歓声なんて聞いていられる余裕がありませんでした。


 この様子ならもっと魔力を節約するべきだったと後悔しつつ、上手くいったら今書いている最中の販売予定の魔法書に記そうとしていましたが止めることに決めました。

 こんな破壊魔法禁書行きですよ。


 直し終えて次の試合の時間になるまでどうしようかとかんがえていると、参加してたけど私と同じブロックになった瞬間棄権したアリスと、夫のハリーさんを引きずるように連れ回すターニャに物凄く絡まれ冗談を言い合い……楽しかったですね。


 私も観客側が良かったなぁ……

 さて、切り替えましょう。


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