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ゲーム好きな少年と幼馴染

作者: ヒネデレ
掲載日:2017/04/26

視界を狭めるほどに狭い空間。

光も届かず、すきま風が不意に聞こえるこの地。

ここは灼熱の洞窟。

この世界、サラマダを支配せんとする魔王幹部の一柱、サラマンドラの住まう城だ。

俺たちがここに来たのは、当然、その主であるサラマンドラを倒すためだ。

洞窟に入ってた当初、まだ外の空気が多く入り込んでいたときは涼しげだったここも、今ではサラマンドラの放つ熱気によりとてつもない温度へと跳ね上がっている。

そう今、俺たちがいるのは灼熱の洞窟の最奥、サラマンドラの根城だ。

戦闘開始からもうすでに数十分が過ぎたこの地は、サラマンドラの攻撃によりより一層暑さを増している。

だがそれでも、汗を拭いとる暇などあろうはずもない。全身を焼く蒸し暑さを戦いに投じることで思考の端に追いやり消し去っている状況だ。

「リーリャ、回復急げ!!」

「わかってるにゃ!!」

長らく続いた戦いは確実にサラマンドラを追い詰めていた。鱗は所々剥がれ落ち、爪や牙も欠けさせることにからそれは一目瞭然である。しかし、それはこちら側も例外ではない。熱波による持続的なダメージも時間がたつごとに総量が増えていき無視することはできない。そのうえサラマンドラからの攻撃もあるのだ。爪や牙による斬撃、刺突。尻尾による打撃。炎の息吹は火傷という付加効果を持っている。これらの数多い手段による攻撃を全て捌いたり避けきること等できうるはずもない。そしてそれは決して軽くない威力で無視できないダメージを叩き込んでくるのだ。

当初は追いついていた回復も次第に追いつかなくなり俺たちパーティはすでに満身創痍になっていた。

つい、苛立ち混じりに叫んでしまった俺の言葉に叫ぶ返すようにリーリャは答えてくる。

すると、全身が淡い光が包み込んだ。

仕事の早いことで。

口元をニッと吊り上げた俺は先程振り下ろした大剣を持ち替え斜めに振り上げる。斬撃は滑るようにサラマンドラの表面を登っていく。

血しぶきが舞い、辺りにサラマンドラの雄たけびが轟く。

「スイッチ!!」

仰け反る形になったサラマンドラにたたみかけるように叫ぶ。

「おうよ!」

「らじゃーなのよさ!」

その声に応えるように俺の後ろから二つの声が聞こえ、そして二つの人影が前へと現れた。

両手斧を使う巨漢の大男であるダリルと、小柄な容姿で二振りの剣を扱う少女エリルだ。

対照的な二人は交わるように交差しながらサラマンドラに向かって疾駆する。

エリル、ダリルの順に辿り着くと、エリルは惚れ惚れするような剣舞でサラマンドラを切り刻み、生まれた傷を抉るようにダリルが斧を叩き込み傷口を広げていく。

しかし、そんなことで終わるのなら幹部などなのる資格もない。そう言わんばかりに目をぎらつかせたサラマンドラは激しい痛みを受けているはずなのにそれを感じさせないたたずまいで連撃を続ける二人の元へとその鋭い顎を広げ、大きく息を吸い込む動作を見せた。

まずい、ブレスが来る。

「二人とも、すぐに下がるんだ!! 」

だが、俺の叫びも攻撃に集中しきっている二人にと届くはずもない。

「くそっ」

それを理解すると同時に俺はすぐさま二人の元へと駆けだした。

「なにしやがる!?」

「今いいところだったのよさ!」

二人は何やら文句を言っているがそれに付き合っている暇などない。

二人と襟を掴み後ろへと放り投げた俺は入れ替わる形でサラマンドラの目の前へと躍り出る。

そして、走り始める際に背中に収めた大剣を取り出し、全力でサラマンドラ、その口へと向けて投げ飛ばした。

「あたれー!!」

飛び出し宙を舞う大剣は勢いそのままにサラマンドラへと突き進む。

しかし、後一歩及ばず、サラマンドラの準備が整ってしまった。

視界いっぱいに広がる炎の海を前に絶望に包まれ、恐怖でそっとその目を閉じる。

「まだよ!!」

勝つことを諦めてしまった俺に突如そんな声が届き思考をたたき起こした。

振り向くとそこにはローブ姿の少女が杖を突きだし呪文を唱え終わった状態だった。

俺のパーティで、魔法による攻撃を担当しているカリアだ。だが、カリアはすでにMPをほとんど使い果たして碌な魔法が使えなかったはず。

「風よ!!」

カリアは叫ぶように魔法を発動する。風の初級魔法であるその効果は小さな風を起こすことだ。やはり俺の予想通りの代物だった。威力を上げるためか風を一点にまとめているようだがそんなものはサラマンドラ相手では誤差の範囲だ。そもそも、そんな魔法ではサラマンドラには掠り傷一つ与えれれば御の字というものだろう。

最後の悪あがきといったところだろうか。

だが、それでももしかしたらと思わずにはいられなかった。祈るような気持ちで風の塊を見つめる。

しかし、現実にそんな奇跡が起こるはずもない。魔法はサラマンドラにあたることすらなく、飛翔物にぶち当たり霧散してしまった。

カリアを見てみるものの今度こそMPが付き切ったらしく膝をつき荒い息を吐いていた。これにより俺は完全に負けたことを悟った。

「なにそんな顔してるのよ。まだ、勝負は終わってないわよ」

「お前、何を言ってるん------」

カリアの言葉にとうとう夢でも見始めたかと呆れかけたその時、今回の戦いで最大級の轟音が辺りを震わせて戦慄かせた。

何ごとかと思い、確認するとそこには、口を大剣で貫かれ暴れているサラマンドラの姿があった。

どうしてこんなことになっているのだろうか。

「リース、まさか私がただ単に苦し紛れであんな無意味な魔法を放っただなんて思ってないわよね」

「え、違うのか!?」

俺の驚いたようすに心底あきれ果てたようにため息を長いため息をしてくる。

「はぁ、あれはリースの投げ飛ばした大剣を押し込むための魔法よ」

それでも、ちゃんと説明してくれるこいつは何気に面倒見のいいように思えてしまう。

「そうだったのか」

「何でこんなことも気づかないのよ」

素直に感嘆していると水を差すようにカリアは毒を吐いてくる。

「そんなこと言われなきゃわかんねぇに決まってんだろ!!」

俺とカリアが討論の末に両者が説得のために俺が予備の長剣を、カリアが杖を構える。

もちろん、説得に使う言葉は肉体言語を用いてだ。いつもは比較的開けた場所での論争が多いため煮え湯を飲まされてきたがここは洞窟だ。使える魔法に制限がかかる上に、今の距離はカリアの間合いになるよりも俺の攻撃が入る方が速い。

しかし、結論から言うと、勝敗は無効というか戦うことすらできなかった。

「まぁまぁ、痴話喧嘩はそこまでにしろよ」

ダリアが俺たちの間へと入ってきたからだ。ダリアは俺たち二人のことを呆れながら見つめてそんなことを言ってくる。

確かに、仲間同士で戦うのはご法度だ。そのため、俺は渋々だが構えを解いた。

仲裁に入ってくれたダリアには感謝の念を抱く。

だが、それでも、どうしてもどうしても言わせてもらいたいことがある。

「誰がこんな奴と」

「誰がこんな奴なんかと」

俺たちは決してそんな関係ではないということを。

その思いはカリアも同様らしく反論をしていた。

そのことに少しイラっとしてしまうものの、カリアも反論したことに対しては別に何も言うつもりはない。

だが、わざわざ俺と被せてくるのはやめてくれないだろうか。

カリアを睨みつけるものの当のカリア自身もこちらを睨みつけていた。

「だから、いちいち合わせてくんなよ」

「それはこっちのセリフよ」

「はいはい、ご馳走様なのよ。そんなことよりさっさと報酬の山分けをするのよさ」

このままでは話が進まないとばかりにエリルが手を合唱させ、その破裂音により辺りが無音になった。

そこで、ようやく我に返った俺はエリルに応える。

「あぁ、そうだな」

「そうね、じゃあ私は------」

それぞれが自身のアイテム一覧を眺めようと指を動かした。

しかし、次の瞬間俺の目に映っているものはなかった。

アイテムが一個も手に入っていなくストレージが空っぽだったという意味ではない。

俺の目には洞窟の岩の壁も、仲間たちの姿も消え去ってしまったのだ。

まるで、この世界から切り離されるように、俺はそこから突如いなくなってしまったのだった。



時刻は朝方。

夏場で日差しが眩しい太陽は、この場所が室内のため光を届けることができないでいる。

だが、その暑さを妨害することができず、エアコンの切れたこの場所はじっとしているだけでも汗をかいてしまい、数十分この場所にいただけで運動した後のような熱気を感じていた。

しかし、そんなことは今はどうでもいい。俺は自分の生命線ともいえる大切なものを取り上げた輩に向かい奪い返すために手を伸ばす。

しかし、俺が座っているのに対し、奴は立っている状態だ。手を上にあげられてしまえばいくら俺の方が身長が高いと言っても届くことはない。

「おい、何すんだよ!!」

「そんなことばっかりしてないでさっさと準備しなさい学校に遅れるわよ」

言葉を使い抗議するものの奴はただ呆れたようにこちらを見るだけだ。

「うるさいな、俺の勝手だろ」

ほっといてくれと文句を言うものの、奴は今度は意味の分からない根拠を使い俺の言葉を突っぱねた。

「それだと私が困るのよ」

「なんでだよ」

「私も一緒に行くんだから当然でしょ!!」

さも、当たり前のようにそう宣言する奴だが、そんな約束を俺はした記憶はない。恐らく、お節介の押し付けというものだろう。だが、そんなものはノーサンキュウーだ。

「なら一人で行けばいいでだろうが」

「むっ、そんなこと言うんだ」

「な、なんだよ......」

「もう知らない」

「なんだよ一体......」

不満なのを隠しもしないで奴は去っていく。

その後ろ姿を見ながら俺はそんなことを呟いていた。


俺のかよう学校には学校中でも有名な一人の生徒がいる。

宮島みやしま 瑠璃るり

容姿端麗、スポーツ万能で学校の噂によく名乗りを上げる生徒だ。成績優秀がないのは彼女が頭の出来が悪いからという訳ではない。成績は他の実績と比べてそこまで目立つような順位ではないからだ。実際に彼女の成績は中の上から上の下辺りを上下しているがそれでもそこで常にキープされているのだから。容姿や運動神経に関しては天賦の物だが勉強に関してだけ言えば彼女はそこまで賢いという訳ではない。テスト期間から勉強を開始していたならば中の下を彷徨うことになっているだろう。だが、そうなっていないのは偏に彼女自身の努力に他ならない。俺にとって彼女の最大の才能は努力なのではないだろうかと常々思っているのだ。

なぜ、俺がこんなにも宮島瑠璃について詳しいのかと言えば答えは簡単だ。

「瑠璃、ちょっといいか」

俺が瑠璃の幼馴染であり、彼女が今朝俺から俺の宝物、ゲーム機を奪った存在なのだ。

今は昼休憩。そうそうに弁当を食べ終えた俺はいつものごとく瑠璃のところに来ていた。

三限目の宿題を写してもらうようにお願いするためだ。

「ふん」

しかし、聞く耳を持たないとばかりに瑠璃はそっぽを向いてしまった。

学校で会ったときにはすでにこうだったのだから、俺に学校で何かできたかなど思いつくことができない。ならば今朝のことだろうか。だが、あれで機嫌を損ねられる理由がわからない。ならば、これは瑠璃からの仕返しということになるのだろう。

「おい、頼むから聞いてくれよ」

だが、それで完結するわけにはいかないのだ。三限の講師である新沢先生は宿題をしてこなかった生徒には放課後に居残りで指導をしてくる先生なのだから。

「うるさい、あっちに行って」

それでもなお、話を聞いてくれすらくれない。

そのため、俺は伝家の宝刀を繰り出すために後ろへと一度引いた。

そして、垂直に飛び上がると膝と太ももを重ね、両手は地面へとつけて頭突きをするように頭を振り下ろした。

土下座である。

「頼む聞いてくれよ、このままだったら宿題の未提出で居残りになるだよ」

「知らないって言ってるでしょ!!」

これで瑠璃は呆れて宿題を貸してくれるに違いない。いつもの出来事を思い出しながらそんな確信を抱いてのだが、どうやら今回はそううまくいかないらしい。

教室に響き渡らせるほどの大声により注目は俺の土下座から瑠璃へと向いてしまった。

こうなってしまえば、瑠璃の恥ずかしさを煽るというややり方はもう使えない。手だてを思いつかなくなってしまった俺は作戦を練るのをやめ普通に瑠璃に話しかけた。

「なに怒っているんだよ。宿題くらい貸してくれたっていいじゃないか」

「ほぉ、佐藤は宿題を宮島に借りようとしていたのか」

ようやく、会話ができたと俺はこのチャンスを逃すまいと言葉を続けた。

「そうなんだよ、俺はゲームで忙しかっていうのにひどい、よ、な」

しかし、そこで声の主が瑠璃ではないということに気が付いた。

油の切れた歯車のようにゆっくりと振り返る。

するとそこには、満面の笑顔の新沢先生の姿があった。

「ち、違うんです。今のは、そうただの冗談なんです」

「ほぅ、ならちゃんとやってきているんだろうな」

「それは、そのですね家に忘れてきちゃったんです、なんて」

「佐藤」

新沢先生が俺を呼ぶ。

「は、はい」

俺は背筋を伸ばし答える。

「お前、今日は帰れると思うなよ」

そして告げられた言葉は、補修確定の宣言だった。

「そ、そんなー」

「ばかみたい」

絶望で頽れてしまった俺を見て瑠璃は小さく呟いた。

そのことにむかついた俺は瑠璃を恨みがましく睨みつけた。

しかし、すぐに瑠璃は俺から視線を離しそっぽを向いてしまうのだった。


「なんなんだよいったい」

学校での拷問の様な補修をなんとか乗り切れた俺はふらふらとよろめきながらも家に到着し、自分のベットへと飛び込んだ。

しかし、こここのまま寝るという選択肢はない。

そんなことをしてしまえば折角頑張って補修を終えた意味がなくなってしまう。

ベットの側で充電していたゲーム機を充電器から抜き取り、電源ボタンを押す。

すぐに、真っ暗だった画面に色鮮やかな映像が流れだした。

直ぐにゲームを起動しゲームをスタートすると、お知らせを告げるアラーム音が鳴り響く。

確認すると、それは今朝一緒にボスへと挑んだパーティのメンバーからのメールだった。

ゲームを操作しメールを開くと、文字が浮かび上がってきた。

内容は要約すると、素材の配分についてを後日に持ち越そうというものだった。

素材のことは、半ばあきらめていたためこれにはつい手を握って喜びをかみしめてしまう。

俺はさっそく切れてしまったお詫びとその理由、配分を持ち越してくれた感謝の言葉を認めて全員へとメールを送信した。

一気に機嫌がよくなった俺はさっそく冒険に行こうとする。しかし、今朝ボスを倒してしまったのだ、今それ以外の敵と戦ったところで作業のような気持ちになってしまうかもしれない。そのため、ボスを一緒に戦ってくれるメンバーを探そうとフレンドを確認する。だが、今は誰もインしていないらしくボス戦に行くことを断念するのだった。

手盛り無沙汰になってしまったが、ゲームをやめるつもりは毛頭ない。ここでやめてしまうと何かに負けてしまった気がしてならないのだ。そんな半ばやけになった気持ちの中で、久しぶりに街をぶらつくのもいいだろうと街を歩いていく。

「あ、あの」

この通りはプレイヤーが多く店を出しているのか。

「ま、待ってください」

しかし、この通りはこのフロアで使うには少々レベルが高すぎやしないか。これだと、プレイヤースキルが鍛えられなくてボスでコテンパンにやられてしまいそうだな。

「ま、待ってください!!」

店を見回りながら歩いていると、後ろから人の呼ぶ声が聞こえてきていた。

だが、それは俺ではないだろうと思い無視していたのだどうやら俺であったらしい。

「わぁふっ」

足をとめて振り返るものの、相手は足を止めなかったらしく衝突してしまった。

「何やってるんだよ」

呆れはて声でいまだ俺の胸に顔を埋めているラズリという少女に尋ねる。

「すいません。こういうの初めてで」

すると、跳ねるように飛び下がり後ろに転倒したラズリがゆっくりと立ち上がりそう言ってきた。

「お前。初心者か」

「はい、ですので申し訳ないのですが操作の方法を教えて欲しいなーと思いまして......」

俺の問いに答えたラズリは非常に申し訳なさそうに頼んでくる。

だが、俺はそんなしちめんどくさいものに付き合うつもりはない。

「すまないが、他のやつに聞いてくれ」

にべもなく断った俺はすぐに体を翻し再び街を周ろうとする。

「あ、待ってください!!」

しかし、ラズリが服を引っ張ってきたことで止められてしまった。

「俺は無理だと言っただろう」

ラズリの腕を掴み無理やり引き離した俺は少女に見向きもせずその場を立ち去った。

「おい、嬢ちゃん困ってるなら俺たちが代わりに教えてあげようか」

「そうだぜ、俺たちの方があんなやつより上手く教えられると思うぜ」

「あ、あの......」

ラズリから離れしばらくすると後ろからそんな頭の悪そうな声が聞こえてきた。

ナンパだとしても今時あんな言葉を使うやつを初めてみた。

彼女も彼女だ嫌ならばそいえばいいのに困惑し狼狽しているだけだ。

「はぁ、なにやってんだか」

俺はそんな独り言を呟き歩みを進めた。



「おい、お前ら」

道の前でたむろするプレイヤーに俺は声をかける。

「あん?なんだよお前には用はないんださっさとどこか行けよ」

「いや、通行の邪魔だからそこどいてくれないか」

「あん?だっよそんのそこの脇を通りゃいいだろうが」

そう言ってプレイヤーが指示したのは人一人がギリギリ通れなくもない横道だった。

ここを通って遠回りで行けと言うことだろう。確かに、こんな連中を気にしているよりも素直に従った方が幾分か早く向こうにつくことができるだろう。

「あぁそれもそうか。すまなかった」

そう判断した俺はプレイヤーに一言伝えてから横道へと向かっていく。

「おい行くぞ」

一人の少女を連れて。

「え、え!?」

少女は困惑した様子だが、面倒をかけてくれているのだ。このくらいは我慢して欲しいものだ。

「おいなにかってに連れていこうとしてんだよ」

少女を連れて行こうとすると、案の定プレイヤー達は待ったをかけてきた。

なので、俺はさも、知らなかったという態度で答えた。

「なんだお前らの連れだったのか?居心地悪そうだったからてっきり、道を通れなくて困ってるんだと思ったが」

「んな茶番はどうでもいいんだよ!お前さっき向こう側に歩いていこうとしてたじゃねぇか」

「ちっ、さすがに無理だったか」

だが、そう簡単に終わることはないらしい。長くなりそうな予感に舌打ちをしてしまった。

「やっぱりそうじゃねぇか、関係ないやつはどっか行くんだな」

「まぁ、俺は確かに部外者かもしれんがお前らよりはましだと思うぞ」

プレイヤーは俺に対してそう言ってくる。

しかし、それはこちらも同じだった。

「あ?なに言ってやがるんだこいつ。今俺たちがそいつに話しかけてたの見てなかったのかよ」

プレイヤーは俺のことを馬鹿にするように嘲笑する。

「あぁ、ゲームのコツを教えるってやつか」

「なんだよ、聞いてんじゃねぇか。だったら------」

「でも、お前らじゃ無理だろ」

それにお返しとばかりにプレイヤーに向かって嘲笑し返した。

「何だとごら!!もういっぺん言ってみろや」

当然、ぶち切れてきたプレイヤーに俺は再度プレイヤーに変わらない事実を伝える。

「いや、だから初心者のお前らじゃ教えることは出来ないだろっていってんだよ」

「あぁ?なにに言ってんだごら」

「まぁ、初心者じゃないなら必要ないと思うが一応忠告はさせてもらうと、そういう行為はしない方がいいぞ」

決して否定をしてこないプレイヤー。だが、こんな場所でそんな絡み方をしてくる時点で初心者なのは疑いないのだ。だが、そのことを彼らが認めるとは思えない。そのため、彼らが初心者かどうかは置いといて一応忠告をだけはしておく。ここで忠告をしなかったから俺まで対象にされては困るからだ。

「あん?もしかして何処かからヒーローでも現れるっていうのかあぁ?」

「まぁ間違いではないかな。正解は神様だな」

プレイヤーは冗談でそんなことを言ってくる。だが、その言葉自体はある意味間違いではないため俺は否定することはできなかった。あれはこの世界のルールという絶対正義を抵抗することなどできない方法で行使してくるのだから。

「ぷっ、あはははははは」

「ばっかじゃねぇの。そんなやついるわけないだろうが」

しかし、それを俺の苦し紛れの言葉とでもとらえたのだろう、おびえることもなくプレイヤーたちはさらに増長してしまったようだ。

「やっぱりお前ら初心者じゃねぇか」

そんな彼らの様子に呆れた俺はため息をついた。やっぱり時間の無駄にしかならなかったようだ。

「俺らが何もしないからっていい気になってんじゃねぇよ!!」

沸点の限界がきたのだろうかプレイヤーたちは腰に手を回し始めた。

それを見た俺らは彼らに冷酷な声音で告げる。

「お前ら、今武器に手をかけたな」

「お、おう......」

「だったら、なんだっていうんだよ」

急に俺の様子が変わったことにさすがに当惑をしだした。

だが、今更そんなことになっても遅すぎるのだ。

「だったら」

俺は死刑の宣告をするように次の言葉を口にした。

「このゲームのマナー違反になってシステムに干渉されるぞ。ってもう聞こえてねぇか」

だが、俺の言葉が届く前にプレイヤーたちの姿は跡形もなく消えてしまっていた。

なんとも締まりの悪い終わり方だ。

「た、助けていただきありがとうございました」

しばらく呆然としたまま突っ立っていた少女だったが我に返るやいなやそのまま倒れこむんじゃないかという勢いで頭を下げ、お礼をいってきた。

「別に俺は何もしてねぇよ」

本当に俺は何もしていない。全ての処理はこのゲームのシステムが勝手にやってくれたのだから。

だが、それでもラズリは俺に対しての感謝を辞めることはなかった。

「それでも、怖くなかったのはあなたのおかげです、えっと......」

「?」

「あの、名前を聞いてもいいですか?」

言い淀んでいたラズリだったがしばらくすると誰何してきた。どうやら名前を考えていたらしい。ただ、ラズリの質問の意図が俺には読めなかった。ここはゲームの世界だ。名前なんて聞かなくてもわかるようになっている。

「?名前なら聞かなくても見えるだろ?」

「え、ほんとですか!?」

「あぁこの辺りに名前が浮かんでるだろ」

本当に気付いていないらしいラズリに俺は自分の右上辺りを指さして見せる。本人である俺には見えないがここにちゃんと名前があるはずだ。

「あ、ありました。えっとリースさん本当にありがとうございました」

「まぁ、次は精々気をつけろよな」

「は、はい」

そう言って踵を返し歩いていく俺に向かってラズリは頭を下げた。そして、そのままの状態をキープしている。俺が見えなくなるまでその状態でいるつもりなのだろうか。

そんなラズリの様子にため息をつき頭をかいた。

「はぁ、たくっ行くぞ」

「え、どこにですか?」

不思議そうに尋ねてくるラズリ。

「手伝って欲しいんだろ」

「は、はい!!」

俺が短くそう告げると嬉しそうに頷いてきた。

「ほら、行くぞ」

「あ、待ってくださいよー」

速足で歩いていく俺に、引き離れそうになりながらもラズリは必死に追いかけてくるのだった。



クリージャ草原。

比較的他のフィールドより敵の絶対数が少なく、出てくる敵も単調な攻撃しかしてこないこのフィールドはプレイヤースキルを鍛えようとする者たちが真っ先に駆け付けるその手の登竜門だ。

そしてそれと同時に倒すのが容易なことから初心者御用達のフィールドでもある。

そんな場所に俺とラズリは来ていた。目的は当然ラズリを鍛えるためだ。

初心者であるラズリに教えるならここ以上に適任なフィールドが見つからなかった俺はラズリを数十分前にここへと連れてきたのだ。

俺は近くにあった大き目の岩にもたれ掛かりながら敵と戦うラズリを見ていた。

「はぁぁぁっ!!」

単調な攻撃とはいえそれが連発されればされるほど当然のように避けるのは難しくなってくる。

だが、ラズリは危なげなく躱して隙ができるたびに自身の武器を使って攻撃を繰り出していた。

初心者でレベルも未熟なラズリだが、塵も積もればなんとやらだ確実にダメージを重ね、着実に敵を撃破していき経験値を稼いでいた。

最初は全ての攻撃を避けきれず体で受けまくっていたラズリだがさすがに半刻もたっているのだしっかりと避けることができるようになり、その上たまにカウンターで攻撃を仕掛けられるようにまで成長していた。

「か、勝ちました......」

と、丁度敵を倒しきったらしいラズリはよろめきながらもこちらへと歩いてくる。

「それじゃあしばらく休憩をとるか」

おれがそう提案すると崩れ落ちるように座り込んだ。

「そうさせてください」

「ほらよ」

そんな疲れ切った様に苦笑を浮かべながらもストレージからあるアイテムを取り出しラズリへと差し出した。

「わっとっと、何ですかこれ?」

それを受け取ったラズリは不思議そうに首を傾げた。

「いいから飲んでみろ」

「むっ、別に教えてくれてもいいじゃないですか」

そう愚痴を言いながらも素直に飲むラズリ。

「な、なんですかこれ!!めちゃくちゃ回復するじゃないですか!!」

そしてその効果が出た瞬間、叫びをあげた。

だが、俺のとってはそこまで驚くような代物ではないためどうしてもラズリが大げさに驚いているようにしか見えない。

「別にそこまで凄いものじゃないぞ。それは俺がいつも使っているポーションだよ」

「こんなものがあるんですか」

何気なくつぶやいたものの、ラズリはまだ感動しているようでまじまじと殻になった瓶を見つめていた。

「お前もその内自力でとれるようになるさ」

「なりますかね」

「あぁ、前までよりもましにはなったはずだ。このまま努力すれば可能だろう」

これはお世辞でもなんでもなく本心だ。本当に序盤は危なっかしくて見てられなかったのだから。

「その、ひとつ聞いていいですか?」

不意にラズリは尋ねてくる。

「ん?なんだ?」

「どうして私を手伝ってくれる気になったんですか?」

「あぁそんなことか」

「そんなことって、私にとってはかなり気になることなんですけど」

まぁ確かに、一度断られたはずなのに突然受け入れてくれたのだ。

受け入れられた本人としても不思議で仕方なかったのだろう。

「それもそうか。なんていうか知り合いに似ていたからかな」

「知り合いですか......どんなひとなんです?」

興味津々とばかりにラズリは聞いてくる。

この子はネットマナーというのをしらないのだろうか。そのことに不安を覚えてしまうものの聞きたくなるような答え方をしてしまったのは俺だということでその問いに答える。

「そうだな、お節介で図々しいやつだな」

「それって私がそうだって言いたいんですか!!」

「見知らぬ相手に教えを乞おうとしてた時点で図々しいのは間違いないと思うんだが?」

「ぐぬぬ」

ラズリは反論できなくあったためかただ悔しそうに唸っている。

だが俺からしてみれば本当にあれで図々しくないと思えていたことに驚きを隠せないのだが。

「そのうえ、わけわからないことで怒り出すし、頑固だし、人の言うことは聞きやしないし......」

「それはさすがに言い過ぎではないんですか」

「かもな。でも、こんなゲームばかりにのめり込んでるどうしようもない俺に愛想をつかさないでいてくれるそんな奴だよ」

そう別に俺は瑠璃のことを嫌っているわけではない。瑠璃とはなんだかんだで長い付き合いだ。瑠璃は本当に嫌がったことについては絶対に同じことを意図して繰り返したりはしない、そんな奴なのだ。さんざん文句ばっかり言ってはいるがそれはいわゆる照れ隠しというやつなのだから。

「リースさんはそのこの子のことそ、その好きなんですか?」

「......まぁな」

頬を搔きながら小さく俺はそう呟く。

「へぇそうなんですか。ふふ」

「笑うなよ」

「笑ってませんよ」

「笑ってるじゃねぇか。休憩が終わったら覚悟しろよ」

「ちょ、ちょっとそれは卑怯じゃないですか!?」

最後は騒々しくなりながらも話し続けた俺たちは時間いっぱいまでラズリに指導を施すのだった。

あ、もちろん練習はそれはもう厳しくやらせていただきましたとも。ラズリが泣き言を言い始めるレベルでな!!



翌日。

俺は昨日と同様に瑠璃にゲーム機を取り上げられていた。

昨日は補修の反動で夜遅くまでゲームをしてしまったため寝不足による疲れと重なり俺の機嫌は昨日よりも悪い状態だった。

「おい、何すんだよ!!」

そのため俺は瑠璃を怒気を混じった声で非難するように叫んだ。

しかし、瑠璃は呆れた様子のまま事も無げに言ってくる。

その様は歴戦の母親のような貫録を醸し出している。

「そんなことばっかりしてないでさっさと準備しなさい学校に遅れるわよ」

「うるさいな、俺の勝手だろ」

そうなると、さながら俺は反抗期真っ最中の少年だろうか。そんなことを彷彿とさせる言葉で瑠璃の提案を突っぱねた。

「それだと私が困るのよ」

「なんでだよ」

「私も一緒に行くんだから当然でしょ!!」

「なら一人で行けばいいでだろうが」

「むっ、そんなこと言うんだ」

「な、なんだよ......」

この流れはまずい。非常にまずい。

最近、具体的には昨日ぐらいにこの会話のやり取りをやった記憶がある。

ならばこの後は瑠璃が起こってしまうことになるのだろうか。そうなれば俺は今日も又放課後に残らされることになりかねない。ここは早急に謝罪をするべきだろう。

そう考えて跳躍体制に入ろうとするもそれは不発で終わった。

なぜかと言われたらそれは瑠璃の言い残した言葉が原因だ。

「ふふふ、外で待っといてあげるからさっさと用意してよね」

「なんなんだよ、一体......」

そう言って笑って去っていく瑠璃を見ながら呆然とした気持ちで俺はそんなことをつぶやいていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王道を押さえていて、短時間で読めるようにまとまっているので、読了後の後味の良さが魅力だと感じました。 特に、ラストの二人の関係が、一歩進んでいるような進んでいないような微妙なラインであるの…
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