第一話 青天の霹靂
初めてこういうものを書くので、至らぬ点が多々あると思います。
酒臭い。だが、それがこの場所の良いところだ。この町でこうやって酒場が経営されているのは、片手で数えられる程度。まるで、1920年から施行された禁酒法だ。しかし、それから何十年もたっている。ファミリーもいない。なのに、なぜ、こそこそと酒を飲まねなばならないのか。
その答えは、数か月にも前に遡る。
8か月、いや9か月前だろうか、東側の隣国が我が国に攻めてきた。我が国はあっけなく降伏し、俺たちの町は占領された、東側の隣国―いや、"占領国"とでも呼ぶべきかも知れない―に。
数日後、あいつら―占領国軍―はこんなことを言い出した。
「娯楽は禁止だ。酒、煙草、その他諸々。見つけた場合、即刻に処罰を下す。数か月後に何人減っているか楽しみだ。以上。」
(あの薄ら笑い、思い出すだけで反吐が出そうだ。)
こんなことを言われたら、酒もたばこも毎日な俺には、激怒のあまり、いや、怖くて、すくんでた。
そして、地獄の数日間を過ごしていた俺。もう嫌だ、と大声で嘆きたくなった時、優しそうな希望のある目を持った男が来た。
「現状にあなたは満足していないでしょう。レジスタンス活動に興味はありますか。」
まるで、母親のように優しく、諭すようにあの男(20代後半のように見える)は話しかけてきた。
「満足するわけないじゃないか、あなたもそうでしょう。」
「もちろんです。それで、」
「レジなんたらとかいうのはいったいなんだ。」
少し食い気味になって言ってしまった。
「レジスタンス活動です。占領軍に対して抵抗するんです。」
「抵抗って。武器を持つつもりは、ないというか、こわいというか。」
「大丈夫、安心してください。私たちの武器は銃ではありません。隠れて反抗的な活動をすることが私たちの武器です。あなたも私たちとレジスタンス活動を、私たちレジスタンスの仲間になりませんか。」
「えぇ、あ、えーと」
「お酒も飲めますよ。」
男はそっと言った。
「ぜひ、ぜひお願いします。」
気が付いたら言っていた。
かくして私は、この酒場にやつら―占領国軍―の目を盗んで入り浸っている。ああ、最高の日々だ。あの、地獄の数日間と比べれば月とすっぽん。いや、太陽と石ぐらいの差だ。
この数か月間、平和で最高だった。しかし、青天の霹靂が、ある男の噂で、起こってしまった。
「信頼性の高い情報筋から聞いた話なんだが、レジスタンス掃討作戦なるものが計画されているらしい。」
第一話 完
読んでいただきありがとうございます。今後とも掲載していきたいと思います。