呼び出しⅡ
コンコン、ガチャ
「失礼するぜ。急襲部隊4名、作戦失敗の報告に来t_______」
ヌイと双子を連れ、会議室の扉を開けた師匠は思わず言葉を失った
((おいおい、聞いていた話と違うじゃねぇか・・・!!))
張り詰めた空気が流れる薄暗い会議室の長机には、部長とキサキ、秘書ちゃんだけでなく、十数名で構成される研究会の幹部全メンバー達も座っている。それだけではない、普段はまず会うことはない他県の支部長クラスの顔もちらほら伺える、錚々たる面子だ。これはいつもの事後報告じゃないと、冷や汗を流しながら悟る師匠。後ろに立っているヌイは完全にフリーズしてしまっており、さすがの双子も揃って緊張した様子だ。
「おー、待ってたよー!それじゃ、報告を聞こうか!」
にっこりと満面の笑みを浮かべながら、いつもの明るい口調で話す部長。
「・・・て、定時連絡で報告した通り、昨晩の捕獲作戦は失敗した。原因は、カラオケ店にいた想定外の野良霊による妨害が大きい・・・。『極霊力』によって揃って強化されちまって、新たに2体の上級霊の誕生が確認できた。さすがの掃除係でも分が悪い。」
「一度に・・・2体も・・・!?____素晴らしいわ!!」
歓喜の声を上げるキサキ。同時に会議室内も、信じられないといった驚愕の声でざわつきはじめる
「そ、それで・・・俺たちにはどういった処分を・・・?」
かなりの叱責を受ける覚悟だった師匠は、恐る恐る部長とキサキに尋ねる
「処分?そんなのあるわけないじゃない。ふふ・・・今回の作戦ね、あなた達には知らせてなかったけど、『捕獲』ではなく、ターゲットを『成長』させることが目的だったのよ?」
捕獲ではなく、成長させることが目的・・・?いったいどういうことだ?
困惑する師匠に、さらに部長が話を続ける
「さすがに掃除係の双子ちゃんが、『傷つけずに捕獲する』なんて芸当、はじめからこっちも出来ると思ってないよー!wターゲットの『極霊力』にはまだまだ不確定要素も多かったからね、そのデータが欲しかったんだけど、上級霊が2体も、か・・・。こっちの予想を上回る成長スピードだねー、どう思う?キサキ。」
「えぇ、恐らく彼はまだまだ成長するはずよ・・・今日集まってくれた研究会の幹部たちには、改めて『極霊力』保持者の秘める力について知ってほしかったの。我が研究会の『目的』の為にもね・・・!」
(「まさか、ここまでとは。」「奴が研究会の物になれば・・・」「上級霊の量産も可能に・・・!」)
顔を見合わせ、お互いに何かを呟き合う幹部たち
「みなさん、お静かに_____今後、極霊力を持つ『彼』には私が直々に働きかけることにする。各自、勝手に手出ししないように、お願いね?」
「・・・・!!」
にこりと微笑むキサキ。彼女の命令は絶対だ、抜け駆けして力を手に入れようと目論んでいた幹部たちが一斉に黙り込んだ。この場で絶対的な霊力を誇る彼女には、誰も逆らえない。
「ほい、それじゃあ師匠くん達はもういいよ、座ってー。ご苦労様でした!今日のもう一つの議題は、前の幹部会でも報告あったんだけど、例の暴れまわってる野良霊のことねー・・・秘書ちゃん、こっちの被害状況教えてくれる?」
はい、とスーツを着た秘書ちゃんが、たくさんの資料を抱えながら席を立つ
「えー、強力な上級霊ということもあり、以前からこちらもかなりの人員を割いて捜索、捕獲を試みておりますが、ことごとく返り討ちに合っています・・・下、中級霊使いの戦闘員十数名及び、幹部2名も音信不通です。」
「うーん・・・思ったより自体は深刻だよねぇー・・・。このまま放置しておくってことも出来るけど、なかなかお目にかかれない強力な上級霊だ。我が研究会以外の勢力に取られでもしたら、こっちの面目は丸潰れ_____ってことで、今日集まってもらった支部長たちも含め、『幹部総出』で捕獲にあたって欲しい!!」
パソコンを操作し、プロジェクターに画像を映し出す部長
「ターゲットはこいつ、うちの霊写できる部員が顔写真を撮影することに成功した。捕獲に成功したものには報酬も弾むぞー?各自、早い者勝ちだっ!!以上、解散!」
「「「「了解!!!」」」」
一斉に立ち上がり、解散する幹部たち
「ふー、何とか怒られずに終わったな。お前ら双子もお咎め無くて良かったなー・・・ってもうあいつら帰ったのかよ。ん?どうしたヌイ?」
会議が終わって安心しているのかと思いきや、ヌイは目をぎらつかせながらプロジェクターに映し出された野良霊の画像を睨んでいる
「あの『酔っ払い霊』、今度は絶対ヌイの手でぶっ飛ばしてやる!!借りは絶対返すっ!」
「あぁ、そういや今回の野良霊お前直接戦って負けたんだったな。アレは次元が違う、お前にゃ無理だよ。他の幹部共に任せとけって。」
「むぅー・・・師匠、ヌイのこと舐めてる!!絶対今度は勝つもん!」
___________こうして、かつてない規模の戦力での『怨霊さん狩り』が始まろうとしていたのだった。




