主従の関係Ⅱ
「あんた、それでも本当に霊使いなの!?ライバルとして見ていたのが恥ずかしいよ!」
口を開けば『決闘!!』しか言わなかったハルカだが、今日はいつになく怒っているのが電話越しでもひしひしと伝わってくる
「い、いきなり何なんだよハルカ!!俺だってどうにかしないといけないのは分かってるけど、お前らみたいに霊について詳しいわけじゃないし、霊力のことだって分からないことだらけで・・・」
「あー!もう!いい?私たち霊使いにとって、いろんな知識も大事かもしんないけど、一番重要なのは・・・『情熱』!!!」
「・・・・はい?じょ、情熱?えっとー、ハルカさん?こっちはマジでヤバい状況なんだよ。いつもみたく馬鹿言ってる場合じゃ・・・」
「うちのハルカは説明するのが苦手なの。でもハルカが言ってることも、あながち間違いじゃないの。」
今度はふーちゃんが、ハルカに変わり再び話し出す。どうやら、ハンズフリーモードにしたようだ。
「霊使いと、その持ち霊である私たち霊はとても深い『主従の関係』で結ばれているの。その辺の野良霊とちょっと知り合った程度とは、比べ物にならないほどの深い関係なの。」
「他の霊から操られてるか何だか知らないけど、持ち霊が暴れているのは君の『主人』としての力量が足りてないってこと!!主人がしっかりしてれば、持ち霊の主導権を取られるなんてことないんだから!いい?分かった!?あ、ふーちゃん!?まだ話は終わって______」
「そういうことなの。武運を祈ってるの。でわ、おやすみなの。」
ツー、ツー、ツー
どうやらふーちゃんの眠気が限界を迎えたようだ。ハルカが話している途中だが強制的に電話が切れてしまった
「情熱・・・か。そんなの、あるわけねぇだろ。」
脱衣所の扉を開け、未だ戦闘音が鳴りやまない露天風呂へと再び足を踏み入れる。
「ハァ・・・ハァ・・・悪霊、そ、そろそろ降参しなさい・・よ。」
「くっ・・・ゆ、幽霊さんこそもうボロボロじゃないですか。ご主人さまと混浴するのは諦めるのです。」
2人の戦闘によって先ほどより更に荒れた露天風呂のなかで、睨み合う幽霊と悪霊。その姿は二人とも明らかに疲弊しており、心なしかうっすらと体が透けているように見える。
『何とかしないと、いずれあなたからの力に霊体が耐えきれず、彼女たちは消滅してしまうかもなの。』
どうやら、このままではふーちゃんの言っていた通りになってしまいそうだ。
「おい!幽霊、悪霊!こっちだ!!」
真っすぐに二人を見つめ大声で呼ぶ
「あ!ご、ご主人さま!!好きーーーー!!大好きなのですーーーーーー!!」
「ちょ、ちょっと!わたしが先にぎゅってしてもらうのぉ!!」
俺の声が聞こえるや否や、つい今まで激しい戦闘をしていたことも忘れ一目散に飛んでくる幽霊と悪霊。発言もやばいが、目も完全にハートだ。明らかに先ほどよりさらに異常に発情している
「ハルカとふーちゃんに色々言われたが・・・確かに俺には霊使いとしての器量はないし、主人としての覚悟も足りねぇのかもしれん。正直、お前ら2人の保護者するのもめんどくさい・・・だが、」
「なんだかんだ言いながらも、呪いにかかった俺を心配してついてきてくれた同居人を黙って見捨てるほど俺は腐ってねぇぞ・・・!!いいか、よーく聞けよ。」
スーッと思いっきり息を吸い込み、一気に吐き出す
「「「________俺が!!!!『主人』だ!!!目を覚ましやがれ!!!!」」」




