憑依と形勢逆転
ギギギ・・・・
「妹・・・?あなた一体___?」
重なり合った姉妹のチェーンソーの刃が、火花を出しながら擦れ合う
姉は、妹の身に起こった状況を未だ判断できていない様子だ。目の前にいるのは、紛れもなく先ほどまでぴったり息の合った連携で、ともに戦ってきた妹の姿であるのは間違いない。だが、その『目つき』『口調』、そして今ままでともに生活してきた姉だからこそ分かる、妹が纏う『雰囲気』。その全てが、姉である自分が知っているものと違うのだ。
「ふふふ・・・驚いているようですね!!だがもう遅いのです。頂いたこの体で、やっつけてやるのです!!!」
ギュィィィィン!!!!
「_____っ!!!」
再びチェーンソーの刃を回して、姉に斬りかかる妹(in悪霊)。俺とアリサから姉を遠ざけることに成功した。
「悪霊・・・だよな?さっきから静かだから逃げたのかと思ったが・・・。お前いつからそんなこと出来るようになったんだ?」
「ご主人さまを置いて逃げるなんてしませんよ!!いやー、それが悪霊もわかってないのです。ここの住人たちが次々に斬られてるのを見て、何とかしなきゃって思って双子の方を睨んだら、いつの間にかこの体を乗っ取ってました!!・・・謎なのです。」
悪霊は今まで、俺以外の他人にも憑りつくことは出来た。しかし、こんな風に体の主導権を握るなんて芸当は出来なかったはずだが____まさか、今頃になって俺の能力が発動して、悪霊の霊力が覚醒したのか?
とにかく、絶体絶命の危機からは脱した。姉が混乱している間に、こいつらを連れて逃げないと。
「よく分からんが、とにかく助かった!!アリサ、悪霊、早くにげよう!!」
未だよく状況を理解していないアリサを抱えた、その時。叫び声が廊下に響き渡る
「妹を・・・返してっ!!!____狂戦士電刃モードっ!!!」
ズズズズズ_______
姉の叫び声とともに、彼女の持つチェーンソーからこの世のもとは思えないほどの禍々しいオーラがあふれ出す
先ほどまでの、無表情で淡々と霊たちを斬っていた時とは違い、怒りを露わにしている
「どうやら、そう簡単には逃がしてもらえそうにないな・・・悪霊、戦えそうか?」」
「お任せください!!この最強のチェーンソーと体を手に入れた悪霊にかかれば、瞬殺してやりま_______ぬわ!!??」
ガキィィィィン!!!!
一瞬にして距離を詰めてきた姉の一撃を、奇跡的に妹(in悪霊)が弾く。
「こ、このぉ・・・・私だって!!」
「返せ!!返せ!!返せぇぇ!!!」
必死に反撃を試みる妹(in悪霊)であったが、姉との動きの差は明らかだ。押し返すどころか、防戦一方を強いられ、みるみるうちに追い詰められる。それに、狂戦士電刃モードとやらになってから、チェーンソーの刃が一回り大きくなったように見える。それだけじゃない。姉の動きもどこか、体のリミットが外れたような動きだ。
「ご、ご主人さま!!ハァハァ・・・このままでは、やられちゃいそうなのです!!!」
「なんとか持ちこたえてくれ!!今、お前にもっと霊力送るように念じてるんだが、何も起こらねぇ!!これ以上霊力の底上げは望めないのか・・・?いや待てよ、悪霊が覚醒したってことは____ん?」
『アリサも』と言おうとしたとき、ある違和感にきづく。後ろにいたアリサがいない。それについさっきまで、廊下に倒れていた大勢の姉に斬られたここの住人たちの姿も見当たらない。まさかもう完全に消滅してしまったのか?いや、どの霊たちも戦闘不能ではあったが、斬られた部分からゆっくりと消滅していた。完全に消滅するにはまだ猶予があるはずだが_____
「みんな!!今や!!!」
「!?」
どこからともなく聞こえるアリサの掛け声。それとともに、姉の足元から無数の手が現れ足を掴む。
そしてバランスを崩し倒れた姉の背後から、またもや無数の腕が現れ、一気に取り押さえる。
「は、離せぇぇ!!」
「ぐへへ・・・形勢逆転だなお嬢ちゃん。今度こそ教育してやるぜ。」
そこには、さっきまで消えかけだった、痴漢おじさんの姿が。彼だけではない、斬られて戦闘不能だった霊たちが、みんなピンピンしている。
姉を見事取り押さえたのは、斬られて消滅するのを待つだけだったはずのここの住人だった。




