邪魔
ギュイイイン____!!!!ザンッ___
「ぎゃあああああああああああ!!!!!う、腕がぁぁあ!!!」
「お、おじさーーん!!!!」
自信満々の表情で『教育してやるぜ』などと言いながら双子に立ち向かっていった痴漢おじさんであったが、予想通り瞬殺されてしまった。当然だ、低級霊の中でも更に低いレベルが大多数を占めるここの住人では、不意打ちは出来ても、正面からでは成す術もなくやられてしまう。
痴漢おじさんは、双子の姉が持つチェーンソーの刃で両腕を切断され、床に倒れこんでいる。霊体なので血は出ていないが、双子が言っていた通り斬られた腕は跡形もなく消滅してしまった。
「ち、ちくしょう・・・俺の神の腕が・・・。」
「だから言ったろ!!おじさんじゃあ相手にならないって!っていうか、明らかに双子の胸を触りにいってたよな?この期に及んで何やってんだよ全く!腕斬られて当たり前だよ!!」
「グヘヘ・・行けると思ったんだけどな・・・アリサ・・・おじさん、そろそろ逝くぜ。絶対、逃げきれ・・・よ・・・」
スゥゥゥ____
「おじさぁぁん!!!消えちゃだめだよッ!ねぇ、おじさん!!」
アリサが涙を浮かべながら叫ぶが、おじさんはとうとう動かなくなり、ゆっくりと斬られた腕の方から体が消えていく
「___楽にしてあげる。」
「おじさんをこれ以上傷つけちゃダメッ!!」
更に追撃を加えようとする双子の姉の前に、おじさんを庇うようにして両手を広げるアリサ。目に涙を浮かべ、足は震えているが、おじさんから離れない。
「アリサちゃん、ここは私たちに任せて逃げなさい。まったく、この痴漢オヤジは。先走るなんて、馬鹿なんだから・・・」
男嫌いのねーちゃんが、倒れているおじさんに語り掛けながら、周りの仲間と共にゆっくりと前に出る。
「み、みんな!だめだよ!斬られちゃうよ!?」
「そうだお前ら!いいから逃げろ!消されてしまうぞ!!」
おじさんを守ろうとするアリサの前に、カラオケ店の霊たちが並ぶ
いくら数でこちらが圧倒的に有利でも、あのチェーンソーの前ではそれも無意味。このままでは、全滅だ。
「全員まとめて、お掃除してあげる_____」
「うおおおおおおおおおおおおおッ!!!」
ブォォォンッ!!!ギュイイイン____!!!!
霊たちは正面からの特攻で挑むも、容赦のない姉のチェーンソーの刃によって、次々に斬られていく。霊体なので痛みは無いだろうが、斬られた住人たちは皆悔しそうな表情を浮かべながら、1人、また1人と倒れていく。
「あとは、あなた達だけ。」
一瞬にして十数体の霊を薙ぎ払い、アリサにチェーンソーの刃を振り下ろす姉。
くそ、足がすくんで何も出来ない。何とかこいつだけでも助けないと・・・!だが、問題は姉の背後にいる妹。彼女の刃に斬られれば、生きている人間である俺は死んでしまう。このことが頭にちらつき、一歩が踏み出せない。
「アリサ!!下がれ!!早く逃げろ!!」
やっとのことで駆け寄り、アリサの腕を引き寄せて何とか刃を躱そうとするも、すでに躱せる距離ではない。更に、俺が近寄るのを待っていたかのように、背後の妹の方も俺に向かって攻撃してくるのが見える。
絶体絶命_______
ガキィィンッ!!!!
「_____妹、何で邪魔するの?」
ん?邪魔する?妹が?一体何のことだ?
完全に終わった、そう思って固くつむった目をゆっくりと開ける。そこには姉の言葉通り、俺たちに振り下ろしたチェーンソーの刃を、自らが持つチェーンソーの刃で止める、妹の姿が。
「・・・・ね、姉さ・・・ま、、ごめん、な、さ・・・」
途切れ途切れに言葉を発する妹。様子がおかしい。まるで、自分の意志に反して体が動いているようだ
「の・・・乗っ取られ、た_____ふふ・・・ふふふ・・・やりましたのですご主人さま!こいつの体、頂いたのです!!」
「その口調・・・悪霊、か・・・?お前いつの間に!?っていうか、どうやって!?」




