仲間たち
「ジグ・・・?なにそれ怖い。そ、それ、霊専用武器だよね?生きてる人間斬るやつじゃないよ・・ね?」
駄目元で双子に聞いてみるが、恐らくそんな甘いことはないだろう。モード切替ってことは、普通に考えて対霊⇔対人間ってことだ。ということは、先ほどのように斬られたら今度こそ致命傷では済まなくなる・・・?
「呪殺電刃モード。妹の刃はね、」「斬った人を呪い殺す。ただそれだけ。」
「この刃に斬られたら、」「3日以内に死ぬ。」
双子が淡々と説明してくれる。
良かった、グチャグチャにならずに済むのか。いや、死ぬことには変わりないが。狂暴な武器の割に、『呪殺』とは随分といやらしい効果だな。
「お、落ち着けって。お前らどうせ研究会からの刺客だろ?俺たちのこと捕まえに来たんじゃないのか?殺したらダメだろ!!?」
「そ、そうなのです!こんなのでも悪霊の大切なご主人さまなのです!」
「え、ちょっと待って。この子ら、兄ちゃんの知り合いなん?うち関係あらへんやん。それじゃ、後はごゆっくりー。うちは大人しく部屋に帰らせてもらうわー・・・ひゃんッ!!」
そそくさと立ち去ろうとするアリサを、双子がチェーンソーの刃を向けて制止する
「関係ない。この男の知り合いは、」「殲滅する。」
「こっちは対霊用の殲滅電刃モード。」「姉さまの刃に触れれば、霊は一瞬で消滅する。」
「死んで、」「詫びなさい。」
ギュィィィィン!!!!
もうお前らと話すことはない、とばかりに一通りの説明を終えると、一斉に双子が襲い掛かってくる。
姉の方は、悪霊とアリサの方へ。そして妹は俺へと目がけて一直線に。背後には壁がある。この距離では避けることは不可能だろう。直撃は免れない。
「くそ、一か八かだ!!悪霊!アリサ!俺の手を握れ!!」
絶体絶命の状況。これを生かして、俺の能力でなんとか二人の霊力の覚醒と底上げに頼るしか道はない。
2人の手を思いっきり握り、力を送るイメージで念じてみる。
「ご、ご主人さま何を!?」
「君なにしてん!?この状況で!?頭おかしなってしもたんか!?」
2人に幽霊の時のような変化が現れる様子はない。やはりそう都合よく操れるような能力じゃないのか。
「何か企んでるようだけど、」 「もう遅い。」
ギュィィィィン!!!!
双子のチェーンソーが目の前まで迫っている。諦めかけた、その時______
「「「うちのアリサちゃんに、何しとんじゃゴラァァァあああ!!!!」」」
叫び声と共に、無数の影が俺たちの前に現れ双子を押し倒した。その隙に、何とか俺たちは双子と入れ替わる形で袋小路から脱出し、九死に一生を得る
「なッ____!?」「姉さま!!一体何が_____??」
困惑する双子の前に立ちふさがるようにして現れた無数の影が口を開く
「大丈夫ぅ?アリサちゃん?」
「グヘヘ・・・おじさんたちが来たからもう安心だよ。」
「・・・13番室の男嫌いねーちゃんに、24番室の痴漢おじさん!?それに他の部屋のみんなも・・・まさか、うちのために来てくれたん!?」
俺たちの危機を救ったのは、このカラオケ店の住人である霊たちだった。アリサは信じられないといった様子だ。その数は20体は超えるだろうか。アリサに紹介されたときはとてもじゃないが、まともとは言えない霊たちだったが、まさか助けられることになるとは
「うちのアリサちゃんに手を出すなんて、いい度胸してるわねー・・・。可愛らしい子たちだけど、お仕置きが必要なようねぇ。」
男嫌いねーちゃんが怖い顔をしながらつぶやく。そーだ、そーだ!俺たちのアイドルに手を出すな!と、他の霊たちも口々に叫びだした。どうやら、アリサは彼女自身が気付かないうちに、ここの住人たちの精神的支柱にもなっていたようだ。
「_____殲滅される、」「覚悟は出来てる?」
双子は、ゆっくりと立ち上がると刃を霊たちに向ける
まずい、おそらく低級霊じゃ相手にならない。
「お前ら!!いいから逃げるぞ!!その双子はヤバいって!!」
「・・・グヘヘ。ここは俺に任せな。このお嬢ちゃんたちにたっぷりと教育してやるぜ~・・・。」
痴漢のおっさんが自信満々といった様子で一歩前に出る




