双子の掃除係Ⅰ
「ちょ、ちょっと待て・・・!!話せば分かる。まずはその物騒なもの下してくれ・・!!」
デゥルルル・・・・ブォォォンッ!!!
こちらの呼び掛けには全く応じる気配は見せず、チェーンソーを唸らせながらゆっくりと近付いてくる2人の少女。何なんだこいつら、とは言っても頭の片隅では大方の予想はついていた。直前、俺の方を向いて『見つけた』と言った。恐らく、ヌイと師匠以来2回目となる例の研究会からの刺客だろう。・・・しかし、まさかチェーンソーを武装してくるとは。もうこれ、警察に通報した方がいいんじゃないか?
チラリと店員のにーちゃんを伺うと、どうやら同じことを考えてたらしく、気づかれないようにゆっくりとカウンターの電話機を操作している。
「掃除、」「はじめる。」
突如、2人組の少女の片方が一気に距離を詰めてくる。あんなに大型のチェーンソーを持ちながら、ありえない俊敏性。成人男性でもあんな動きは無理だろう。
「___っ!!っぶねぇ!!」
チェーンソーの刃が首ギリギリのところをかすめる
「ハァ、ハァ・・マジで殺しに来てるじゃねぇか!!冗談じゃな___うぉぉっ!?」
ギュィィィィン!!!!
間髪入れずに、今度は連携した動きで攻撃を仕掛けてくる。二人はジグザグに交錯しながら距離を詰め、交互に刃を振りかざしてくる。
必死に逃げ回るが、この受付前の空間は広くはない。徐々に足がもたつき始め、とうとう壁際まで追い込まれる。
「ちょ、ちょいタイム!!!トイレに行きたくなっ____」
苦し紛れの時間稼ぎには見向きもされず、一気にチェーンソーの刃を振り下ろしてくる。
ギュィィィィン!!!!
「うわわぁぁぁぁぁぁあ!!!痛いぃぃぃ!!!!死ぬぅぅぅぅっ!!!・・・・・あれ?」
ゆっくりと目を開ける。たしかにあの角度からだと刃は避けられない。必ず俺の体を切り刻んだはず。
なのに、体に傷跡はないどころか、一滴の血も流れていない。目の前には、依然と立ちふさがる2人の少女。
カウンターから店員が声を掛けてくる
「お客さん・・!!大丈夫ですかっ!?いま、完全に切られたように見えましたけど・・・!?」
「だ、だよな・・・?なんで俺生きてるんだ?」
2人の少女が、『あっ』と思い出したように口を開く
「忘れてた、姉さま。こいつ、人間。霊じゃないわ。」「忘れてた、妹。お掃除するのは霊だったわね。」
「・・・??」
姉さま、妹って呼び合ってるってことはこの2人は姉妹なのか。見た目がそっくりだから双子なのかもしれない。って今はそんな情報はどうでもいい。双子の口調から考えると、俺が人間だったから切られなかった・・・?意味が分からない。それに、掃除?
双子はきょっろきょろと周りを見渡すと、今度はカラオケルームが続く廊下の方へと走っていった。
嫌な予感がする。そちらには悪霊とアリサがいる部屋があるからだ。
「ちょ、ちょっと待てよ!あ、店員さん!警察とは連絡とれましたか!?」
「それが、なぜか繋がらなくて・・・俺の携帯もダメでした。圏外になってます・・!!」
一応、自分の携帯も確認してみるがやはりこっちも圏外になっている。
「店員さんは外に出て誰か呼んできてください!俺はあいつらを追います。」
「は、はいっ!!」




