招かれざる客
その後も、アリサに連れられて数人の霊を紹介されたが、どいつもこいつも揃いもそろって頭のネジが飛んでる系の霊だった。
「はぁー、疲れたのですご主人さまぁ~。」
「ここの霊はもれなく全員癖のある奴らだったからな。おいアリサ、ちょっと休憩しようぜ。」
「しゃーないなぁー。ほんとはもっと紹介する霊はおるんやけど今日のところはこの辺にしといたるわ。うちの部屋に戻るでー。」
本当に色んな霊がいた。部屋に入るや否や号泣しながら抱き着いてくる情緒不安定の女の霊。借金を背負い過ぎて自殺し、永遠とその当時の暗い話を聞かせてくるサラリーマン風の男の霊。
カラオケ店に住む霊たちと話をしているうちにあることに気付く。どの霊も、生きているときの暗い過去を引きずってたり、生前の強い欲望が霊となってからも、主にそれに捉われた行動しかしない。アリサや、俺の知っている今まで出会った霊とは違い、生きている人間と同じように会話が出来る霊は珍しいのかもしれない。これが『低級霊』とそうでない霊の違いなのか。帰ったらふーちゃんにでも聞いてみよう。
「眠くなってきたな・・・ってまだ2時かよ。上限まであと3時間もあるのか。アリサー、まじでもう帰っていいですか?」
「ふにゃふにゃ・・・。」
悪霊はもうスイッチが切れかけで、俺にもたれかかる形でうとうとしている
「えぇー。もう帰ってしまうん?あ!そうや、うちの昔話してへんかったな。聞きたいやろ?なんで死んでからもこんなとこに地縛ってるかとか。」
「勝手に話し進めるなよ・・・あ、重いのはやめてくれよ?反応に困るから。」
「重くないって!!えっとなぁ、どこから話せばえんやろ。うちが高校生の頃___」
「あ、ちょっと待って、ドリンクバー行ってくる。」
長くなりそうなので、トイレ休憩も兼ねて席を立つ。
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カウンター横にあるドリンクバーで、飲み物をコップに注ぐ。このままこっそり帰ってもバレなさそうだが、眠気でもはや帰る気さえ起きない。アリサの昔話は絶対寝てしまうだろうな、と考えていた時。背後のカウンターから誰かが入店する音と、店員の声が聞こえる。
「いらっしゃいま____ちょ、お。お客さんっ!?」
突如聞こえる、店員の慌てた声。とっさに振り替えると、そこには非現実的な光景が広がっていた。
まず目に映ったのは、お揃いの黒いパーカーを着てフードをすっぽり被っている華奢な女の子が二人。
ここまでは至って普通の光景。問題はその二人の少女がそれぞれ、手に持っているもの。およそ少女が持つには不釣り合いな、『チェーンソー』だ。それも見たところかなりの大型の。
「・・・お、お客様!!当店では店内への危険物の持ち込みは禁止しておりまして・・・!!」
店員のにーちゃんは明らかにテンパってる。無理もない。っていうか俺も完全にドリンクバーのコップ持ったままフリーズしちゃってるし。
2人の少女は、店員の静止を軽くスルーすると、ゆっくりとこちらに視線を移した
「見つけた。」「見つけた。」
「えっ、お、俺??」
ブォォォンッ!!ブォォォンッ!!ブォォォンッ!!
二人同時にチェーンソーのチョークを引き、エンジンを掛けはじめる
「ちょいちょいちょい・・・まじかよ・・・!?」




