カラオケ店の愉快な仲間たちⅡ
「次はー・・・、24番室やな。ここの人はヤバいで~。悪霊ちゃん、気ぃ付けやー。」
「気を付ける?何にですか?」
13番室のヤンデレ姉さんの次に案内されたのは24番室。アリサに言われるまでもなく、既に臨戦態勢の俺と悪霊だったが、なぜ悪霊だけに忠告したんだ?
その答えはすぐにわかる。
ガチャ
「おーい、おっさーん。お客さん連れてきたで~」
先ほどの13番室とは違って、入った瞬間空気が重いのを感じるということはないが、部屋が真っ暗で何も見えない。普通は点いてるはずのディスプレイの電源も落ちている。扉を閉めると、廊下の明かりも遮断され、本格的に真っ暗闇と化す。
「ちょっとアリサ!何も見えないじゃないですか。全くもう・・・電気のスイッチは~・・・」
悪霊が壁伝いに、手探りで動く気配がする。次の瞬間____
「ひゃんっ・・・!!!ちょ、ちょっと!!誰ですかッ!?私のお尻触ったの!!まさかご主人さまですか!?」
「は、はぁ!?俺じゃねぇーぞ。おいアリサ、どーせこの部屋の霊の仕業だろ!さっさと明かり付けろよ!」
「分かった、分かったって。やから気を付けろ言うたのにwおっちゃん、明かり付けてやー。」
急に部屋の明かりが点き、目が慣れるのに時間が掛かる。ぼやける視界に現れたのは、小汚い小太りのおっさん。こいつが犯人か。
「ぐへへ・・・アリサちゃーん、今日は可愛いお友達連れてきてくれてありがとうねぇー。ぐへへ・・・悪霊ちゃん?だっけ。よろしくねぇー。いやぁ~、かわいいねぇ~。」
「ひぃぃッ!!キモいのです!キモいのです!!助けてくださいご主人さま!!」
半泣きで俺の後ろに隠れる悪霊
「ぐへへ・・・逃げないでもいいじゃ・・・ぐへぇッ!!痛ぇッ!!」
なおも近寄ってくるセクハラおやじの腹部を思いっきり蹴り上げてやる。居候でタダ飯食らいだが、こんなのでも今では我が家の一員だ。流石に見過ごす訳にはいかない。
「おい、おっさん。その辺にしとけよ。こっちはアリサに深夜までつき合わされてイライラしてんだよ。」
「い・・・いててて。何だにーちゃん、霊力持ちかよ!くっそぉ~、いつもの一般人かと思って油断したぜ。痛みを感じるなんて死んでからいつぶりだ?うぅ・・・腹が・・・。こんな弱小低級霊いじめて楽しいか・・・?」
どうやら、低級霊の中でもこのおっさんのようにかなり弱い奴には、俺の打撃も有効なようだ。
「このおっさんはな、死ぬ前は痴漢の常習犯やったんや。ほんでな、ある日痴漢した相手の女が、実は凶悪な霊やって、返り討ちにされてそのまま呪い殺されたんやって。おもろいやろ!?w」
「ぐ・・・ぐへへ。俺は痴漢に命を懸けてるんだぜ。」
生きてる人間では飽き足らず、霊にまで痴漢するとは。そして挙句の果てには呪い殺されるという。まさに前代未聞の霊だ。ある意味、すごいおっさんなのかもしれない。クズだけど。
「悪い悪い、ちょっと強く蹴りすぎた。まさかそこまでダメージ負うとは思わなかったわ。まぁ、うちの悪霊を触った代償だな。次やったらもっと強いやつ呼ぶぞ?」
もっと強い奴というのは、怨霊さんとかふーちゃんとかのことだ。来てくれるかは知らないが、俺より遥かに強いと思う。
警告すると、おっさんはブツブツ言いながらも暗闇へと再び姿を消した。
「うぅ・・・はじめて死んでから痴漢されました・・・サイアクなのです。」
「許してやりーや。あのおっさんも、たまーに部屋に来た客にちょっとセクハラするくらいで、普段は何の害もない霊なんやで?」
「十分害あるじゃん。駆除した方がいいんじゃないか?」
「賛成なのです!!」




