カラオケ
「それでは、翌朝の6時までのフリータイムとなっております。あちらのドリンクバーをご利用ください。部屋は44番です。」
店員に会計表と部屋番号を告げられ、カウンターを後にする俺と悪霊。
「はいどうもー。」
「こ、ここがカラオケというところなのですね!うわーっ、個室がいっぱいありますね!!」
時刻は夜10時。そんなこんなで、俺と悪霊は合宿2日目の物件である『〇ックエコー駅前店』に来ていた。本当は幽霊も連れて来る予定だったが、突然の腹痛で来れなくなってしまった。『うぅー・・・私もカラオケ行きたかったのにぃー・・・』と泣いていたが、原因はアイスの食べ過ぎだ。ということで、悪霊と二人っきりのカラオケとなってしまった。こんな時間帯に、女子中学生くらいの少女と二人でカラオケなど店員から変な目で見られそうだが、悪霊は外では霊体なのでその心配はない。ただの冴えない大学生のヒトカラにしか見えないだろう。
「おい悪霊、はしゃぐのはいいが遊びに来たんじゃないぞ?っておい、そんなに一度にドリンク注いでどうするんだよ。歌ってる途中に無くなったら取りに来れるぞ。」
「なぬ・・・!なんという素晴らしいシステム・・っ!」
「はぁ、まだ始まってもいないのにこのテンションだとこの先が思いやられるな。ほら、ついたぞ。この部屋だ。」
ガチャ
「おぉー!広いですね。10人くらい・・・いやもっと入れそうです。」
「そりゃ、大人数のパーティー用の部屋だからな。」
もちろん、普通の部屋ではない。〇ックエコー駅前店の44番室。このパーティールームにはいくつか噂がある。『歌ってたら、いないはずの女の歌声が混ざる』『誰も入れていない曲が入る』『カップルで来たら必ず別れる』などなど・・・。この間の廃病院に比べたら可愛いレベルだが、今日は霊力が覚醒してないない悪霊しかいない。よくある若者の間でのちょっとした噂、程度がちょうどいいだろう。
「ふぅー、さすがにこんなに広いとちょっと落ち着かないな。あれ?悪霊お前、実体化してるな。なんでだ?」
部屋に入るまでは霊体でフワフワ浮いていた悪霊だったが、いつのまにか実体化してソファにちょこんと座っている。
「わっ、ほんとですね。最近、いつの間にか霊体が解けちゃうことがあるのです。」
「店員が来たら隠れてくれよ・・・。こんな時間に未成年連れまわしてたら警察呼ばれるぞ。」
これも俺から出てる霊力が関係しているのだろうか。だがコントロール出来ていない現状、気をつけようがない。
「さてと、ここの霊さんが出て来るまでカラオケを楽しむとするか。」
「ご主人さま!ケーキ注文していいですかっ!?」
メニューを見ながら目を輝かせる悪霊。いや歌えよ。




