筋肉痛と報告Ⅰ
「体が・・・動かねぇ。」
廃病院での一件から一夜明けた朝。お昼頃に目が覚める俺だったが、早々に体の異常に気が付く。そう、体が全く動かないのだ、全身筋肉痛で。
「まじかよ、こんな酷いの今までなったことないぞ?・・・おーい、幽霊ぃー。悪霊ぅー・・助けてくれー。いるんだろー?こんな時くらい役に立てよー・・・いててて、喋るだけでも体に響くな。」
「うぅ・・・。」
ぼぅ、っとその場に現れたのは幽霊。ベットで寝ている俺の上にそのまま具現化し、ズシっと体重がのしかかる
「グホッ!!重っ!そして痛ぇ!!おい幽霊、俺の上で具現化しんじゃねぇよ!重すぎ、痩せろ!」
「いてててて・・・それがさぁー、私も筋肉痛で動けないんだよね・・・」
筋肉痛になる霊とか聞いたことないぞ。俺と幽霊がそろってこの様ということは、原因はひとつ。昨夜の廃病院での戦闘しかない
「あんたたち・・・真昼間から何やってんの・・・まさかッ・・・『契り』を・・!?」
「ハルカ、見ちゃダメ。不純異性交遊なの。お邪魔したの。」
声が聞こえたほうに目をやると、そこにはハルカとふーちゃんが立っていた。他人から見れば、俺の上に幽霊が覆いかぶさっているこの状況は明らかにアウトだ。
「お前ら、ここ俺んちだぞ?何勝手に入ってきてんだよ。まぁいい、ちょうどいいところに来た。助けてくれ、俺たち二人とも体が動かねえんだ。」
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何とか二人に助けてもらい、俺はソファー、幽霊はそのままベットに移動させてもらった。
「ふぅ・・・それで、だ。俺たちのこの状況は絶対霊力使った副作用だろ?それしか考えられん。っていうか、ふーちゃん?きみ、心霊スポットがあんなに危険とか言ってなかったよね?うじゃうじゃ霊がいたんですけど?死にかけたんですけど?」
「無事帰って来れたし、良かったの。終わりよければ全て良し、うん。」
無表情で答えるふーちゃん。確信犯かよ、と最初は思ったがどうやら見たところ素で伝えるのを忘れたようだ。この子、いろんな意味で危ない。
「で、帰って来れたってことは幽霊も霊力扱えるようになったんだろ?詳しく聞かせなさいよ。まぁ、このハルカ様には及ばないだろうけど!」
昨夜、廃病院で起こったことを細かく説明する。うじゃうじゃ霊がいたこと、幽霊の蹴りやパンチで撃退したこと、霊力の供給は体に触れているときだけだということ。一通り話したところで、ふーちゃんが口を開く。
「まず、その筋肉痛は膨大な霊力を一度に使った反動なの。たぶん2日くらいで治る。次に、幽霊の能力だけど、思った通り物理で殴る系なの。高度な技術がいらない、シンプルに『殴る』だけ。あそこの廃病院の野良霊を倒したということは、相当強力なの。」
「なんか私、褒められてるのか馬鹿にされてるのか、びみょーな心境なんですけど・・・それに、『思った通り』ってなんなのよ・・・。」
「幽霊バカそうだもんねー。」
アンタだけには言われたくないっ、とハルカと幽霊が口論を始めるが、お構いなしにふーちゃんは話を続ける
「それと、『体に触れいる間だけ』っていうのはよく分からないの。鍛え方次第で、繋がずに霊力を供給できるようになるのか、それとも『体に触れる』行為自体が、発動条件なのか。」
「うーん・・・できれば遠距離でも霊力を扱えるようになりたい・・・。」
幽霊との息の合わなささを思い出しながら、つくづくそう感じる。




