廃病院Ⅱ
主人公と幽霊ちゃんが、廃病院に潜入した丁度その頃、マンションの一室で、夕飯を食べながら会話をするハルカとふーちゃん。
「ふーちゃん、そういえばあいつら今日から例の合宿するんだっけ?」
「そうなの。」
「それにしても、いきなり心霊スポット合宿やらせるなんて、ふーちゃんも鬼よねー。」
「?」
何のことだか分からないといった表情でふーちゃんが首をかしげる。
「だって、この辺りの心霊スポットって、どこもヤバいとこばっかじゃん。確かに霊力は高まるかもしれないけど、ほとんど素人のあいつらにはちょっとキツイんじゃない?ま、私は天才だから乗り切ったけどね。」
ふーちゃんの箸が止まる。
「・・・まさか、ふーちゃん。何も考えないであいつに合宿させたわけ・・・ないよね?」
「うっかりしてたの。まぁ、死ぬことはないし。大丈夫なの。・・・たぶん。」
「いやいや・・・普通に死ぬレベルでヤバいよ・・・。、ま、まぁ、何とかなるか!さ、ご飯食べよう!冷めちゃうよ!」
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場面変わって、廃病院。二人は時速10メートルくらいのスピードで、なんとか一歩ずつ進んでいた。
「うぅ・・・。なんか変なにおいするし。ほこりっぽいし。もうすぐ夏なのに寒いしぃー・・。」
幽霊の言う通り、鼻をつくカビのにおいが酷い。空気も、外の何倍も重い気がする。
「幽霊、俺はもっとヤバいことに気付いてるんだぜ・・。普通、心霊スポットって、面白半分で訪ねてきたやつらとかが残す落書きが多いじゃん?スプレーとかで描いたやつ。・・・ここ、全くそれがないんだよ。・・・これがどういう意味か分かるか・・・?」
「・・・ここに入る人はほとんどいない。それか、入っても落書きなんかしてる余裕がない・・・とか?」
大当たり。幽霊のくせに、こんな時に限って冴えてるじゃないか。
コツ・・・コツ・・・
ナースステーションを横切り、長い廊下を二人の足音だけが鳴り響く。目の前には、患者がいたであろう病室が並んでいる。
「なんで、廊下のど真ん中に車いす置いてんのよぉ~・・・。雰囲気出しすぎなのよぉ・・・」
幽霊が半泣きになりながら俺にぎゅっとしがみつく。目線の先には、いまにも動き出しそうな無人の車いす。
「バカお前、フラグ立てんじゃねーよ。こっちまでビビるわ。」
二人して、びくびくしながら車いすの横を通る
「「「「「ねぇ」」」」」
・・・・・・!!!!!!
車いすを通り過ぎようとしたその時、『何か』が囁く声が二人の耳元にこだまする。
「ゆ、幽霊さん・・。な、何か聞こえた・・・か?」
「きっ、奇遇ね。『ねぇ』って聞こえたんだけど、まさか君がじゃない・・よね?」
ダメもとで幽霊に聞いてみるが、どうやら二人して同じ幻聴を聞いてしまったらしい。というか、明らかにそれは女の声だった。俺なわけがない。
「「「「「逃がさないよ」」」」」
今度は、真後ろから聞こえてくる。とっさに振り替える俺と幽霊。その瞬間、目を疑う。
「うわあああああああああああああああああっ!!!!!」
「きゃあああああああああっっ!!!」
本能的に、ダッシュで逃げ出す俺と幽霊。振り返った先に見えたのは、病室からこちらを覗く、顔。顔。顔。




