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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第3章 襲撃編
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引っ越しⅢ

新居見学の翌日に即入居するという異例のスピード引っ越しで、俺たちは新居を手に入れた。


「ここがあたしの部屋でー、そうね、悪霊はここでいいんじゃない?」


「ちょ、幽霊さん!そこはこの悪霊が狙っていた部屋なのですっ、しかもここは収納スペースじゃないですか!むぅ~。」


「おーい、お前らも荷物整理するの手伝えよー・・・って言っても、前のアパートから持ってこれる家具や日用用品は、ほとんどあの爆発で使い物にならなくなったからな。今度また服とか買いに行かないとだな。・・・それにしても、お前らと一緒でも流石に広いな。ここは。」


築10年の2LDk。最寄駅から徒歩5分というこの物件は、学生の一人暮らし(霊が2体いるが)にとってはあまりにも勿体ない広さだ。普通なら、家賃10万は軽々と超えるだろう。


「おっ、もうこんな時間か。今日は引っ越し祝いだ、晩飯は豪勢に出前でも取るか。2人とも好きなの頼んでいいぞー。」


「えっ!いいのー!?私中華がいいーっ!」


「ご主人さま、私は肉で。」


「悪霊、もうちょっと具体的に言えよ・・。まぁ、お前らがいるおかげで曰くつきの物件でも、こんな広いとこに激安で住むことができたからな。今日だけは俺のおごりだ。」


もし本当に霊が出たら、こいつらに頑張ってもらわないと。流石に怨霊さんやヌイの化け犬、かよっちみたいな規格外の霊は出ないだろう。


「っと、出前とる前にちょっとシャワーでも浴びるかな。引っ越しで埃と汗まみれだし。」


段ボールからタオルと着替えを取り出し、洗面所へと向かう。前のボロアパートと違い浴室は段違いに広く、何といってもトイレと風呂が別々なのが良い。思わず鼻歌交じりになってしまう。


「ふんふーん♪」


ガチャ。浴室のドアを開ける。


「ふんふーん♪・・・・うぉっ!!!!誰だよッ!!!」


あまりの不意打ちに思わず悲鳴を上げる。驚くのも無理はない、『いる』のだ。浴槽の中に、スーツ姿で体育据わりをしている『おっさん』が。


「ちょっ、幽霊ぃ!悪霊ぅ!!来てくれーッ!いる!!おっさんが風呂場に出たァ!!!」


おっさんの顔に表情はなく、俺の方を見向きもせずただただボーっと壁を見つめている。直感でわかる、このおっさん、生きてない。霊だ。


「ぬわぁああああああ!!!ご主人さまぁ!!こっちも一杯います!!」


「早くこっち来てなんとかしなさいよーーっ!!ちょ、悪霊、逃げるなんてずるいわよ!!私を一人にしないでっ!!」


リビングの方からも、幽霊と悪霊の叫び声が聞こえる。『こっちも一杯います!』だと?腰にタオルを巻き、急いで浴室からリビングへと向かう。


「おいおい・・・何だよこれ。」


広いリビングには老若男女、小学生くらいの子供からお年寄りまで、10人程の生気のない顔をした霊が風呂場のおっさんと同じように、ボーっと壁の一点を見つめて立っていた。引っ越し早々、早くも俺たちは激安物件に釣られたことを後悔することになる。



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