引っ越しⅠ
なんとか脱出することができた朝、滅茶苦茶になった部屋で立ち尽くす俺たちに師匠は、『いやー、すまんすまん。まさかこんなになるとは。ははッ』と言い残し、風のように去っていった。俺たちを捕獲するという目的は、一応は諦めたらしい。今回のかよっちの能力の暴走のように、無暗に近づくのは危険と判断したようだ。そして、我が家の窓とベランダを破壊した怨霊さんは、『今度は一緒に飲もうねー!』と言って帰っていった。怨霊さんと飲むことの危険性は今回で痛いほど身に染みた。絶対に避けねばならない。
「ねーねー、なにボーっとしてんのよー。お腹すいたー。」
「ご主人さま、せっかくなんで今日のお昼は外食にしましょう。というか、もう夕飯の時間ですね。」
時刻は午後6時。俺たちは今、警察署を出たところだ。脱出できた直後、爆音を聞きつけた近所の住民によって通報され、俺は一日中警察のお世話になっていた。『あの爆音はなんだ』『粉々になっている君の家のベランダとの関係は』『部屋で何か爆発物でも扱ってたのではないか』『アパートの前の道が破壊されているのも君がやったのか』などといった様々な質問を浴びせられたが、『知りません。急に爆発しました。』の一点張りで通した。
「お前らはいつも飯のことしか頭にないのか・・・。帰る場所が無くなったんだぞ。危機感持てよ。」
はぁ、とため息をつく。警察と消防による現場検証では、爆発の原因は掴めなかったようだ。まぁ、それもそうだ。まさか霊がやったなんて分かるわけがない。それに、超常現象研究会という謎の組織に襲撃されました、と説明しても恐らく信じてもらえないだろう。
「まぁ、解放されて良かったじゃん。逮捕されたら面白かったけどねーw」
「幽霊、お前晩飯抜きな。」
「わー!わー!嘘っ、うそだよー!」
しかし、これからどうするか。とてもじゃないが部屋は住める状態ではない。大家さんは、『保険に入っているから大丈夫』と言っていたから、修理費の弁償はしなくていいのは一安心だが。
「うーん、次の住処が見つかるまで、暫くはネカフェ生活か・・・。金がいつまで足りるか・・・」
「ご主人さま、『ネカフェ』というのは噂のネットカフェのことですかっ!?一度行ってみたかったのですっ!」
「悪霊、お前はどうでもいいことに興味持ちすぎ。とにかく、一旦家に戻って無事な着替えやら大学の物とかを取りに行くぞ。晩飯はそれからだ。」
「「おー!」」
元気そうに声を揃える幽霊と悪霊。こいつらはホント能天気だな。




