刺客Ⅰ
「ゆ、幽霊さん?やばい奴って・・・一体、何がドアの向こうにいるのですか?」
恐る恐る幽霊に問いかける悪霊。
「悪霊・・・一応聞くけど、あんた結界的なやつ使えたりしないわよね?」
「無理なのです・・・。私が出来るのはポルターガイストで、物を浮かしたり出来る程度なのです。」
「デスヨネー・・・」
ドアスコープから見えているのは、どこにでもいそうな眼鏡をかけたスーツ姿の男。しかし、ヤバい奴というのはこの男の外見ではなく、彼から放たれる異様な『何か』。恐らく、こいつが従えている霊がその原因だろう。幽霊は直感的にそう感じ取っていた。
「仕方ない。前みたいに、姉さんに助けてもらうわよ!あんたちょっとここで見張ってて!」
「りょ、了解なのです!」
急いでリビングへと戻る幽霊。姉さんを呼び出すにはチャンネルを使う必要があるのだが、その操作方法も手間がかかる。
「ちょっと、悪霊!あんたチャンネルどこやったのよ!こんな時にもぉぉぉ!!」
「えぇ!!私じゃないですよ!!・・・ん?男の口元が動いてます!こいつ何か言ってますよ!」
「んなことどうでもいいわよ!チャンネルチャンネル・・・あれ?」
部屋の違和感に気づく。確かリビングの電気は点いていたはずだが、何故か全体的に薄暗い。テレビの画面も、深夜アニメが流れていたはずだがいつの間にか砂嵐になっている。
「ゆ、幽霊さん。何かこの部屋おかしくないですか?それに肌寒い・・・。」
「やべぇ・・・たぶんこれ侵入されちゃったかも。」
ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"・・・・
「ひゃっ!!な、な、なんですかこの声・・・。この部屋に何かいますよぉ・・・」
突如、どこからともなく部屋に鳴り響く不気味な声。悪霊はもう半泣きだ。
「くっ、こうなったら玄関から正面突破よ!!なるようになれっ!!」
勢いよく玄関のドアを開ける。あわよくばその勢いで、スーツ男にドアをぶつけてやろうという戦法だ。
「うおおおおおっ!!・・・あれ・・・嘘でしょ・・。」
玄関の扉の先にあるはずのアパートの廊下はなく、そこには見慣れたリビングの光景が広がっていた。
「・・・どうやら空間ごと閉じ込められたってことね。うーん・・・詰んだわ、これ。」
「ええぇ!!諦めちゃうんですか!?私まだ死にたくないのです!もう死んでますけど!!」
ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"・・・・
「おっしゃぁ!!覚悟決めたわ!出てこいやオラぁ!!」
「幽霊さん煽っちゃだめなのです!!」




