地獄の飲み会Ⅰ
大学が始まって数週間が経った。季節は春から梅雨へと移り変わろうとしており、じわじわと湿度と気温がが高まっているのがわかる。
「いらっしゃいませー。」
相変わらずコンビニバイトに勤しむ今日この頃。あれから超常現象研究会とかいう謎の連中からの干渉はなく、俺は平和な日々を送っていた。平和な、とは言ったものの、相変わらず部屋に居候の霊2体は住み着いているが。最近部屋に他人がいることに違和感を感じなくなってきている自分が怖い。それに、問題はそれだではなく、現在進行形で起こっている・・・。
「あのー・・・今仕事中なんで勘弁してもらえませんかね・・・。」
「ねーねー。飲み会まだなの?まだなの?ねえ?」
カウンター内に入ってきて俺の肩をひたすら揺らすこの女・・・そう、怨霊さんだ。貞子さんに浄化されてからは、実体はあるものの、俺以外の人間には視えなくなっている。(本人曰く、本気出せば可視化モードになれるらしい)
飲み会の約束をしてからというもの、何度も俺の前に現れ、そのたびに何かと理由をつけて誤魔化してきたが、彼女の酒に対する執着は俺の想像を遥かに超えていた。
「今日!今日絶対やるよ!じゃないと私死んじゃうぅぅぅ!!!」
「もう死んでますよね?というか白目剥いた顔近づけるのやめてください。」
「あぁぁぁぁぁ!!禁断症状がぁあぁ!!」
そう叫ぶと怨霊さんは、その場でゴロゴロと転がりだした。
「いくら周りから見えてないからって、実体はあるんだからケガしますよ・・・ん?」
ズズズ・・・
怨霊さんの周りに、微かではあるが黒いオーラのようなものが見える。初めて怨霊さんにあった時に見えていた、あの禍々しいオーラによく似ている。
「そういえば・・・。」
怨霊さんを浄化した帰り際に貞子さんが言っていた言葉が脳裏をよぎる。
『あ、そうそう。とりあえずその子の浄化は完了してるけど、何かきっかけがあればまた元に戻っちゃうかもだから気を付けてね。例えば・・そうね、強いストレスが重なった時とか。』
まずい。すっかり忘れていた。このまま怨霊さんを放置しておくと、前みたいなヤバい奴に逆戻り・・・。
「わ、わかりました!やります!今日飲み会しますから、暴れるのやめてください!」
「えっ!ホント!?やったぁぁぁ!!!お酒が飲めるぞぉ!!」
大きく両手を広げて、全身で喜びを表現する怨霊さん。心なしか、黒いオーラは薄くなったようだ。
「とりあえず、バイト終わるまで大人しくしててくださいね。」
「分かってるって!!」




