新年の来客者
【__________おおっと、ここで青学1年エースがスピードを上げた!これで5人抜きです!なんということでしょう!!】
1月2日。テレビからは毎年恒例の箱根駅伝の映像が垂れ流されていた。
あの嵐のようなクリスマスも過ぎ去り、あっという間に新年だ。
「うわー、よくもまぁ、新年早々寒い中よく走れるよねぇ~。見てるだけで疲れちゃう。走ってないでうちらみたいにだらだら過ごすのが正月のいいとこなのにねー。」
コタツに入りながらミカンを食べる幽霊。走っている選手からすれば余計なお世話だろう。
「幽霊、ちょっと静かにしてください今良いとこなのです!こ…これは歴史的瞬間なのです!まさに神童!山の神誕生なのです!」
冷めている幽霊とは反対に、食い入るように中継を見つめる悪霊。
「皆さん、お茶が入りましたのでどうぞ。お兄ちゃんもどうぞ。」
ナナシがお茶を運んでくる。
「ん、あぁ有難うナナシ。てか、お前もこっちきてコタツ入れよ。正月なんだし家事しなくていいんだぞ。別にお前の仕事じゃないんだから。」
「いえ、好きでやっているので。でも、せっかくなのでお言葉に甘えて、お隣に入らせてもらいますね。」
コタツの布団をめくり、俺の隣に華奢な身体を滑り込ませるナナシ。うちに来た当初から考えるとすっかり心を開いてくれいる様子。未だに『お兄ちゃん』呼びされるのは慣れない。
「そういえばさー、あいつらどーなったんだっけ?」
ふと幽霊が思い出したように呟く
「あいつら?」
「ほら、クリスマスの時のあの兎と猫のふたりだよ。あの後顔見ないけど、どーなったのかなって。」
「…あぁ、あいつらなら上の青葉のとこに居候してるらしいぞ。ったく、対霊課は何考えてるんだか。」
クリスマスの夜、俺を襲撃し研究会と交戦した仮面教からの刺客、『ネコミミ京都弁Jk・ネコ美』、『変態糸目・兎太郎』。対霊課に連行されるのかと思いきや、怨霊さんの上司である貞子姐さんの命令でこのマンションで監視下に置かれることが決まったのだ。『喰面』は没収しているから安全だというが、
危険人物であることには変わりない。
「悪霊この前見ましたよ。何かげっそりしてたのです。あの変態青葉の事ですから、何かの実験台にでもされているのでしょう。」
「それは死んだほうがましな目に遭ってそうだね…ま、うちらには関係ないからいっか。ねーねー、どっか買い物に行こうよー。」
幽霊がコタツの中で俺の足を軽く蹴る
「足癖が悪ぃぞ、幽霊。正月はだらだら過ごすのが良いんじゃなかったのかよ。このくそ寒い中外出るわけねーだろ。」
「えー。あ、そーだ!みんなでお参りに行こうよ。近くに神社あったじゃん。」
「あー、確かに行ってないな。けど俺あんまり神社行きたくねーんだよなぁ」
「なんで?」
「いや、『神社』にあんまりいい思い出無いっていうかなんというか…」
「意味不明。ねー、ナナシもみんなでお参り行きたいよね?多分甘酒も配ってると思うよ!」
「…お参り…甘酒っ…!!行ってみたい…です…!!」
目をキラキラさせながら俺を見つめるナナシ。ぐっ、俺をそんな目で見つめるなよ…。
「…ったく、分かった分かった。お参り行くぞー。ほら、悪霊も支度しろ。」
上着を羽織りながら、テレビの電源を消す
「にゅわーーーーー!!!!今良いとこだったのにー!山の神と海の神の対決がぁー!!」
「海の神って…馬鹿言ってないで行くぞー。」
ガチャりと玄関のドアを開ける。冷たい外の冷気が顔に触れる。
次の瞬間、不意に、俺の胸に温かく柔らかい感触が飛び込んでくる。
「うぉっ____!?な、何だ!?」
滑らかに靡く雪のように白い銀髪。きっちりと着こまれた黒い着物を着た人物が、俺の胸に抱き着いてきた
そして、ゆっくりと顔を上げ俺の目を見つめる。
「_________…やっとお会いできましたね。『お兄様』。さぁ、我が家へ帰りましょう。『大婆様』がお待ちです。」
「う…嘘だろ_______ 眞銀…!?」




