コンビニ前の聖夜戦Ⅲ
ズズズ…
仮面を装着した少女の体から、紫色の霊気が浮かび上がる。同時に、両手の爪は鋭く伸び、頭からはネコミミ、そして短い丈のスカートからは長いネコの尻尾が出現した。
「…うーん。この猫面強いのは良いねんけど、こうやって尻尾とか生えてしまうのが厄介だにゃあ~…う…、こんな風に口調も変になってしまうにゃ…そっちはずるいにゃ!まだ30人くらいやから、うちみたいに尻尾とか生えにゃくて!」
邪魔そうに尻尾を触る少女の姿を見ながら、兎面を装着した糸目の男はクスリと笑う。
「そっちのほうが可愛らしくて、私は好きですよ?____それに、女性の貴女はまだいいかもしれませんが、兎面をつけた男の私が、ウサミミ姿で語尾に『ぴょん』とか付けてたら気持ちが悪いでしょう…だから私は今回30人程度の兎面を選んだのですよ。」
「確かに、それは気持ち悪いにゃ…。」
「でしょう?さ、そろそろ雑談も終わりにして『掃除』を始めましょう。相手は恐らくこちらと同じで2人です。大方、『研究会』か『八咫烏』の構成員です。」
「サクッと終らせるにゃ!先手必勝一撃必殺っ!」
ダッ__________
路地裏の雑居ビルの壁を凄まじいスピードで駆け上がる『兎』と『猫』。あっという間に屋上まで駆け上がると、『兎』は手すり『猫』は貯水タンクを蹴り、ヌイと人形姫がテントを張っている数ブロック先のビルの屋上へと、一気に距離を詰めた。
「バラバラになれにゃ________『猫娘裂傷』!!!!」
ザシュッ!!!!!!!
『猫』がテントの真上の空中から爪を振りかざすと、テントが骨組みごと大きな音を立てて切り裂かれた。屋上のコンクリートの地面にも大きな目跡がくっきりと刻まれる。
「『兎炎連弾』。」
ボゥ________ズガガガガガガガガガガ!!!!!!
間髪入れずに『兎』が攻撃を行う。指先から炎を生み出し、それをまるでマシンガンのように連射。バラバラになったテントを爆炎とともに焼き尽くした。
「はい、終わりっと________って、ちょっと兎ぃ!?こんな爆炎出しちゃって大丈夫にゃ?通行人に通報されるにゃ!」
「大丈夫ですよ、猫さん。『兎炎連弾』は霊力のない一般人には視認はおろか音すら聞こえませんから。」
炎上するテントの残骸の中から死体を確認するために、屋上に降り立つ兎と猫。
「えーっと、死体死体~…あっ、あったにゃん!黒焦げの死体2人分っ!あっけなかったにゃ。」
「申し訳ありません、猫さん。準備運動にもなりませんでしたね。」
「ホントだにゃ!う~、何か消化不良にゃ~。ちょっとこの辺りの野良霊を狩ってこようかにゃ__________あ?」
ギ…ギ…ギギ…
兎がテントの残骸に背を向けた瞬間、炎の中の2体の黒焦げの死体が突如として動き出す。
「…前言撤回です。どうやら、準備運動位にはなりそうですよ、猫さん。恐らく敵は屍術師…いえ、人形術師ですね。つまり我々は初めから人形へ攻撃していたわけですか。これはしてやられましたね。」
「…なにそれ、ムカつくにゃ…!!こんな木偶なんか使わずに、正々堂々姿を現すにゃ!!」
ザシュッ!!!
猫は怒りに任せて爪をふるい、2体の人形を切り刻む。バラバラになった人形の頭部が猫の足元にまで転がると、まるで腹話術人形のように口元がパクパクと動き、屋上に女の声が響き渡る。
【_______正々堂々…?ずいぶんと『お間抜け』な単語をお使いになってですわね。先に攻撃を仕掛けてきたのは其方…それにこれは暴霊団同士の『戦争』ですわ。今から行われるのは、一方的な蹂躙。手始めに、私の可愛い兵隊たちと戦って頂きましょう。数はざっと…100人ほどでしょうか。】
「100ぅ…?暴霊団最弱の研究会ごとき、どこにそんな戦力が?ハッタリ________だ______にゃ…」
余裕の口ぶりだった猫だが、すぐにそれは間違いだったことを思い知る。周囲のビルの屋上に、おびただしいほどの数の人影に埋め尽くしていることに気づく。人影ではあるが人ではない。『男性』『女性』『子供』『老人』…様々な種類のマネキンが、完全に猫と兎を包囲していた。
【__________総員、蹂躙なさい。】




