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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第13章 クリスマス編
188/202

クリスマスツリーとハサミⅢ

じょきん__________じょきん__________


「…っ_______…ここ…どこ…?」


ナナシは薄暗い部屋の中で目を覚ました。まず視界に入ったのは、壁いっぱいに積まれた段ボール。そして微かではあるが、遠くからショッピングモール内のBGMも聴こえてくる。一先ず、ここが『ショッピングモール内にある倉庫のような場所』であるということを理解する。しかし、すぐ傍から聴こえる『じょきん』というハサミの音に、ナナシの身体は硬直する。


_______…私は知っている。このハサミの音を。


じょきんッ_________


「…目、覚めたみたいだね…ボクの可愛い可愛い、お人形さん♡」


コートを羽織ったスーツ姿の男が、部屋の暗闇の奥からぬるりと姿を現す。手には、赤い持ち手の裁縫バサミ。一見すればどこにでもいるような真面目なサラリーマン。だがナナシは、この男の『凶悪性』を知っていた。


「ど、どうしてあなたがここに__________きゃっ!!!」


男のハサミがナナシのスカートを切り裂き、白い脚が露わになる。もしも数センチずれていれば、脚ごと切り裂かれていただろう。このハサミはただのハサミではない、霊体を切り裂く特別なハサミ。


「…あれれー?お人形さんは喋っちゃ駄目だよー?おかしいなぁ、前に一緒に暮らした時はこんなことなかったのに。」


「…こっ、来ないで!近寄らないでっ!!」


_______怖い、怖い、怖い。吐き気を催すほどの恐怖が込み上げてくる。この男が言う通り、『商品』だった頃は恐怖など感じなかった。何をされても、どんな命令をされても、文字通り『人形』のように従ってきた。しかし今はどうだろう、震えが止まらない。思うように足が動かない・・・あぁ、私、今の新しい暮らしで取り戻してたんだ、『感情』。


「あの頃は楽しかったなあ…『着せ替え人形ごっこ』。また新しいお洋服買ってあげるからね。」


男はハサミの刃をナナシの太ももに這わせながら笑みを浮かべる。ナナシはこの男の名前どころか、年齢も、職業も、素性も知らない。ただ事実としてあるのは、数年前、この男に『飼われていた』ということのみ。


「下りエスカレーターですれ違いざまに君を見つけた時は、心臓が飛び出るくらいに嬉しかったよ。君は僕の人形コレクションの中でもトップクラスに美しかった…奴霊強盗に入られて君を失った時は自殺も考えたよ。でも、こうして再び出会えたのは運命!さぁ、こっちへおいで。僕らの家に帰ろう。」


「や…やめて…近寄らないでっ!!」


ナナシの脳裏に飼われていた時の記憶が蘇る。この男の『着せ替え人形ごっこ』は、ただの着せ替えではない。毎日毎日、男は自らが用意した服を霊たちに着せる。もちろん、霊たちには身動き一つ許されない。これだけでも十分異常なのだが、この男の真の恐ろしい性癖はここからだ。


『…ボタンを留めてっとー、よし!お着替え終わり!どれどれー…________うーん、イメージと少し違うなあ。残念だけれどこのお洋服はダメだね_________ハァ…ハァ…よーし…動かないでね?』


『やめて!!お願いします!!やめて!やだ!痛いのやだぁぁああああ!!!!!』


じょきじょきじょきじょきッ!!!!!!!!!!!


男が気に入らなければ、ハサミで服を切り裂かれるのだ_________『身体』ごと。毎回、消滅しない程度にズタズタにされる。霊体なので血は出ないが、痛みは生身の身体を刃物で切り裂かれるのと同じ。男が満足するまで切り裂かれ、その後は霊力を与えて修復する。

こうして、この男に飼われた奴霊少女たちは、心が壊れるまで何度も何度も永遠に『着せ替え人形ごっこ』させられるのだ。


「どうしてそんなことを言うんだい?『人形』の君に帰る場所なんて無いだろう?君のいるべき場所は、ボクの傍だけなんだよ?」


壁際まで追い詰められるナナシ。


「_______ある…!!帰る場所ならあり…ます…!!私はもうあなたの人形じゃ…ないっ!!」


「…あぁー、エスカレーターで君と一緒にいた男のところかぁー。君以外にも女の子の霊を二人も連れてたな。____よし、決めた!あいつ殺して、あの女の子の霊たちも一緒に連れて帰るとしよう!それなら君も寂しくないよね?」


「やめてっ!あの人たちには手を出さないで__________いう通りにしますから…!!」


犠牲になるのは私だけでいい、あの人たちにだけは迷惑をかけられない…不幸になるのは、私だけで十分だ。あぁ、短い間だったけど、みんなとの暮らし幸せだったな。クリスマス、一緒に過ごしたかったな。


ガチャ___________

次の瞬間、部屋のドアが開く。そして、ナナシが今一番会いたかった人が現れる。


「_______ったく、心配したぞー、ナナシ。あれほど迷子になるなって言っただろ?」


「…ごめん、なさいっ!!!」


私は改めて確信した。私の帰るべき場所は、絶対にこの人のところなんだと。


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