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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第13章 クリスマス編
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ナナシという少女Ⅱ

「ちょ、ナ、ナナシ?そんなことしなくていいから、こっちきて一緒に昼飯食おうぜ?」


「_______いえ、家畜である私が皆様と同じ食卓を囲むなど出来ません。どうぞお気になさらず、お食事をお楽しみください。」


挨拶を終えるや否や、ナナシは幽霊と悪霊の手によって散らかっているリビングをものすごい勢いで掃除し始めた。もちろん、『掃除しろ』などと命令した訳ではない。


「ほ、ほら!カップ麺美味しいよ!…そうだ、ナナシにはとっておきのラ王譲ってあげる!」


「い、今ならデザートに、悪霊秘蔵のハーゲン〇ッツもナナシにあげるのです!」


食べ物に関して絶対の執着心を持つ幽霊と悪霊でさえ、ナナシの気を引こうと必死だ。


「お気遣いありがとうございます、幽霊様、悪霊様。しかし家畜である私など、水とひとかけらのパンでもあれば十分過ぎる程ですので。」


ロボットのように答えるナナシ。

中学生、いや下手すれば小学生ほどの年齢の幼い少女が、自らのことを『家畜』と呼び黙々と仕事をする姿は見るに堪えない程痛々しい。


ガシッ___________

掃除を止めないナナシに恐怖すら覚えた俺は、思わず声を荒らげ彼女の腕を掴む。


「…ナナシ、掃除はやめろ!片づけは散らかしたこいつらにやらせればいい。一緒に昼飯を食べ__________お、おい…!?」


「________ごめんなさいっ!!ごめんなさいっ!!なんでもします!なんでもしますから、どうか殴らないで…!!殴らないでっ…!!」


俺が言い終わらないうちに、ナナシは体を震わせながら床に土下座をし『ごめんなさい』を連呼し始めた。呆気にとられる一同だったが、すぐさま幽霊と悪霊が駆け寄りナナシをなだめる。

____________迂闊だった。もっと慎重になるべきだった。ナナシの心の傷は俺が想像できないほどに深い。腕を掴んだだけでパニックになる程に。


「ど…どうしちゃったの!?」


「安心するのですっ、ご主人さまは殴ったりしないのですよ!?」


________________________


その後、なんとかナナシを落ち着かせることに成功し、『これは命令だ』と何度も言い聞かせやっとのことで俺が握ったおにぎりとみそ汁を食べさせた。半ば無理矢理だったが、今は『命令』として食べさせるしか方法が無かった。ナナシは食べ終わると、まるで電池が切れたかのように眠ってしまった。


「ナナシは?ちゃんと眠ってる?」


眠ったナナシを俺の部屋のベッドに運びリビングへ戻ると、幽霊が心配そうな顔で尋ねてきた。


「あぁ、ぐっすりだよ…よっぽど精神的にも疲れてたんだろーな。・・・って、お前らが掃除するなんてどんな風の吹き回しだよ。」


ナナシが途中までしていた部屋の掃除の続きを、幽霊と悪霊が黙々と行っていた。


「こ、今度から絶対に掃除するのです。もうあんなナナシの姿は見たくないのです…。」


「ついでに、炊事・洗濯もこれからはやってくれ。」


「そ、それは追々…追々、やっていくつもりなのです!!」


「…冗談だよ。お前らは、出来ることだけをやってくれればいい。それにお前らにキッチンを任せたら、命がいくらあっても足りないからな。」


「酷いのです、ご主人さま!悪霊だって、冷凍食品くらいは調理できるのです!」


「悪霊、それは炊事とは呼ばねえよ。・・・って冗談言ってる場合じゃない。緊急会議だ。」


久しぶりの我が家の『緊急会議』。議題はもちろんナナシについてだ。正直なところを言えば、今後ナナシと一緒に生活し、彼女を『普通の霊の女の子』に戻せる自信が俺には無かった。ナナシは心の病気だ。俺は医者でもなんでもない、元居たちゃんとした施設に預けたほうが______________


「_________『施設に戻した方がいい』、とか思ってるんじゃいないの?そんな顔してるけど。」


「うおっ…!!なんだよ幽霊、俺の心読むなよ!!」


幽霊に考えていることを言い当てられ、思わず声を上げてしまう。こいつ、たまにめちゃくちゃ鋭いときあるんだよな。


「施設なんかより、うちにいた方がぜっっっったい良いに決まってるじゃんっ!今、ナナシに必要なのは『愛』!わからんか。愛だ、愛。」


「幽霊、お前最近『千と〇尋』観ただろ。完全に釜爺のセリフじゃねえか……はぁ、何かお前の一言で俺も吹っ切れたよ__________分かった!何が何でもナナシはうちで預かる!悪霊もそれでいいな。」


「はいなのです!それでこそご主人さまなのですっ!!」


____________________________


会議と夕飯が終わり自室に帰ると、相変わらずナナシはベッドの上で眠っていた。

その幼い寝顔を見ていると、もう5年以上は会っていない実の『妹』を思い出す。あの忌々しい『実家』に残してきてしまった、たった一人の兄妹。今何しているのだろうか。


「さて、俺も寝たいのだが…しまったな、幽霊と悪霊の部屋でナナシを寝かせればよかった…」


このままではナナシと一緒のベッドで眠るしかない。いや、言い訳するわけではないが、この寒い季節、リビングで寝るとマジで間違いなく風邪をひく。せめて霊体モードで寝てくれれば良かったのだが、実体化したまま眠ってるため触れれるし温もりもある。


「ま、やましい事なんか何もねぇし、いっか。ふぁ~…、明日バイトのシフト早朝だし、はよ寝よ。」


ナナシの隣で横になると、微かだがナナシが震えていることに気付いた。

寒いのか、悪夢でも見ているのか。自然と俺はナナシの頭に手をやり、優しく撫でていた。


________昔、妹にもこうして撫でて寝かしつけてたなぁ…うちの実家、無駄にでかくて、おまけに古かったから、夜寝るときの隙間風とか怖がってたっけ、あいつ。


そんな遠い昔の事を思い出しながら、気付けば俺は眠りについていた。腕の中のナナシの震えは止まっていた。

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