クリスマスが今年もやってくる(絶望)
「…っクーリスマスが今年もやぁーって来るぅー♪」
「幽霊、その歌やめろ。死にたくなる。」
アリサ奪還作戦からおよそ1か月が経過し、12月に突入した。
ゲームをしながら竹内ま〇やが歌う、某、チキン屋のCMソングを口ずさむ幽霊。クリスマスの時期になるとひっきりなしにテレビで流れるこのCMソングが、俺は大嫌いだった。
「悲しかった♪出来事っを♪消し去るよぉーにぃー♪」
「聞こえなかったのか?幽霊…今すぐ、その忌々しい歌を歌うのをやめ_______」
「______っっさぁぁ~あパジャマを脱いだら出かけよ_______痛ったぁっ!!ちょっとぉ!殴らなくてもいいじゃん!」
涙目になりながら頭を押さえる幽霊。
「言っても聞かんアホには鉄拳制裁だ。・・・お前には分かるか?毎年、寒空の下コンビニの前で、仲睦まじく歩くカップルどもを眺めながら、ケーキとチキンを売る俺の気持ちがっ…!!」
「これだから、こじらせクリぼっち陰キャは…そ、そんなに悲観しなくても、クリスマスは…わ、私が一緒に過ごしてあげるし…!」
勢いで言ってしまったが、途中ですごく恥ずかしい事を言っていることに気付いた幽霊の頬は、みるみるうちに赤く染まっていく。
「…幽霊、お前_________まずはこの、ゴミ屋敷かってくらい散らかったリビングを片付けてから物を言え。掃除・洗濯・料理をしろとは言わんからさぁ…せめて、自分で出したゴミはゴミ箱に入れてくれよ…」
『ぐちゃあ』という擬音が聞こえてきそうなほどに散らかったリビング。俺も掃除が得意な方ではないが、ここまで散らかった中で平然とゲームができるほどの精神を持ち合わせてはいない。
「片付けるの苦手なんだから仕方ないじゃん。それに、悪霊だって散らかしてるし。私だけじゃないもん!」
呆れた幽霊の言い訳に頭を抱えながらも、ふと悪霊の姿が見えないことに気が付く。
「そういえば、悪霊の奴どこいった?さっきから姿が見えな________そこか。」
リビングの中央に置かれているコタツの布団がもぞもぞと動いている。勢いよくめくると、こたつの中で目を輝かせながらノートパソコンを操作する悪霊の姿が。
「わっ!ビックリしたのですご主人さま。寒いので早く閉めてください。」
「…猫かお前は。何見てんの?」
画面を除くと、そこはAm〇zonのページが開かれており、この季節の人気商品がズラリと並んでいた。
「もうすぐクリスマスなのです!サンタさんにお願いするプレゼントを選んでいるのです!ゲーム機、新型PC、新型家電…迷っちゃうのです!」
「悪霊、残念な知らせだ。サンタは死んだ、俺が殺したからな。」
「えぇーーーっ!?そんな!嘘なのです!なんで殺しちゃったんですかっ!?酷いのですご主人さま!!」
思いのほかオーバーな悪霊のリアクションに驚かされる俺と悪霊。この感じ、もしや悪霊は本気でサンタの存在を信じているのかもしれない。そうこうしているうちに、みるみる悪霊の目に涙が溜まっていく。
「うっ…うっ‥ひ、酷いのです…サンタさんを殺しちゃうなんて…そんなご主人さまなんか、大嫌いなのですっ…!!!」
ズズズズズ…!!!!!
霊力を解放させ、ポルターガイストを発動させる悪霊。ガタガタと音を立てながら、リビングの家具が浮き始める。
「わーっ!!嘘!冗談だよ悪霊!!サンタさんを殺す訳ないだろ!ちゃんと悪霊にプレゼントを届けに来てくれるさ!なぁ、幽霊!」
「う、うん!もちろん!あのサンタさんを殺せるわけないでしょ!サンタさんは絶対に悪霊のところにプレゼントを届けてくれる!もちろん、私のところにもね!」
ちらりと俺の方を見ながら悪霊をなだめる幽霊。こいつ、ちゃっかり自分もプレゼントを得ようとしてやがる。
「…ほんと、なのですか?全くもう、完全にご主人さまの嘘に騙されてしまったのです!プレゼントは、手紙に書けばいいのですか?サンタさんの住所はどこにすればいいのでしょう?…クリスマス、楽しみなのです!」
「悪霊、私も一緒にプレゼントを選びたいから見せて!」
すっかり機嫌を直した様子の悪霊は、ウキウキの様子でプレゼント選びに戻った。幽霊もそれに加わり、2人して『値段の高い順』で検索された人気商品一覧を眺める。
「______今年の年末のバイト代は全部プレゼント代で吹っ飛んじまうのか…サンタさんよぉ…俺にもプレゼントをくれませんかね…」
クリスマスまでまだ2週間以上あるというのに、既に絶望感たっぷりな今日この頃。そんな時_______
ピンポーン
「ん?誰だ?宅配便か、N〇Kか、それとも宗教の勧誘か…」
俺の家の訪問者など限られている。おおよその予想を立てながらインターホンの画面をみると、そこには見知った顔が立っていた。対霊課のサイトウだ。
ガチャ_______
「どもどもー。先月はお世話になりましたっすー。【対霊課】サイトウです!」
相変わらずの軽い雰囲気のサイトウ。【対霊課】の人間かわざわざ俺の家に来たということは、何か良くない事件があったという可能性が高い。
「…どうしたんですか、急に。またなんか事件とか_____?」
「いえいえー、事件じゃないっすよ!まぁ、ある意味事件ですけど。今日は上司の貞子さんの命令で、とある『頼み事』をしに来たんですよー。」
「頼み事…?」
開かれたドアの影から、1人の少女が姿を現す。生きている人間ではない、霊だ。見たところ、悪霊よりさらに年下だろうか。次の瞬間、サイトウの口から予想だにしない発言が飛び出す。
「今日からこの子を預かって欲しいんですよー。」
「預かる______は?一体、どういうこと?誰だよ、この霊。」
状況を呑み込めていない俺を気にすることなく、淡々と少女が口を開く。
「はじめまして。私の名前は『ナナシ』といいます。家事全般はもちろん、愛玩物としてもお使いください。」
深々と頭を下げる少女。
_______思い出した、オークションの時、商品として出品されていた少女だ。ハルカに無茶言って、何とか落札しようとしたっけ…良かった、無事だったのか________
「いや待て!!どゆこと!?」




