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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第12章 頭目会議編
179/202

秘書ちゃんの憂鬱Ⅱ

『頭目会議』__________!!!

などという名前が付けられてはいるが、実のところその呼び名はどうでも良かった。『夜会』やら『ボス会』やら『クソ会議』、更には『キ〇ガイの集まり』…関係者の間で呼ばれる千差万別の呼び方から、この会議の忌み嫌われっぷりが伺える。


「…今年の開催日はまだの先の筈…という事は、『緊急』、ですか_________。」


キサキの愛車を運転しながら、秘書ちゃんは焦っていた。というのも、この『頭目会議』というものは通常、年に一度春に開催されるのが普通である。会議に参加するのは、日本各地の暴霊団。

勢力の大きい順に、以下の5組織のボスたち。


①ゴースト家

スメラギ大社

八咫烏ヤタガラス

④仮面教

⑤超常現象研究会


会議への参加は絶対で、欠席することは許されない。秘書ちゃんが気がかりなのは、今回は『緊急』の呼び出しだと言う事。5つの組織のうち、3つの組織のボスが開催の呼びかけを行えば『緊急』頭目会議は実施される決まりとなっている。


「ま、会議の内容のおおよその察しは付いてるわ。秘書ちゃんはそう緊張しなくていいのよ。あなたはいつも通り、わたしを護衛してくれればいいの。」


「は、はぁ…何しろ、わたし『緊急』は初めてなものですから。」


後部座席で、雪見だいふく3個目の開封に手をかけたキサキが、すっかりご機嫌な様子で口を開く。秘蔵の、『雪見だいふく 生チョコ味』を与えることで、何とかキサキを正気に戻すことに成功している。


「キサキさん、到着しました。」


都内のとあるビル前に車を停車させる。頭目会議が行われるビル前の通りは、数えきれないほどの黒塗りの車とイカツイ顔の黒服で埋め尽くされていた。どこからどう見ても、『そっち系の人たちが集まってまーす』という光景だ。


「超常現象研究会が頭目、キサキ様でございますね?どうぞこちらに__________」


厳重警戒な警備の元、案内されるがまま地下3階までエレベーターで降りる。


________地下、か…何かあったらちょっと逃げにくいな。


開催場所は毎回変わる。秘書ちゃんは、一歩このビルに足を踏み入れた時から、いざというときのための逃走ルートを脳内で計算していた。


むさくるしい黒服たちがズラリと並んだ地下3階の廊下を進み、会議室の扉の前に立つ。


________あぁー…もう吐きそう、この時点で物凄い威圧感…これだからクソ会議はイヤなのよー…。


秘書ちゃんはダッシュで帰りたい気持ちを抑え、扉を開けキサキを先に部屋に誘導する。自分も中に入り、主人に代わり挨拶を述べる。声が震えないよう、細心の注意で。私が緊張していることがバレれば、キサキさんがここにいる全員から舐められてしまう。


「失礼致します。到着が遅くなってしまい申し訳ありません。超常現象研究会でございます。」


ピリッ


(_______________っ!!!!)


顔を上げた瞬間、小さな悲鳴を上げそうになるのを必死に飲み込む。

特に何かされたわけではない、ただ、既に到着し席についていた他の暴霊団のボスたちに、睨まれた。ただそれだけで、秘書ちゃんはまるで心臓を直接握られたような気分に陥ってしまった。

・・・あぁ、こいつら全員、人の形をした『化け物』だと。


「ごめんなさいねー。時間通りに来たつもりだったのだけれど、みなさんお早いご到着で。」


そんな秘書ちゃんとは打って変わり、何食わぬ顔でゆったりと椅子に腰かけるキサキ。


「いえいえ。別に遅れた訳じゃありませんので、どうぞお気になさらず。ささ、そろそろ定刻ですし、始めましょっか。会議。」


巨大な円卓に座る5人のボス。正確には4人と1人の代行者だが。

まず口を開いたのは、その代行者である、執事服を身に纏った白髪の男。白髪と言っても、年齢は30代、いや20代後半といったところか。彼の背後には、この場に不釣り合いな『メイド服』を来たザ・メイドな女が2人立っていた。


________ゴースト家執事長‥それに後ろの女2人は_____ゴースト家ご自慢の、『殺戮冥土アサルトメイド』っ!?んな物騒なもん、連れて来ないでよー…キサキさん、私もうちびりそうです…。


「……ゴースト家のご当主はまた欠席ですか?執事長である、あんさんがビシッと言わなあかんとちゃいますの?」


スーツ姿で、赤い『天狗』の面を付けた京都弁の男が釘をさす。仮面教のボスだ。彼の背後には、以前オークションでキサキと秘書ちゃんが会った、『狐の面』と『戌の面』を付けた男女も護衛として立っていた。


「私の主人は病弱なのです、そこはどうぞ、ご容赦していただきたい。」


ニッコリ笑い、笑顔で受け流すゴースト家執事長だったが、仮面教のボスはなおも続ける。


「お噂では、まだ幼さの残る少女らしい。執事長のあんさんが、実際のところ実権を握っとるんとちゃいます?ご当主は操り人形だとか…。」


「ははは。仮面教の頭目でもあろうお方も、そのようなご冗談を申されるのですね。」


_______はーじまった。頭目会議名物、『ガキみたいな悪口合戦』。この場にいるボス共は、一人残らず中身はガキだ。厄介なのは、とんでもなく『力を持った』ガキというところ…他の組織の秘書も、みんな苦労してるんだろうなぁー。


「いい加減にしろ。私たちは今日、世間話をするために集まったのか?」


明らかな苛立ちを含めた声で、ゴースト家と仮面教の言い争いを遮ったのは、全身真っ黒いマントを羽織ったペストマスク姿の人物。暴霊団・八咫烏ヤタガラスのボス。

一瞬場が静まるも、すぐに新たな人物が口を開いた。


「ククク…知っておるぞぉ~『カラス』の。お前のとこの商売が、こっ酷く失敗したそうじゃないかw苛立ちが隠しきれておらんぞ?w」


「_____っ、黙りなさい!!この老害っ!!」


顔を真っ赤に…というのはペストマスク越しの為わからないが、そうなっているのが手に取るように分かる程声を荒げる八咫烏ヤタガラスのボス。

彼女を煽ったのは、日本最大級の大神社『スメラギ大社』の女神主。『老害』などと悪口を吐かれているが、彼女の外見は10代前半。秘書ちゃんは彼女の事を密かに『ロリババア』と呼んでいた。


「おいカラス…そのクチバシ、二度と喋れぬよう縫い付けてやろうか?」


恐ろしくドスの利いた声を響かせるのは、ロリババアの背後に立つ真っ黒い着物を着た従者の少女。まるで『座敷童』のような愛くるしい見た目と反し、その眼は主人を貶された怒りで真っ赤に充血していた。


「ふんっ、出来るものならやってみるがいい。返り討ちにしてあげます。」


「おやおや、うちを差し置いて戦争でっか?ええ度胸してますなぁ。」


「『仮面の』は黙っとれ。その天狗の鼻、後でへし折ってやるわ!」


「…はぁ~、わがゴースト家の当主も、会議に出席したがらない訳です。みなさん、レベルが低すぎますね。」


「「「あ!?」」」


売り言葉に買い言葉で、ゴースト家と仮面教のボスも参戦。あっという間に言い争いの火種は広がり、方々で、ギャアギャアと口論が始まった。


________この人たち、本当に組織のトップなのだろうか?その辺の小学生の方が、もっとマシな話し合いが出来ると思う。


そう秘書ちゃんが呆れ始めた時、ここまで唯一無言だったキサキが、ぽつりと呟く。


「_______________『極霊力』…今日皆さんが集まったのは、これが目的でしょう?」


キサキの一言で、ピタリと言い争いが止んだ。いや、まだ言い争いの方がマシだったかもしれない。一気に室内に殺意が満ち、ボスたちの眼がギラつく。そんなことお構いなしに、キサキはさらりと続ける。


「残念だけれど…あの子は、私のものだから。ここにいる誰にも渡さない。」


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