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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第11章 オークション編
177/202

対霊課特殊急襲部隊

「い…一体、何が______________うっ、眩し______へ…ヘリ!?」


ババババババ____________

激しいヘリコプターのプロペラ音と共に、辺りがサーチライトに照らされる。あまりの眩しさに目を細めながら、何とか頭上を見上げるとそこには一機のヘリコプターがホバリングしていた。次の瞬間、側面のドアが開かれ、次々に中から黒い装備に身を固めた人影がロープによる降下を始めた。よくテレビで見る警察の『SAT』みたいな恰好をしている。どこかの部隊なのだろうか。


「_____対象、確認しました。狙撃による効果が認められます。」


ヘリから屋上に降り立った数人の部隊は、倒れている牛頭コズを手に持っている自動小銃で狙いを定めながら囲む。そのうちの一人は、無線でどこかに連絡を始めた。


ピクッ


「…ウゥゥ________ザイニン…殺ス…グアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!」


身動き一つ無かった牛頭コズだったが、突如活動を再開し部隊の隊員目がけて飛びかかろうとする。


「危な__________________」


ズガガガガガガガ__________!!!!!!!

俺の心配など無用だと言わんばかりに、隊員たちは焦る様子も無く自動小銃のトリガーを引き、牛頭コズに対し銃弾の雨を浴びせた。


「い、今更、普通の銃があいつに効くとは思わないけど…」


ハルカが、気絶しているふーちゃんを背負いながら俺の傍に寄って来て呟いた。彼女の言う通り、恐らく『この世のものではない』であろう存在の牛頭コズに対し、通常の現代兵器では全く意味が無い。だが、そんな俺たちの疑念はすぐ覆る。


「か…固まった…!?」


ビキッ_________ビキビキビキ…!!

銃弾を浴びた牛頭コズの身体は、あっという間に氷のように透明な結晶体に包まれ、ほんの十数秒でピクリとも動かなくなった。


「ザザッ______対象、沈黙を確認。無力化に成功。」


「了解。作戦通り、これから地上班と屋上班による殲滅作戦を開始せよ。ホテル内に残る残存敵兵力は絶対に見逃すな。」


「了解。」


再び無線で連絡を取る隊員。今度は、無線の向こうから女の声で返答があった。その声には間違いなく聞き覚えがあった。俺の良く知る人物_______いや、霊だ。


ヒュン_____ヒュン______ヒュン_________

上空でホバリングしていたヘリが、屋上のⒽのマークの部分に着陸する。中から数名の隊員と共に、見覚えのある3人が降りて来た。うち2人は何となく予想はしていたのだが、1人の顔を見て驚く。


「貞子さんに、サイトウ…ってことは、この部隊は対霊課なのか_________っていや待て、な、何で怨霊さんまでいるんだよ!?」


「貞子さんって呼ぶの止めてって言ったでしょ?________遅くなって悪かったわね。」


「お久しぶりっすー!大丈夫ですか!?」


先陣を切ってヘリから降りて来たのは、幽霊の知り合いで対霊課で捜査官をやっている貞子さん。その後ろに続き、彼女の部下で霊使いのサイトウも降りて来た。そして、なにより驚いたのは、だるそうな表情で同じヘリから降りて来た怨霊さんだ。怨霊さんとは、以前あった深夜の高速道路での一件以来だ。


「ひ、久しぶりー…私が聞きたいよ。ホント。ははは…。」


あの後、対霊課に保護されたと聞いてはいたが、何故か怨霊さんの眼は死んだ魚の眼をしていた。


______________


ホテルの一階ロビーは騒然としていた。ホテルの敷地を取り囲むように多くの警察車両が停まり、全ての出入り口には規制線が敷かれた。宿泊客は全員ホテルの外に締め出され、怒り心頭の様子だ。


「どう?大丈夫あなたたち。怪我はないの?」


ホテル前に停まった救急車に乗せられ、簡単な応急処置を受けていた俺とハルカの元に、貞子さんが心配そうな顔をして訪ねて来た。


「あ、さだ_______姉さん。大丈夫です、俺とハルカも打撲程度で…いっ、痛ててて…!!!」


「馬鹿、怪我は大丈夫でも憑依戦闘による体への負担は凄いんだから。2人とも、2週間はまともに動けないでしょうね。」


貞子さんにツンと軽く体を小突かれただけで、悶絶級の痛みが全身に走る。いくら修行しても、この後遺症は未だに慣れない。


「わ、私は大丈夫だし!!それより、あなた…貞子さん?って言ったっけ?ふーちゃんは…私たちの持ち霊は大丈夫なの!?」


ハルカが食い入るように貞子さんに問い詰める。そういや、ハルカと貞子さんは今日が初めて会うんだっけか。


「私の事は、『姉さん』と呼ぶように…!!_________大丈夫よ、安心しなさい。あなた達の持ち霊も、このホテルで捕らえられてた霊たちも全員こちらで保護したわ。近くの大型車両にいるから、後ですぐ会わせてあげる。あ、それとあの青葉?っていう子もあなた達の仲間なのよね?その子も大丈夫よ。」


「良かった、幽霊たちは無事か。まぁ、青葉は心配しなくても大丈夫か。それで、姉さん。どうして俺たちがここにいることが分かったんだ?警察は、オークションに手出し出来ないんじゃなかったのか?」


隣のハルカも俺に同意するように頷く。以前、ハルカが言っていた話では、オークションには政界の大物や裏社会の幹部も多く関係する為、警察もなかなか介入できないはずだ。


「あぁ…その事ね。まぁ、説明すると長いんだけど、たまたま私たちは今、『霊攫い』集団の一斉摘発に力を入れててね、それで最近入手した情報で今夜ここで『商品』の受け渡しが行われるって事を知ったの。」


「一斉摘発…なるほど。」


キサキに教えられた、『霊攫いが対霊課と一戦交えている』というのはこのことだったのか。通りでここの警備が薄かったわけだ。


「で、まぁ本来だったら、その情報だけじゃうちらも摘発出来ないんだけど、入手できた『商品リスト』の中にヤバめの商品の名前があってね。あなた達も分かるでしょ…?」


ヤバいと言ったらアレしか頭に浮かばない。そう、『牛頭參拾弐番コズサンジュウニバン』、あの牛の化け物だ。神妙な顔で、貞子さんは更に説明を続ける。


「機密情報だから、あんまり詳しくは言えないんだけど、アレは本来『霊獄』っていう監獄にいないといけないモノなのよ。でも、中には壊れて命令を聞かなくなる個体も出てくることもあって、今夜のあの個体番号『參拾弐番』は処分される予定だった…」 


貞子さんに続き、仕事をひと段落終えた様子のサイトウが戻り、続いて説明する。


「先輩、お疲れ様っす________けど、どっからか裏ルートで流れちゃったんすよ。マジ迷惑ですよね!あんな化け物、一匹でも一般社会に流出すれば、死人が何人出ることか。」


「それで、流石の警察上層部も重い腰を上げたってわけ。おかげでこうして、商品として売られてしまうところだった霊たちを助けることが出来たけ訳だけど________まぁ、戦果はあまりなかったわね。サイトウ、報告。」


貞子さんに促され、サイトウが手に持ったリストを読み上げる。


「はい、今夜、ホテルで捕らえた中に、暴霊団幹部及び霊攫いの幹部は居ませんでした。ったく、逃げ足の速い奴らですよ。」


諸悪の根源である幹部連中を捕らえられなかったのは残念だが、一先ずこうしてアリサをはじめとする捕まっていた霊たちを助けることが出来たのは良かった。もし、貞子さんたち対霊課が来てくれなかったらヤバかったが。


「うぅ________…貞子の姉貴ぃー、やっと全員の護送完了しました…ホテル内にも霊使いの気配はありません。もう今夜は帰りましょうよぉ‥帰ってお酒飲みたいぃー…!!」


ふらついた足取りで、怨霊さんが貞子さんに泣きつく。


「で…なんで、怨霊さんは対霊課で働いてるんだ?まじでびっくりしたんだけど。」


俺の疑問に、貞子さんが答える。


「この前保護してから、行く当てがないって言うんで私の管理下で対霊課で働くことになったのよ。あなたも知ってる通り、こいつかなり強力な野良霊だし世に解き放つわけにもいかないしね。」


「この鬼上司ぃ!いっつも私をこき使いやがってぇ!!酒飲ませろぉーーーーー!!!」


あの最強で最凶な怨霊さんを手懐ける貞子さんの手腕とは一体…改めて相当な実力者なんだと再確認する。


「__________まぁ、聞きたいことはまだ山ほど残ってるけど…今日はもう、疲れたぁー…ハルカ、さんきゅーな。お前とふーちゃんがいなかったら、100%死んでたわ、俺。」


隣に座るハルカに礼を言うと、ハルカは珍しく顔を真っ赤にして照れた様子で俯く。


「ばっ_______何改まっちゃってんのっ!?私は、ライバルが知らないところで私じゃない誰かにやられるのが嫌だっただけだし!」


「そういう事にしといてやるよ。ただ、礼だけはちゃんと言っておきたくてな________お、あれは…幽霊たちか?」


並んだ無数のパトカーの赤色灯の光の中に、疲れた様子ながらもこちらに大きく手を振っている幽霊の姿が見えた。幽霊だけじゃない、悪霊やふーちゃん、アリサの姿もある。ついでに青葉も元気そうだ。みんなの無事な姿を見て、一気に緊張感が解ける。


「…よし、今夜はみんなでどっか飯食いに行くか。俺の奢りだ…!!」


こうして、長くなった『アリサ奪還作戦』の夜は幕を閉じた。

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