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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第11章 オークション編
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VS蛇崩隊Ⅰ

42階を突破した俺たちは、43、44階の非常階段を何事もなく進み、まもなく45階に差し掛かっていた。あれほど激しかった骸の部下による猛攻もピタリ止まり、ここまでの2フロアは敵どころか人っ子一人おらず、何とも言えない不気味な空気が漂っている。


「…ふぅ、やっと45階か。最上階まであと7フロア…このまま、すんなり到着って訳には________いかないよなぁ…」


ほぼあり得ない希望的観測を口にする俺に対し、ふーちゃんが現実を突きつける。


「今までの雑魚は、恐らくただの時間稼ぎなの。ここから上の階のどこかで、『霊攫い』の奴らが待ち構えているの。気を付けるの。」


「…で、ですよねー。」


「安心してくださいご主人さま!どんな敵が来ても、次こそはこの最終兵器である悪霊が蹴散らしてやるのですっ!」


「悪霊、さっきの私の活躍見てなかったの?悪霊の出番は多分ないと思うなーw」


息まく悪霊にまたもや無駄な煽りをする幽霊。

誰のせいでせっかくの作戦がパァになったと思ってんだコイツは。今更なのだが、この無謀な正面突破_______またの名を『作戦B』は、アリサを奪還するにあたって最も取ってはいけない『悪手』なのだ。敵に勘付かれ、準備万端で待ち伏せされるだけが問題では無い。もし今夜アリサ奪還に成功しても、俺たちの『顔』が割れることは避けられない。そうすれば今後、骸のバックにいる暴霊団に命を狙われることになるのだ。一難去ってまた一難どころの話じゃない。


「_______だいじょーぶ。霊攫いなんか、このハルカ様とうちのふーちゃんでぶっ飛ばす。君はアリサちゃんを助け出すことだけに集中すること。いい?」


俺の不安を読み取ったのか、ハルカが声を掛けてきた。


「何だよハルカ、柄にもなく恰好つけたセリフ言うじゃんか。いつもの中二病はどーしたんだよ?w」


「あー!せっかくビビってるライバルを励ましてやろうと思ったのにーっ!やっぱ助けてやんないんだからな!」


こんな風に冗談を言い合っている俺たちであったが、45階へと続く最後の階段の踊り場に差し掛かった時から、全員が『異常』な気配を感じ取っていた。敵に俺たちが勘付いていることを悟られないために、あえて会話をしながら階段を上っていたのだが、俺と会話をしているハルカの頬にも冷や汗が流れている。


「…いる。そこの踊り場を曲がった先の階段のところに…それに________」


小声で呟くハルカに続いて、ふーちゃんが厳しい目つきで背後を振り向きながら呟く。


「私たちの後ろ…下の階からも、気配を消してるようだけど明らかについて来てる。それも複数_______囲まれてるの。」


非常階段で挟み撃ちに遭えば、逃げ場は45階のフロアしかない。だが、エレベーターは止まっており上の階へ行くにはこの階段を昇らざるを得ない。ここは一先ず45階のフロアへ逃げ込むしかないと、全員が目で確認する。


コツコツ________

ゆっくりと慎重に階段を昇る一同。後ろから付いてきている敵も、警戒しているのかすぐに距離を詰めて来る様子はなさそうだが、45階のフロアへと続く扉へ行くには、踊り場の先で待ち構えているであろう敵と対面することになる。


「____________おー、来た来たー。待ちくたびれたよぉー。もぉー、ずっと座ってたからお尻が冷えちゃいましたよぉー。」


間の抜けた喋り方とは正反対に、感情の籠っていない声。46階へと続く階段の途中に、その声の主は気だるそうに座っていた。


「何者だ、お前は…!!ま、敵だよな。聞くまでもないか…!!」


こいつが今までの雑魚とは違うことは、その禍々しいオーラが嫌でも教えてくれる。直感的に分かった、こいつが『霊攫い』だ。


「ったくさぁー…骸さんも酷いよなぁー。ボク、霊攫いの中でも新人ですよー?初めて部隊を任されたのに、その初っ端の仕事でこの非常事態ですよ?勘弁して欲しいですよねぇー、全くぅー。」


身構える俺たちを意に介することなく、淡々と話を続ける丸眼鏡に黒コートの男。

______こいつから感じる異様なオーラは何だ?霊力とはまた違う気がするし、霊を体に憑依させている様子も無い。


「あぁー、ごめんなさい。自己紹介がまだでしたね。えー、コホン。私、霊攫いの『蛇崩ジャクズレ』と申しますー。一応、部隊長やらせてもらってまぁーす。」


ペラペラと勝手に自己紹介をする蛇崩ジャクズレという霊攫い。背後から迫ってきている複数の気配は、こいつの部隊という訳か。


「ねぇ…後ろ…近い…!!」


幽霊がかすれた声で俺の耳元で呟く。俺たちを下の階から追っていた気配が、気付けばすぐ傍にまで迫っていた。ちらりと後ろを伺うと、その距離数メートル。


「はーい、それじゃあ、殺しまーす。みんなー!やっていいよぉー。」


「______________!?」


まるで友人と他愛のない会話をするかのような口調で、命令を下す蛇崩ジャクズレ。一瞬にして背後から複数の影が俺たちとの距離を詰める。その速さは『瞬間移動』と形容しても遜色ないほどだ。


「__________走ってッ!!!!!!!」


ズズズ…ボォゥ______________!!!!!!


完全に虚を突かれた俺とは打って変わり、ハルカとふーちゃんの対応は素早かった。一瞬にしてハルカはふーちゃんと憑依し、目にもとまらぬ速さで辺り一帯に青い炎の壁を作り出す。


「早くっ!!!こっち!!」


「お、おうっ!!すまん!助かった!!!!」


ハルカとふーちゃんが作った一瞬の隙に、一同は45階のフロアへと全速力で逃げ込む。後ろを振り向いている余裕はない。既に炎の壁は突破され、凄まじい勢いで蛇崩の部隊が迫ってきているのが分かる。


「はぁ…!!はぁ…!!このままじゃまずい!ここは二手に分かれるわよ!!どっちかが上の階に行けたら御の字っ、いいね!?」


「ハァ…ハァ‥!!りょーかい!ここが正念場ってことだな!余計なお世話かもしれんが、ハルカ、ふーちゃん…やられるんじゃねーぞ!!」


「そっちこそ!一つ言っておくけど、あの蛇崩ジャクズレって男っ!あいつが一番やばい…!!あいつがどっちを追って来るか分からないけど、もし君のとこに行ったら_________君に、勝ち目はないと思う…!!」


ふーちゃんを憑依させてるハルカが、にやりと笑みを浮かべる。その複雑な笑みを浮かべる彼女の青い眼は、『死を覚悟して』と俺たちに言っていた。


「_______じょ、上等!!幽霊、悪霊!!ついてこい、こっちだ!!」


「こうなりゃヤケだぜー!」「了解なのです!ご主人さま、私たちの恐ろしさ、見せつけてやるのです!!」


通路が左右に分かれたところで、ハルカとふーちゃんと二手に分かれる。大口を叩いた俺だったが、内心『絶対俺の方に来るな』と、ただた、必死に祈るしかなかった。


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