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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第11章 オークション編
165/202

混乱

「状況を報告しろっ!一体何が起こってやがる!!_______うっ…な、なんだこれは…!!」


怒声と共に、霊遮断結界を張る術者達の部屋に入るムクロ。部屋には謎の『白い霧』が充満しており、床には明らかに様子がおかしい術者たちが転がっていた。どの術者の表情も恍惚としており、男女関係なく半裸で体を絡め合っているという、地獄のような光景だ。


「む、骸さんっ!も、申し訳ありません!電気系統の制御室を守っていた警備の奴らも、ここと同じ状況でして…先ほどの停電はそれが原因です!とりあえず、そちらの方は手動で復旧したのですが、結界は我々ではどうすることもできません…!!」


右往左往する骸の部下たち。今夜は警備のプロである『霊攫い』たちの人数が不足しており、制御室の警備は骸の部下がその役割を担っていたのだ。骸は苦虫を嚙み潰したような表情で舌打ちをし、霧を吸い込まないよう、手で口を覆いながら自問自答を繰り返す。


「原因は…この『霧』か?____明らかに霊力で作られた霧…どういうことだ?それじゃあつまり、このフロアに『霊使い』が侵入したってことになるぞ?結界の効力は絶対の筈…どうやって入り込みやがった…!?」


警備が手薄い今夜を狙い撃ちするかのような襲撃_______部下かホテルの従業員に敵が紛れ込んでいた?それとも、霊攫いの中にいたのか_______などと、骸の頭の中で様々な憶測が飛び交うも、今は犯人捜しをしている場合ではないと瞬時に思い直す。


「とにかく、こいつら術者どもを叩き起こして結界を張りなおさせろ!それと、各フロアに散っている霊攫いに連絡して、人員の半分で商品を保管しているこの最上階を守るよう言えっ!」


「は、はいっ!!」


鬼気迫る表情で部屋を後にする骸。今夜これから来る客は既に商品の金を払っている。商品にもしもの事があれば、死んだ方がマシな未来が待っている________冷や汗が止まらない骸に追い打ちをかけるように、またもや部下から報告を受ける。


「大変です骸さんッ!!」


「くそっ…!!今度は何だ…!?」


現れたのは、監視カメラなどの映像を確認する、監視室担当の部下。その表情から、良くない報告であるということを骸は察した。


「ハァ…ハァ…しゅっ______襲撃ですっ!!!現在、侵入者は40階を突破し、41階で交戦中です!!!」


ズゥゥゥンッ__________________!!!!

部下が言い終えるや否や、フロア全体が何らかのすさまじい衝撃によって振動する。


「くっ________何だぁ!?軍隊でも殴りこんで来やがったのかっ!?敵は何人だ!?」


「_______それが…襲撃者は2人!!!男女2名の霊使いです!我々では、まるで歯が立ちません!!!」


「おいおい…冗談だろ?たったの2人…?たかだか、たった二人の霊使いも制圧出来ねえのか!?」


骸が予想していたのは、敵対組織による大規模な襲撃だ。しかし、そんな予想とは裏腹に部下の口から出たのはたった『2人』という、襲撃するには余りにも無謀な数字。そこら辺にいるような、有象無象の霊使いではないのは確かだ。最低でも、暴霊団『幹部クラス』の霊使いによる襲撃。


「骸さん…!!今、無線で連絡が入りました!!41階も突破っ!奴ら、凄まじい勢いで最上階を目指してます!」


「______分かった。何とか時間を稼げ。45階に『霊攫い』を集めて、一気に片を付けてやる。何としてでも、この最上階には辿り着かせるな!」


「は、はいっ…!!む、骸さんはどちらに向かわれるので…?」


部下からの問いかけに、骸は胸ポケットから一つの鍵を取り出しながら答える。


「念には念を…だ。『獄卒霊ごくそつれい』を使う。死にたくない奴は、この最上階に立ち入らないよう言っておけ。」


「ヒッ…!!ごっ…獄卒霊…!!わ、分かりました!」


骸の口から出た『獄卒霊』という単語を聞き、怯えた様子でその場から立ち去る部下。


「どこのどいつだか知らねえが、誰に喧嘩を売ってるのか分からせてやるぜ…!!」


____________________________


一方その頃、41階から42階へと続く非常階段。そこには、『襲撃者』の人間2名とその契約霊3体が、ギャアギャアと言い争いをしながら階段を上っていた。


「おい幽霊っ!お前のせいで、思いっきり敵に見つかっちまったじゃねえか!あれだけ話し合った作戦はどこ行ったんだよ!」


「だ、だって仕方ないじゃん!思ったより停電してる時間が短かったんだもんっ!!実質、『作戦B』ってことでいいでしょ!今のとこ順調だし!」


今夜の『アリサ奪還作戦』は、敵に見つからずに侵入するということが何より重要だった。・・・だったのだが、現在俺たちはこうして、正面突破という無謀な『作戦B』を絶賛実行中だった。


「青葉が起こす停電は1分弱って事前に話してただろ?それを過ぎたらすぐに非常電源に切り替わっちまうことも…!!」


「幽霊は少し太り過ぎなのです。それに、霊体化すればそのブヨブヨのお腹を詰まらせずに済んだのに、なぜそうしなかったのですか?」


俺に続き、呆れた様子で幽霊を避難する悪霊。


「…うっさい悪霊っ!ふ、太ってないし!だって焦っちゃったんだもん!」


本来の『作戦A』の全体像は次のとおりだ。

①従業員に扮した青葉が、『催淫の霧』を使い結界の内側から術者がいる部屋と電気系統制御室を制圧。

②照明の電源を落とし、1分半の暗闇を作る。

③俺たちは、結界が解除&暗闇に乗じて、非常階段から40階に侵入。事前に図面で把握していた、天井裏の配線通路へと身を隠す。

④そこからエレベータ昇降路へと進み、緊急用梯子で最上階へ

______という流れだったのだが、問題は③で起こってしまった。そう、幽霊が天井裏の配線通路へとつながる入り口に、胴体を詰まらせてしまったのだ。すぐに照明が復旧し、駆けつけた敵に見つかってしまい、こうして戦うざるを得なくなってしまった…という訳だ。


「ま、私はシンプルな方がやりやすくて好きだけどねー!ここまで戦った感じ、やっぱり警備が手薄っていう情報は本物だったようだし。」


「油断は禁物なの、ハルカ。あなた達も、ここまでの敵は、はっきり言って雑魚なの。本命の敵は恐らく、ここから上にいるの。」


ハルカとふーちゃんの2人も、まだまだ余裕な様子だ。40階からここまで来るまでに、10数人ほどの敵の霊使いと交戦してきたが、今の俺たちにとって敵ではない。1度も『憑依戦闘』を使わずに敵を退けることが出来ていた。噂の『霊攫い』とやらには一度も出くわしていない。


「分かってるって__________ほら、噂をすれば来たみたいだぞ…!!」


ダダダダダダダダ_________________

上の階の非常階段から、おびただしいほどの数の階段を駆け下りる人間の足音が聞こえてくる。ここまでと違い、かなりのまとまった数のようだ。


「流石に、敵さんも私たちを討ち取る為に本腰を入れてきたってわけね…!ふーちゃん!やるよ!」


「了解なの。」


ハルカとふーちゃんが、憑依戦闘の準備に入る。


「よし、俺たちもやるか。幽霊、ひと暴れするぞ!悪霊は下がってな。」


俺からの指示に、悪霊が不満そうな顔をする。


「えぇー!?ご主人さま!悪霊も戦いたいのです!ここまでも、全部幽霊が戦っているのです!」


「悪霊、お前は俺たちの『切り札』だからな。出番までは力を温存しておいてほしんだよ。それに、こういう近接戦闘は幽霊の方が向いてるしな。適材適所ってことだよ。」


「そ、そうなのですか…?ご主人さまがそう言うのなら、仕方ないのです。」


うまく悪霊を言いくるめることに成功した。実際のところ、悪霊の霊力は強力で特殊なため、使いどころを間違えればこっちまでうっかり全滅してしまう可能性までありうるという代物だ。


「ま、悪霊の出番は無いから指を咥えて見てなって!この2か月の成果を思いっきり見せてあげる!」


ズズズ__________

幽霊はそう宣言すると、霊体となり俺の体にゆっくりと溶け込んでいく。いよいよ、2か月間の修行の成果のお披露目だ。



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