霊攫いⅡ
「まぁ、うちら霊使いの間じゃ有名な集団よね。『霊攫い』。陰湿な連中だよ。」
傍で話を聞いていたハルカが、ふーちゃんに渡した写真を手に取りながら呟く。
「なんだ、その…『霊攫い』ってのは?」
「名前の通りの集団なの。野良霊から霊使いの契約霊まで、金になりそうな霊を攫うプロ集団なの。その実力はかなりのものと聞くの。手練れの霊使いからも霊を強奪するの。」
ふーちゃんに続き、ハルカが見ていた写真をこちらに見せる。
「…この壁に描かれてる模様、霊攫いが良く使う呪詛だね。強制的に霊の所有権を自分たちに移すやつ。あいつらの常套手段ってわけ。」
俺たちが予想していた通り、地縛霊であるアリサをカラオケ店から連れ去ったのは、この壁の模様が原因だったようだ。それにしても、いつになく神妙な表情のハルカ。霊攫いの話になってからずっとこうだ。
「どうしたのハルカ?何かいつもと雰囲気違くない?」
幽霊からの問いかけに、ハルカが『はぁ』と息を吐き答える
「…ちょっと昔ね、霊攫いにしつこくうちのふーちゃんを狙われたことがあってさ。ま、もちろん追い払ったけど!とにかく、関わりたくない連中ってこと。」
「それで…霊攫いの連中は、攫った霊をどうするんだ?自分たちのものにするのか?」
「違うの。さっきも言ったの、金にするの。奴らには、強力な暴霊団のバックがついているの。その暴霊団が主催する『オークション』に『奴霊』として出品するの。」
「どれい…霊の奴隷だから、『奴霊』…そんな酷いオークション、警察は取り締まれないのか?そのために、対霊課ってのがあるんじゃないか?」
「無理なの。オークションには霊使いはもちろん、霊力を持つ政界の大物や裏社会の幹部たちが多く招待されるの。規模が大きすぎて警察じゃ手出しできないし、そもそも霊を取り扱うオークションを禁止する法律はないの。」
「だ、だったら、そのオークションに乗り込んでぶっ潰してやるのですっ!」
息まく悪霊の言葉を、すぐさまハルカが否定する。
「それは、ぜっっったい止めた方が良いよ。バックについてる暴霊団はもちろん、オークションに参加している組織を全部敵に回すことになる。この意味わかる…?」
いつものハルカなら、『その話乗った!一緒にぶっ潰すぞーっ!!』と悪霊に便乗しそうなのだが、今日ばかりは違うようだ。いかにその『オークション』に手を出すことがヤバい行為ということを物語っている。
「…教えてくれてありがとうな。後は俺たちだけで何とかしてみる…それじゃあ…邪魔したな。」
そんな危険なオークションに、ハルカとふーちゃんを巻き込むわけにはいかない。敵が分かっただけでも良しとしないと。オークションに出品されるということは、少なくともアリサに危害は加えられていないはずだが、のんびりしている暇はない。もしかすると明日にでもそのオークションが開催されるかもしれない。早く開催日を特定しないと________危険を覚悟で、『超常現象研究会』と接触してみるか…?暴霊団のあいつらなら、何か知っているかもしれない。
「_____待ちな、契約者っ!このハルカさんが、君らを見捨てるといつ言った?見くびらないで欲しいわ!」
出て行こうとした俺たちの背後から、ハルカの呼び止める声が。
「…えっ、でも、さっきお前『絶対手を出すなって』言ったろ?どうしろって_______」
「馬鹿なの?オークションの運営を敵に回すなと言ったの。堂々と、オークションに参加すればいいだけなの。」
ヒラ_______
ふーちゃんが何か黒い紙のようなものをこちらに投げ、幽霊が掴む。
「…なにこれ。黒い…封筒??」
「中身も黒い紙なのです。なになに…しょうたい_____ご、ご主人さま!これ、『招待状』って書いてあるのです!オークションの招待状なのです!」
黒地の紙には、確かに白い文字で『奴霊オークション ご招待状』と書かれている。
「嘘だろ…なんでハルカとふーちゃんが持ってるんだ?」
「私とふーちゃん、結構名の知れた霊使いなの知ってた?さっきも言ったけど、まだルーキーだった時代にしつこくつき纏ってた霊攫いを追い払ってから、向こうが媚び売ってくるようになってさ。こうやって定期的に『招待状』とかも送って来るってわけ。どうにかして、私たちを抱き込みたいんだろうけど。」
「とにかく、招待状さえあればオークションに参加できるの。それが届いたのは1週間前なの。開催日は明後日。時期的に、君たちが探してるカラオケ店の子も出品されると思うの。」
今までハルカの事をただの戦闘狂だとばかり思っていたが、今日ばかりは頭が上がりそうにない。今の俺が出来うる限りの角度で頭を下げる。
「これで…アリサを取り返せる…!!マジでありがとう!ハルカ、ふーちゃん!!」
「ばーかっ、これは貸しだかんねっ!それに、一度やってみたかっただけだし!ライバルに貸しを作るの。」
「…ハルカの言う通りなの。こんなの、なんでもないの。見返りは、あなたの全てで許してあげるの。」
こうして俺たちは、アリサを奪還すべくオークションに参加することとなった。開催日は明後日、会場は都内でも有数の高層ホテルだ。




