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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第11章 オークション編
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壁の模様

「おぉー!ここがカラオケ!楽しみー。」


「ふふーん。幽霊、どうやらカラオケは初めてなようなので、この悪霊がカラオケの楽しみ方って奴を教えてあげるのです!」


カラオケ店を見上げワクワクした表情の幽霊に、謎のカラオケ玄人っぷりのドヤ顔の悪霊。


「なんだ、普通に営業してるっぽいな。てっきり捜査中か何かで休業してるかと思ったぜ。やっぱ、心配するだけ損だったな。」


件のカラオケ店に一行が到着したのは夕方。平日の帰宅ラッシュ前ということもあり、〇ックエコー駅前店は空いているように見える。一見すると、別段これといった異常は見当たらないが、一応アリサ達の顔くらいは見ておこう。

入店すると、カウンターには見たことのある顔の店員の姿。双子のチェーンソー姉妹の襲撃の夜、カウンターの受付にいた店員さんだ。


「いらっしゃいませー。1名様で宜しかったでしょうか?_____あれ?お客様は確か…チェーンソー少女事件の時の!いやぁー、あの後僕、店の外に出て助けを呼びに行った後に何故か意識を失っちゃって、気が付いたら店の前で寝ちゃって…無事だったんですね!良かったです!」


「あぁー!あの時の店員さん!あの夜はお互い大変でしたね・・・。意識失ったっていうのはたぶん外で見張ってた師匠とヌイに捕まったせいだ…あ、そうそう。ニュースで見ましたよ。強盗が入ったんでしょ?この店に。大丈夫だったんですか?」


「そうなんですよー。強盗って言っても、特に盗まれた訳じゃないですけどね。警察も首を傾げてたらしいっすよ。何しに不法侵入したのか意味不明だって。」


「それは良かったです。それじゃ、前と同じパーティールーム空いてます?確か…44番の部屋だっけか。2時間でお願いします。」


そう伝えると、急に店員の表情が曇る。流石に前回に続いて、男一人でパーティールームを使うことを不審に思われたのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。


「…あぁー、その部屋なんですけども…。今ちょっと使えないんですよね。どうやら不法侵入した奴らが、部屋全体に『落書き』していって、今業者に頼んで清掃してもらう前なんですよ。」


「…落書き?」


「はい。部屋の床とか壁一面に、呪文?みたいな気持ち悪い模様がびっしりと…ホント、いい迷惑ですよね。」


店員の言葉に、ここに来るまでに俺がい抱いていた『嫌な予感』が一気に頭の中で膨らんでいく。44番のパーティールームはアリサの部屋だ。彼女が侵入者に対して、落書きをそう簡単に許すとは思えない。いや、それ以前にこのカラオケ店全体はアリサの『城』だ。不法に侵入する事自体、困難なはず。


「…ちょっとだけ、見せてもらってもいいですか?もちろん歌わずにすぐ帰るんで。」


「え、えぇ。別にいいですよ。今日は空いてますし。あ、帰る時は声かけてくださいね。」


幽霊と悪霊にアイコンタクトを送り、店の奥へと進む。先ほどまではしゃいでいた2人だったが、店員の話を聞いて流石に何かを察したらしい。緊張した様子で俺の後を着いてくる。


「…ご、ご主人さま。気付いていますか?さっきから、このカラオケ店から感じる霊の気配が少なすぎるのです…以前来たときはかなりの数いたのに。」


悪霊が辺りを見渡しながら口を開く。このカラオケ店には、ほとんどのの部屋に野良霊が棲みついている。だが今日はどうだ、悪霊の言う通りその気配はわずかだ。


「…あぁ、明らかに減ってるな。それに俺たちが来たんだ、1体くらい姿を現してきてもいいはずなのに、さっきから静かすぎる…実はドッキリでしたーとか言ってアリサが出て来る…何てことはないよな。」


そんな小さな希望を抱きながら、俺たちはアリサがいるはずの44番の部屋に到着する。


ギィ…


「お、おーい、アリサー、いるかー?俺だ。来てやったぞー…_______うわっ、なんだこれ…!!酷いな。」


「ナニコレっ!きもっ…!!」


幽霊が小さな悲鳴を上げる。

それも無理はない、パーティールームの白い壁一面は、先ほど店員さんが言っていたように、黒い墨のようなもので描かれた『呪文』のような模様でびっしりと埋め尽くされていたのだ。


「…アリサが…!!アリサがいないのですご主人さまっ!」


「こ、ここにいなくても、この店のどこかにいるかもしれない!幽霊、悪霊。手分けして探すぞ!幽霊はアリサに会ったことないから顔が分からないだろうが、とにかく霊に遭ったら知らせてくれ!」


「わ、わかった!」


部屋を出て散らばる一同。片っ端から部屋を見て回るが、どこを探してアリサどころか、ここに棲みつく霊の姿すら見えない。


「アリサ!!______この部屋も駄目か…くそっ、一体どこにいっちまったんだ…?」


アリサ達とは一晩一緒だっただけの仲だが、共にあの双子と死闘を潜り抜けた。このまま何の理由もわからず姿を消されれば、いくら他人に関心が少ない俺でも心配するに決まってる。


ギィ…


「________お、おいっ!アンタはいつぞやの…霊力持ちのにーちゃんかっ!?」


背後の『備品室』と書かれたドアが少しだけ開き、その隙間からある霊が顔を覗かせる。


「あ、あんたは…!!痴漢のおっさんっ!?良かった、やっと霊に遭えた!」


俺だと分かるや否や備品室の扉が全て開かれ、中から多くのこのカラオケ店の住人たちが姿を現す。どうやら全員で姿を隠していたようだ。中には、あのOL風の男嫌いのねーちゃんの姿もあった。


「一体、なにがあったんだ?アリサはどこに行った?」


「…助けてくれっ!!…どうかうちのアリサちゃんを…女王を助けてくれ!!」


俺の足にしがみつき、必死に懇願する痴漢のおっさん。彼に続き他の霊たちも一斉に押し寄せ、助けを求めて来る_______どうやら、今回の事件は想像していた以上に深刻らしい。

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