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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第11章 オークション編
152/202

とあるニュース

「くわぁ~…あぁー…やっぱ夜勤はキツイ…確実に命削ってる気がする…。」


海の家でのバイトから早くも2か月が経過した、ある秋の昼下がり。

空腹で目を覚ました俺は、バイトの夜勤明けの気だるい体を引きずりながら、食べ物を求めてキッチンへと向かった。そこには、エプロン姿の幽霊の姿が。


「あっ、やっと起きた!見てみて!幽霊ちゃんがお昼ご飯を作ってあげたのだ。じゃーんっ」


自慢気な表情で鍋の中身を見せて来る幽霊。


「_______なんだこれ…泥水?混凝土?」


「かっ…カレーのつもりなんですけど!!流石にその例えは酷すぎるんじゃないかな!?匂いで分かるでしょ、匂いで!」


鍋の中には、『泥』としか表現できないドス茶色い粘着質な物体がグツグツと煮えていた。言われてみれば微かにカレーのスパイスらしき香りもしないでもないが、とてもじゃないがカレーとは言えない。


「どう作ったらこんなヘドロみたいな物を生成できるんだよ。カレー失敗するとかよっぽどだぞ?…悪霊、なんで止めなかった?」


リビングのソファーで寝転がり漫画を読んでいる悪霊が、めんどくさそうに答える。


「だって、わたしだって止めたのですよ?でも幽霊が、バイトで疲れているご主人さまに作るんだって聞かなかったのです。いい加減、自分の女子力の無さを自覚して欲しいのです。」


「ちょ、余計な事言わないでよ悪霊っ!も、もういいよ!…失敗しちゃったし、こんなの…食べないよね?ごめんねっ、すぐ捨てるから!」


得意の上目遣いでこちらを伺う幽霊。


「言っとくけど、俺はアニメとかでありがちな『料理下手なヒロインが作った失敗作を笑顔で食べる系の主人公』じゃないからな。そんな悲しげな演技したって無駄だぞ、絶対食わねえからな。あと、食材を無駄にすることは許さねーぞ?自分でちゃんと責任もって食えよ?それ。」


「えぇー!!食べれないよこんなのー!!」


「こんなのってお前…自分で『こんなの』っていうなよ。お前はそれを俺に食べさせようとしたんだぞ?ったく、とんでもない奴め…。」


「ま、いいや。上の階の青葉あおばに食べさせよーっと。あいつ何でも食べるし。」


上の階に住んでいる青葉あおばとは天獄荘での一件以降、このマンションに引っ越してきた住人だ。色々とぶっ飛んでいる彼女だがどうやら味覚もぶっ飛んでいるらしく、我が家で処理できない食材は大体が彼女の元へおすそ分けするのがここ最近の通例だ。ほとんどが幽霊の失敗作料理なのだが。


「…ともかく、昼ご飯だ。おーい、悪霊。お前も準備するの手伝えー。えぇーっと確か、買い溜めしてたカップ麺があったはず。」


「はいなのですー。あっ、ご主人さま!悪霊はラ王がいいのです!高いやつ!」


______________________________


ズズッー


「あぁー…世間はハロウィンかぁ。今年も相変わらず荒れてんのなー。」


「あれ何が楽しいのか全く分かんない。ただ騒ぎたいだけじゃん。わたし人ごみ嫌い。」


「悪霊はちょっと行ってみたいのです!魔女に仮装して、馬鹿どもを蹴散らしてやるのです!」


3人仲良くカップ麺をすすりながら昼下がりのニュースを眺める。画面には、ハロウィンに乗じて渋谷で騒ぐ多くの若者の姿が映し出されていた。それを見て全く興味がなさそうな幽霊と、物騒なことを言う悪霊。


「やめとけ。この辺はともかく、都会の方は他の暴霊団が抗争している爆心地みたいなところだ。しかもこの季節は騒ぎに乗じて変な霊も増えて大変だって、対霊課のサイトウも言ってたぞ。」


対霊課のサイトウとは、退院してからも定期的に連絡を取り合っている。現状、理由は不明ではあるが俺を狙っている超常現象研究会は、危害を加えてくる気配はない。だが他の暴霊団は違う。他の暴霊団のナワバリ、とりわけ都会の方へはくれぐれも行かない様にと釘を刺されている。


「言われなくても私は絶対行かないし。家でごろごろしてる方が全然楽しいもん。」


「まぁ、ご主人さまがそういうなら行かないのです_______あれ、この店って…」


悪霊がテレビ画面に釘付けになる。画面に流れているのは、この地域のニュースだ。そこには見覚えのある『カラオケ店』が映し出されていた。


「…あぁ。あのアリサ達がいるカラオケ店じゃねーか。・・・何かあったのか?」


「ん?なになに?2人とも知ってるの?アリサって誰?」


幽霊だけ何のことだか分からないといった様子。ニュースに映し出されているのは、以前に俺と悪霊が修行の一環で訪れたカラオケ店だ。そこには、『女王霊』という特殊な霊力を持った地縛霊アリサと、その愉快な仲間たちが住み憑いているのだが、ニュースではどうやら強盗が入ったと報道している。


『昨夜未明、〇〇市のカラオケ店に何者かが侵入したとの110番通報があり警察が向かったところ、裏口をこじ開けたような跡があり、警察は器物破損と住居侵入罪の疑いで捜査を進めてます。事件当時、店舗は休店日で店に店員は誰もいなかったとのことですが、警備会社からの連絡で事件が発覚した模様です。店内には機材等がありましたが盗まれた痕跡はなく__________』


一通り事件の概要を説明して、カラオケ店のニュースはすぐに終わった。大した被害も無かったためか、随分あっさりとした内容だった。


「なんだ、特に何も盗まれたって訳じゃないようだな。心配して損したぜ。」


「そうですね。たぶんアリサが追い払ったのでしょう。」


「ねーねー!2人して隠し事やめてよ!わたしカラオケとか行ってないんですけど!誰、アリサって!?」


「幽霊うるさい。たしか幽霊はお菓子の食べ過ぎでお腹壊してこれなかったのです。自業自得なのです。カラオケ楽しかったのです!ねー、ご主人さま?」


悪霊の言葉で更に幽霊に火が付く


「行きたい行きたい!わたしもカラオケ行きたいっー!!」


「あぁー、もう悪霊ー、なんでわざわざカラオケ楽しかったとか言うんだよ…。幽霊がこうなることは目に見えてただろ。ってか、あの時は研究会の双子が襲ってきてカラオケどころじゃなかっただろ。」


「ぜったい嘘だもん!わたしだけ仲間外れにしてるでしょ!私も行きたいーっ!!


必死で楽しくなかったアピールをするも、一度幽霊がこうなってしまっては手が付けられない。スーパーで母親にお菓子を買ってもらうため駄々をこねる子供の如き暴れっぷりだ。こいつまじで精神年齢何歳だよ。


「ったく…わかった、わかった。昼飯食べ終わったら連れて行ってやるよ。ちくしょー、夜勤明けの今日は一日寝ていようと思ってたのに…」


「やったぁー!カラオケだぁー!!」


「全く…ご主人さまは幽霊に何だかんだで甘いのです…むぅー。」


いつもだったらこんなにあっさり幽霊のわがままを聞く俺では無かったが、何となくこの不法侵入者のニュースに不安を抱いたこともあって、アリサ達のカラオケ店へ行くことを決めた。大丈夫だとは思っていても、心の隅っこの小さな胸騒ぎは収まらないでいた。


「…当たるんだよなぁー…俺の『嫌な予感』って…。」


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