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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第10章 海の家編
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おれがあいつであいつが(ry

海亡頭ウミボウズを見事撃退した翌朝。俺たちは、およそ一週間にも及ぶ住み込みバイトの最終日を迎えていた。といっても、藻屑霊の母体である海亡頭ウミボウズを倒した今、今夏はこの海水浴場に危険はないとのこと。なので、今日は特にやることがなく、後は荷物をまとめるだけ______なのだが…非常にまずいことが主人公と幽霊に起こっていた。


「ちょ、ちょっと!!目を瞑って着替えてよ!絶対胸とかみてたでしょ!!」


「は、はぁ!?見てねーし!つーか、見るほどの胸ないだろ。」


_______傍から見れば、朝の着替え時に言い争っているだけに見えるだろう。俺と幽霊の身に何が起こったのか。海亡頭ウミボウズを倒した直後、幽霊との憑依戦闘を解除してから、すぐにその違和感に気付いた。一言でいえば、『入れ替わってしまった』のだ。俺と幽霊の『中身』が。


「はぁ…ったく、朝になっても戻らねーじゃねーか。なんでこう、毎度毎度問題が起きるんだ…。」


ただ中身が入れ替わっただけではない。幽霊の身体に入ってしまったのだが、どういうわけか彼女の体は『霊体』ではなく、憑依戦闘時のままの『生身の肉体』だ。だからこうして、いちいち着替えたりしなければいけない。


「もぉ…全く、ご主人さまも幽霊も朝からうるさいのです。一晩中2人してぎゃあぎゃあ言い合ってたおかげで、悪霊はあまり眠れなかったのです…むにゃむにゃ…」


寝不足な様子で布団から顔をのぞかせる悪霊。

ちなみに、俺と幽霊は昨夜から一睡もしていない。一晩中、元に戻るためにあれこれ試していたのだが、再び憑依戦闘をする事すら出来なくなっていた。


「ど、どうしよ…!!ずっとこのままだったら…嫌だよぉー…うぇーん…」


幽霊(見た目俺)がその場にへたり込み泣き始める。


「幽霊、俺の姿と声で泣きじゃくるのは止めてくれ…キモすぎて見るに堪えん。あと女の子座りもやめろ…吐きそうだ。」


「こっちだって、君の身体なんか嫌だよっ!な…なんか、こ…股間の辺りに違和感しかないし…!!」


「やめろぉ!涙目で頬を赤らめながら、モジモジするのはやめろぉ!」


自分の姿を客観的にみるというのは、こんなにもおぞましい物だとは思わなかった。幽霊の女口調も相まって、より『俺』のキモさが際立って見える。


「______と、とにかくだ。昨晩、師匠は『時間が経てば戻るんじゃね?』とか適当なこと言ってやがったが、案の定朝になっても元に戻る様子はない…元に戻る方法を考える前に、まず目の前の問題を何とかしないといけない…!!分かるか幽霊…?」


「…ど、どーゆーこと?」


「________めっちゃトイレ行きたい…!!もう明け方からずっと我慢してるが、限界だっ…!!」


俺(見た目幽霊)の尿意は、先ほどから限界を迎えつつあった。さすがに、少女の身体でトイレに行くという行為は避けたかったのだが、生理現象には勝てない。


「はぁ!?そっ、そんなの、ダメに決まってるじゃん!!見ちゃいけないところが絶対見えちゃうじゃんっ!変態っ!!」


「何とでも言え…けどもう、無理だ…!!それともアレか?お前はお漏らしプレイがご所望なのか?自分の姿が漏らしている所が見たいとか、お前こそとんだ変態だなぁ!!」


「だ、誰がそんなの見るか!______あっ!ちょっと!私まだトイレ行って良いって言ってないんですけどっ!!」


幽霊と言い争っている場合ではない。すでに尿意は破裂寸前まで秒読みが始まっていた。幽霊の制止を振り切り、前かがみになりながらトイレへ向かう。


「どけぇ!!幽霊!俺の姿で掴みかかって来るな!キモい!!」


「いっ、行かせるもんか!この変態っ!!」


脚を掴み、意地でもトイレに行かせようとしない幽霊。


「離せ幽霊っ!そ、そんなに強く掴んだら_________________あっ…」


突然、虚無の表情になったのを見て幽霊が咄嗟に掴んでいた手を離す。


「ひっ…!!う、嘘でしょ!!ま、まさか…漏らし…た…の‥??」


「…馬鹿め、騙されたな!誰がこの年になって漏らすかよ!じゃあな、幽霊!俺はトイレへ向かうぜ!」


幽霊が手を離した隙に、一気に距離を離すことに成功する。自分が騙されたことに気付き、怒りに震える幽霊。


「だっ、騙したなぁーー!!!このおおおおおおおっ!!許さん…許さんぞぉ!!」


「この階段を下りればトイレはすぐ…!!ん?おい、幽霊!やめ____________」


ドガッ!!

背後から幽霊の飛び蹴りが炸裂し、2人一緒に階段から転げ落ちてしまう。


「落ちるっ______うわああああああ!!!」「きゃああああああ!!!」


____________________________________


1時間後。


「おー、お前ら。どうやら元に戻ったようだな。言ったろ?時間が経てば元に戻るって。…まぁ、憑依戦闘が解除できなくなるっていうのはよくある話だが、中身が『入れ替わる』ってのは見たこと無いがな。」


海の家の前に、荷物をまとめて集合する一同。やつれた俺と幽霊のを見て、師匠が呆れた様子で声を掛けて来る。


「…あぁ、おかげさまで何とか元に戻れたよ…時間経過が、戻れた要因かどうかは怪しいけどな…。」


「もうホント…疲れたよ…『また』漏らすかと思った…早く帰って寝たい…」


「ん?また?どういうことだ幽霊?」


「なっ、何でもないし!聞き間違いじゃない!?」


2人して階段から転げ落ちた結果、俺と幽霊の中身は無事元に戻ることが成功した。階段から落ちて解決という、どこかの映画で観たことあるような展開だが、おかげで幽霊は無事トイレに行くことが出来たのだった。


「ふっ、いくら霊力が無尽蔵といっても、憑依戦闘はまだまだのようだな!w」


ヌイがどこか嬉しそうな顔で煽ってくる。


「何はともあれ…長いようで短い一週間だったな…最後までずっとドタバタしてたが。」


盆の季節が過ぎた海水浴場は客の姿もまばらだ。吹き寄せる潮風も心なしか涼しく感じ、秋の気配を感じさせる。


「むふふ。それよりご主人さま!『報酬』がっぽりなのです!家に帰ったらパーティーしたいのです!!」


満面の笑みの悪霊が手に持つ封筒には、この海の家でのバイト代がぎっちりと詰まっている。ちなみに、海亡頭ウミボウズの討伐ボーナスは、ヌイと折半した。


「悪霊、お前がどうしてもそれ持ちたいっていうから持たせてるが、絶対に落とすなよ?…それじゃあ、師匠、ヌイ。色々と言いたいことはあるが、世話になった。」


色々と騙されたりもしたが、この海の家のバイトで2人がいなかったら、レベルアップする事は出来なかっただろう。


「は?なーに改まってんだ?気持ち悪ぃ。俺はヌイの修行に来ただけだぜ?」


「ふんっ、言っておくが、あのタコを倒せたのは、このヌイ様の活躍があってこそだからな!そこのとこ覚えとけよ!…じゃー、またな!」


若干照れた表情を浮かべながら『またな』というヌイ。次会った時、果たしてこの二人は敵なのかそれとも味方なのか、全ては研究会のボスである『キサキ』次第だ。


「______そんじゃ、俺らも我が家へ帰るとしますか。そういや、クーラーの修理業者が午後に来る予定だ。早く帰らねーと。」


「ねーねー!お金もあるし、今日はパァーっと豪華な晩御飯にしようよ!」


「悪霊は、エアコンを買い替えたほうが良いと思うのです!最新のやつに!」


「…お前らの願いを全部叶えてたらあっという間に借金地獄になりそうだな。貯金だ!貯金!」


「「えぇー!!」」


幽霊と悪霊のブーイングを浴びながら、こうして俺たちは家路へ向かうのであった。

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