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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第10章 海の家編
150/202

タコ

「…し、師匠さん、あの子たち何かするみたいですよ!」


「おう、かよっち。俺もしっかり見てるぜ。さて…どうやって海亡頭ウミボウズを狩るつもりだ。苦し紛れに悪霊と憑依戦闘を試すのか?それとも、諦めて俺に泣きついてくるか______ん?」


ブォォォォォォォンッ______!!!

師匠の目に映ったのは、激しいモーター音を響かせながら海亡頭ウミボウズへ向かって一直線に進む水上バイク。


「嘘だろ…?あ、あれは…俺の水上バイクじゃねーか!!ヌイの奴、キーを渡しやがったな?あいつら勝手に使いやがって…!!傷一つ付けてみろ…ただじゃおかねぇーぞ!!」


怒りによって、師匠の双眼鏡を持つ手が震える。それも無理はない。あの水上バイクは師匠が今夏の為に買った新車なのだ。その値段、最新モデルでもあるため200万は軽く超える。


_____________________

そんな怒りに震える師匠の事などつゆ知らず、海亡頭ウミボウズの触手蠢く月光に照らされた夜の海へ、猛スピードで突き進む主人公。3人乗りの後部座席に座っているのは、幽霊と悪霊だ。


「うおおおおお!!速えええっ!!!お前ら!しっかり掴まれよ!スピード上げるぞ!!」


ブォン!!!ブォォォォォォォンッ______!!!


「すっごーーーい!!師匠のやつ、こんないい乗り物独り占めしてたなんて!風気持ち良いーーーーー!!」


「ご主人さまっ!こういう時は、『北〇の拳』に出て来る敵みたく、『ヒャッハー!!』と叫べばいいのでしょうかっ!?」


悪霊が何を言っているのかいまいちわからないが、とにかく2人ともテンションが上がっているということは確かだ。


「おいてめーら!!くれぐれも!もう一度言う!く・れ・ぐ・れ・も!それを壊すんじゃねーぞ!?それは師匠のなんだからな!」


ケモミミモードで海面を俺たちと並走するヌイが、口を酸っぱくして忠告を繰り返す。


「分かってる分かってる。そろそろ、触手の射程範囲内の海域に入るぞ!ヌイ、後は作戦通りにいくぞ!いいな!」


「…め、命令するなっ!__________そっちこそ、タコなんかにやられるなよ。」


そう言い残し、海亡頭ウミボウズの触手の射程圏外ギリギリで留まるヌイ。俺たちはそのまま射程圏内に入り直進する。


ズルズルズル_________

圏内に入った瞬間、海中から無数の巨大な触手がニョロニョロとその姿を現す。いくら小回りが利く水上バイクであっても、あの巨大な触手の攻撃を回避するのは困難だ。避けることは出来ても、海面に叩きつけられた衝撃で発生する波で簡単に転覆してしまう。そこでまず、触手群を『空中』へ誘導する。


「悪霊、手筈通り頼むぞ!派手に打ち上げろっ!」


「了解なのですっ!!!」


ズズズ…

合図とともに悪霊は、背負っていたリュックから大量の『打ち上げ花火』を出し、ポルターガイストで自分の周囲に浮遊させる。あっという間に水上バイクの周囲は花火だらけとなった。そう、これは師匠が海亡頭ウミボウズを釣るために用意した花火だ。


「そしてぇ~……点火っ!!たーまーやーーーーーーっ!!!」


ヒュー___________パパパパパパァァン!!!!!

一斉に夜空に向かって打ちあがられた花火は、凄まじい破裂音とともに無数の花を咲かせる。その数、およそ数十発。打ち上げ花火だけでなく、普通の手持ち花火も一緒にポルターガイストで打ち上げているため、もはや市販用とは思えないほどの光量だ。


「よし、これだけの光なら___________」


ニュルルルルルッ!!!!!!

夜空に打ち上げられた花火に向かって、全ての触手が我先にと一斉に飛びかかる。光に誘われて反応するという海亡頭ウミボウズの習性、これを生かし全ての触手を空中の一か所に集めることに成功する。


「今だヌイ!!頼むぞ!!」


ヌイが後方で待機していた理由、それは『一撃で全ての触手を断ち切る霊力』を溜める為。打撃を吸収する触手には、ヌイの爪の力が必要だ。


メキッ…_______ザワザワザワ___________!!!!


「うっ…ぐっ……グルルルルルルル……____へへっ、ここまで限界まで霊力を高めたのは初めてだぜ…化け犬!やるぞ!」


(「アァ、ヌイ。」)


「タコめッ…ヌイさまの爪の味、とくと味わえっ!!【神戌乃爪カムイノソウ】っ!!!!!」


ザンッ_______________

ヌイの両手から放たれた10の斬撃は、瞬きをし終えないうちに20を超える触手を完膚なきまでに切断した。切断された触手は、斬られたトカゲのしっぽのごとくうねうねと悶えながら、無残に海へ落ちていく。


「やったぁー!!!あの忌々しいタコの足がなくなった!」


「ヌイ、すごいのです!!!」


歓声を上げる幽霊と悪霊。それを聞いたヌイは、やり遂げたと言わんばかりの表情を浮かべながらニヤリと笑う。ケモミミモードは解除され、海面に浮かぶのがやっとだ。


「はぁ…はぁ…ど、どう…だ…すげーだろ…!!ちくしょー…霊力がすっからかんだ____あとは任せたぞ…!!」


「ありがとよ、ヌイ。あとはこっちの番だ!」


海亡頭ウミボウズが反応するものは『2つ』ある。一つは、『光』。そしてもう一つ、それは『霊力』だ。先ほど、砂浜で奴の触手攻撃を受けた時、ただ闇雲に攻撃していなかった。明らかにこちらの動きを先回りしていた。『目』が無いのにどうしてか。答えは単純、憑依戦闘状態で高まった幽霊の霊力を感知して攻撃していたのだ。


「さぁ、『腕』が無くなっちまったんだ。だったら、後は『本体』が出て来るしかないよなぁ______幽霊、憑依戦闘だ!」


「やっと出番がきた!本体を直接ぶんなぐってやる!」


ズズズ___________

霊体となった幽霊が、俺の体に溶け込むように入ってくる。同時に俺の身体は幽霊の身体へと変化する。この憑依戦闘状態の強い霊力で、海中に潜む本体を、海上へ誘うのだ。


「あれ…?な、なんかっ!今までと感覚が…全然違うような…!!」


(「ん?どうした?幽霊__________うぉ!?動かせる!体が動かせる!!」)


今まで俺はただの思念体で、体の主導権は幽霊にあったが今は違う。幽霊が思うように体は動くと同時に、俺が思うように体が動く。まさに、一心同体だ。


「わっ、わわわっ!!何この感覚っ・・・!今まで私だけで動かしていたのとは、まるで違う!」


(「感覚だけじゃない…!霊力の質も________おっと、驚くのはここまでにしようぜ。『本体』のお出ましのようだ。」)


ゴゴゴゴゴ……!!!

重低音を響かせながら、目の前の海面がゆっくりと大きく盛り上がり始める。何十匹もの藻屑霊も一緒に姿を現すが、そんなもの今はどうでもいい。『本体』を叩くのみだ。


「は、はわわわわ・・・で、デカすぎるのです…!!」


「うーわー…もろ『タコ』じゃん。なんだよー、もっと見たことない顔、期待してたのに。」


(「絵にかいたような『タコ』だな。ま、そう文句言うな。ヌイのおかげで本体の顔が拝めたんだぞ。こっちも、一撃できっちり終わらせるぞ。」)


やはりというか何と言うか、海亡頭ウミボウズの本体の見た目は明らかに『タコ』そのもの。だがその巨体はまるでビル並みの大きさだ。だが、触手がなくなった今それはただの巨大な的。


「それじゃ________」


(「とっとと終わらせるか________」)


ブオォオオオオオオッッ!!!!!!!!!!!!!!

低い唸り声と共に巨体を動かし、俺たちを押しつぶさんとばかりの勢いで迫って来る海亡頭ウミボウズ。それを水上バイクに立ち迎え撃つ。


「ごめんね、きみに恨みはないけど…ボーナスの為!!!…ついでに人命もっ!!」


(「…人命はついでかよっ!!」)


ゴッ______________ズッパァァァァァンッ!!!!!!!!!!


予告通り、まさに一撃のただの『殴り』で海亡頭ウミボウズの巨体には大穴が空いた。肉片が降り注ぐ中、その光景を間近で見ていた悪霊がぽつりとつぶやく。


「…当分、タコは食べれそうにないのです…おぇぇ…」

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