WAVE3~海亡頭~
「こ、こんなの、どうやって倒せばいいのっー!?」
ズルルルルル…ズバァァァンッ!!
砂浜の地形が変わってしまうほどの凄まじい威力で、次々に襲い掛かって来る無数の巨大な触手群。憑依戦闘モードの幽霊は赤い髪を激しく揺らしながら、驚異的な身体能力とスピードで触手を躱しているものの、海亡頭にダメージを与えることが出来ないでいる。
(「幽霊、気を付けろ!一斉に来るぞ!!こいつ_____だんだんこっちの動きを先回りして攻撃してやがるっ・・・!」)
シュルシュルシュル________ズガガガガガガ!!!!
数十本触手が一斉にこちら目がけて振り下ろされる。砂浜に突き刺さった触手目がけて、幽霊が全力で蹴りを喰らわせるものの、効いている気配はない。
「だめ!ニュルニュルしてて、攻撃が受け流されてるしっ!________ったく、何本あんのよ!この触手!タコなら8本じゃないのっ!?」
(「8本どころか、15…いや、下手したら20本はあるぞ…マジもんの化け物だ…。こいつ、怪獣映画とかに出てくるやつだぞ?こういうの相手にするのは軍隊の仕事だろ!一旦引いて、作戦を立て直した方が________」)
「うっさいなぁっ!!私が戦ってるんだから黙っててよっ!」
俺の呼びかけに、聞く耳をもたない幽霊。
これだけの数の触手だ、沖の海中にいる本体は全長数十メートルとか、そんな次元のデカさだろう。海亡頭を倒せばボーナス100万円だったが、桁を一つ足してもまだ釣り合ってないと思えるほどの怪物具合。
_______一方、海上。
憑依戦闘でケモミミモードのヌイは、襲い来る触手を躱しながら高速で海面を駆けていた。
「_____ぜぇ…ぜぇ…よ、よし!あいつらが砂浜でほとんどの触手のタゲ取ってくれてるおかげで、こっちへの攻撃は薄いぞ!今のうちに、本体を叩いて…ボーナスはこのヌイさまが頂くっ!!化け犬っ!そろそろ本体だ、全力で行くぞ!」
(「…ワカッテイル。ギリギリマデ、レイリョクヲアゲルゾ。」)
「____うっ・・・ウゥ…!!!ガルルルルッ…!!!」
ズズズ…!!!メキメキメキッ_____!!!!
ヌイの纏う霊力が一気に上昇し、ざわざわと毛が逆立つ。同時に爪と牙もさらに鋭く尖り、より『獣』へとその姿を変化させる。
「_______今の私が出せる、最大出力での斬撃…!!水の上から真っ二つにしてやるっ!」
ザンッ!!!!!
過去最大の威力でヌイの爪から放たれた斬撃は、海亡頭の本体がいるであろう、海中目がけて一直線に空を裂く。
「いっけえええええ__________なっ!?」
ザシュッ!!!
「________キシャアアアッ!!!」
突如、海中から出現した無数の藻屑霊が、幾重にも重なりあってヌイの斬撃を止める。
「こいつ、子を盾にして______!?くそ、これじゃあ斬撃が届かないっ…きゃっ!?」
ニュルルルッ_____ガシッ!!
触手のうちの一本がヌイの足を掴み、宙に投げ出される。必死に抵抗するも、ぶんぶんと振り回され、一気に砂浜へと飛ばされる。
「ぬわぁぁぁぁぁぁ________っ!?」
「えっ!?ちょ、ちょっと!!嘘でしょ…こっちに何か飛んでき________ヌイっ!?」
(「幽霊っ!避けろぉぉぉっ_______!!!!」)
ズッシャァァァン!!!
海亡頭が投げた先は、砂浜で触手と戯れていた幽霊。見事、ヌイミサイルは幽霊に命中し、二人は仲良くまとめて吹っ飛ばされる。
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そんな悲惨な幽霊たちの戦闘を、師匠は少し離れたところから様子を伺っていた。
「…あーらら。酷いなー、あれは。まるで連携ってもんが取れてねーわ。」
「あの子たち、だっ、大丈夫でしょうか‥?かなりの勢いで激突してますけど…。」
かよっちが、あわあわしながら心配そうに師匠に問いかける
「あぁ、あれくらいなら大丈夫だ。マジでヤバくなったら俺が止めるさ。にしても______あいつら、潜在的には海亡頭なんか圧倒できるくらいの霊力はあるんだが…如何せん、憑依戦闘を使いこなしてないんだよなぁー。勿体ない。」
「…悪霊に、何か出来ることはないのですか!?」
主人に待機を命じられ、師匠たちと一緒に眺めることしかできない悪霊は、居ても立っても居られないといった表情をしている。
「お前、悪霊といったか?…やめとけ。海亡頭の触手は、例え霊体でも押しつぶす。てめーが主人との憑依戦闘を完成させているならまだしも…今行ったところで足手まといになるだけだぜ?」
師匠の言葉に一瞬黙りこくる悪霊であったが、すぐさま何かを決心していたように再び口を開く。
「______そ、それでもっ!」
「ん?」
「…あ、悪霊は…ご主人さまの霊なので、やっぱり傍を離れるわけにはいかないのですっ!幽霊のバカに任せてられないのです!」
そう言い残し、主人の元へと走る悪霊。その後ろ姿を見送りながら師匠は呟く。
「…随分と懐いてるじゃねぇーか。…どう思う?かよっち。」
「そ、そうですね…悪霊さんの霊力は、間接攻撃型。彼と完全な憑依戦闘が出来れば、『あの程度』の海亡頭、砂浜から手を触れずに倒すことも容易でしょう。しかし_______」
「_____そう、初っ端から完全な憑依戦闘は無理だろうな。出来てもせいぜい、『今の幽霊』程度だろう。さて、どうするか見物だな。」




