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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第10章 海の家編
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WAVE2

海の方を見ると、少し沖で苦戦している様子のヌイの姿が。その表情には、あれほど余裕だった初日の面影はない。肩で息をしながら数匹の藻屑霊を相手にしていた。


(「おいおい、ヌイの奴昨日は余裕だったじゃねーか。WAVE1からWAVE2になっただけであれだけ藻屑霊の強さに差が出るのか…!?」)


「み、見てくださいなのです!藻屑霊、初日のガリガリじゃないのです!」


悪霊の言う通り、藻屑霊の姿は大きく変化していた。体格は一回り以上に大きくなり筋肉質になっている。それだけじゃない、WAVE1の時は大きく裂けた口だけだった顔面には赤く血走った目があり、より人間に近い顔になっている。


「ちっ、寄ってたかりやがって…!!切り裂いてやる!!」


ザンッ!!ザシュッ!!!!

ケモミミと尻尾を揺らしながら、爪で斬撃を飛ばすヌイ。数匹の藻屑霊に命中する。


「へへっ!どーだ!思い知ったか!_____________なっ!なにぃ!?」


「……キシャシャァ!!!」


ヌイの斬撃によって腕や足を吹っ飛ばされた藻屑霊たちであったが、驚異的な再生力ですぐさま再生してしまう。


「くっそぉっ!!一旦距離を取って、一匹必殺でいくしかないかっ…!!」


ザッパァァンっ!!!!

海面を蹴り上げ弾幕を張り一旦引くヌイ。


「ヌイの奴、去年はWAVE1ですらやっとだったからな。今年は憑依戦闘をかじってどこまで行けるか見ていたが…やっぱWAVE2で一杯いっぱい、か。どうする?お前らが参戦しないなら、おれとかよっちでヌイの手助けに行ってくるが?」


あくまで今回の藻屑霊狩りはヌイの修行が目的であり、ヌイの限界まで手出しはしないスタンスの師匠。

師匠の奴、初日には『戦闘向きじゃない』とかいいながら、やはり本気出せばあの藻屑霊を一掃できるほどの霊力は持っているのだろう。『ひょっとこ』を倒しているのだから、それも当たり前か。


「待って!ここで師匠があいつら全部倒しちゃったら、報酬も全部持って行っちゃうんでしょ?あの程度なら、今のこのスーパー幽霊ちゃんなら余裕で倒せるし!」


そう言い残し、一気に海へと走っていく幽霊。


(「お、おい待て幽霊!」)


「なに?私が負けるっていうの?だいじょーぶだって!見た感じ、昨日のおかめ男より断然弱そうだし!」


(「そーじゃなくて________」)


「うおおおおおおっ!!!_________あれっ!?」


バシャーーーン!!!

思いっきり海水に足を取られて、顔面から派手に海に沈む、自称スーパー幽霊ちゃん。


「ゲッホっ、ゲッホっ!…な、なんで!?ヌイみたいに、海面走れると思ったのに!!」


(「そう簡単に、人間が海面を走れるかよ…予想通り過ぎる展開で逆に怖ぇ。」)


師匠がヌイが海面を走れる理由を説明する。


「ヌイの憑依戦闘は特別だからな。人の霊との憑依とは違って、あいつは獣との憑依だ。爆発的な脚力で海面を走ることを可能にしてる。お前らみたいな『超近接戦闘タイプ』じゃあ、海での戦いは無理だなw」


「じゃ、じゃあ、なんかこう、手からかめは〇波的なやつ出す!」


幽霊は、殴る・蹴るといった超近接戦を得意とする霊だ。たとえ憑依戦闘によって凄まじい霊力を手に入れたとしても、かめは〇波的な遠距離技は使うことが出来ない。かと言って、いくらなんでも泳ぎながらの戦闘も難しい。水中では幽霊の打撃の威力も、半減どころの話ではない。


「ふふふ…そろそろ、この悪霊のターンのようですね、幽霊!さぁ、はやくご主人さまとの憑依を解除するのです!」


幽霊に交代を要請するワクワク顔の悪霊。たしかに、ポルターガイスト系の遠距離攻撃を得意とする悪霊なら、憑依戦闘が成功すればこの砂浜からの攻撃も可能となるだろう。


「い、いやだね!せっかくのスーパー幽霊ちゃんなのに、このまま役立たずで終わるわけには____」


「どうすんだー?早くしねーと、ヌイの防衛ラインを突破した藻屑霊が、そろそろ一般客の遊泳エリアにまで来ちまうぞー?」


師匠の言う通り、ヌイとの戦闘を掻い潜った藻屑霊が2、3匹こちらに猛スピードで迫ってきている。


(「おい幽霊、意地張るなって!どうやったって、お前じゃここから沖への攻撃は届かねーんだぞ?出ていく気がないんじゃ、強制的に解除するぞ!」)


強制的に憑依戦闘を解除しよとした、その時。


コロコロコロ…コツン。

「すみませーん!ボール取って貰えませんかーっ!」


近くでビーチバレーを楽しんでいた女性客のボールが転がって来て、幽霊の足元に当たる。


「…バレーボール…そうだっ!!」


「ありがとーございまー…えっ?」


困惑するボールの持ち主を無視し、おもむろにボールを拾い上げ、海に向かってサーブを撃つ構えを見せる幽霊。


「せぇーのっ!!!とりゃあぁぁぁぁぁ!!!!」


ズバァァァンッ!!!!!!

幽霊から放たれたボールは、こちらに接近していた藻屑霊たちに命中し激しい波しぶきとともに消し飛ばす。


(「な、なんつー威力だよ…でもこれなら、ここからでも藻屑霊に攻撃できる…!」)


「お前らって奴は…憑依戦闘でジャンプサーブ撃つ奴なんて初めて見るぞ?…全く、いつも想像の斜め上を超える連中だ。」


呆れ顔で呟く師匠。


「よっしゃー!どんどんボール持ってこーいっ!」


____________________________

と、まぁこんな具合で、永遠と砂浜からジャンプサーブを撃つ固定砲台と化しているという訳だ。

『憑依戦闘を完全なものとする』という当初の目的はとうに忘れ、今ではすっかり目先の報酬の為の殺戮サーブママシンそのもの。


「はぁ…はぁ…さすがにサーブ撃ちすぎて肩上がらなくなってきちゃった。…けど、今日もほとんどの藻屑霊を駆除してやったわ!どーよ、ヌイ!今日も討伐数は私の方が上なんじゃないの!」


「この脳筋め…!!明日は、明日こそは絶対に勝つ!」


疲れた様子で海から上がってくるヌイ。この2日間、WAVE2の藻屑霊相手に討伐数を競っている幽霊とヌイだったが、2日間とも幽霊の圧勝だ。ヌイも少しずつ数を伸ばしてはいるものの、力に物を言わせた幽霊のサーブの前には遠く及ばない。


(「日も沈んできたし、もう今日は終わりか。幽霊ー、解除するぞー。」)


ズズズ_____

憑依戦闘を解除し、幽霊の体から俺の体へと元に戻り、幽霊も本来の霊体の姿へと変化する。


「…10時間ぶりにやっと自分の体が戻って来た。長い時間幽霊に体取られていると、ときどき自分の方が霊なんじゃないかって思うようになっちまった…。」


「…ふぅ。今日も働いたわー。感謝しなさいよね、あんたは思念体で見ているだけでバイト代が手に入るんだから!」


「へいへい。ありがとうございます幽霊さん______はぁ…果たして、このままでいいんだろうか。何か違う気がするんだが。」


「ご主人さまー!見てください、砂の城作りもここまで来たのです!明日は絶対完成させるのです!」


「おー、すげーすげー。」


やることがない悪霊は、師匠とかよっちと一緒に一日中城作りに没頭している。本来であれば、悪霊とも憑依戦闘を試してみるべきなのだが。


「今日の晩御飯は何かなー♪あ、その前に今日の分の報酬貰わないとだねー。ふふふ、今日はヌイに何円差をつけてるかなーw」


「ぐぬぬ…ムカつく奴だ!今に見てろー…!!師匠!幽霊の奴、ちょーしに乗ってます!!何とか言ってやってくださいよー!このままじゃ、あいつらにバイト代持っていかれる!」


悔しがるヌイの頭にポンと手を置き、不敵な笑みを浮かべる師匠。


「落ち着け、ヌイ。お前は去年の夏は見てないから知らないだろうが…そろそろ【WAVE3】だ。あいつらも身をもって知るだろうよ、『海の怖さ』って奴をな。」


さっさと宿泊している自室へと引き上げていく俺たちに、そんな師匠の言葉は届いていなかったのだった。




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