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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第10章 海の家編
144/202

固定砲台

海の家でのバイト4日目。本日も天気は快晴。ぎらつく太陽の下、ビーチでは多くの海水浴客でにぎわっていた。そんな中、砂浜から水着姿で真紅に染まった髪を揺らしながら天高く『バレーボール』を投げる少女の姿。


「食らえっ、幽霊ちゃんのスーパージャンプサーブ!!_____うりゃぁぁっ!!!」


ズバァァァンッ!!!!


凄まじい打撃音とともに幽霊(憑依戦闘モード)から放たれたジャンプサーブは、海に向かって一直線に弾丸となって飛んで行く。標的はもちろん、『藻屑霊』。霊力を纏ったボールはどんどん加速していく。


ドッパァァァンっ!!!


「______ッギシャァ!!??」

着水したボールは、藻屑霊数匹をまとめて吹っ飛ばし数メートルもの水しぶきを作った。後には海面にプカプカと浮かぶ彼らの無残な残骸。


「____ぷはぁっ!!はぁ…はぁ…おいテメェ!!今のサーブ、絶対こっちに向かって撃っただろ!?殺す気か!!」


藻屑霊の死骸が浮かぶ海面の中から、ケモミミモードのヌイが激怒しながら顔を出す。


「ごめんごめんwちょっと力入れ過ぎて軌道がずれちゃってさー。わざとじゃないってー!!」


「絶対わざとだ…くそ、あのチート脳筋女め…とんでもない殺人サーブ撃ちやがって_____」


海に浮かびながら、辺りを見回すヌイ。次第に蒸発していく死骸を見ながら唇を噛み締める。

_______これほどの数の【WAVE2】の藻屑霊を駆除するのか!?今の私では一度に2~3匹相手をするのでやっとなのに…これが、極霊力の力…!!くそ、負けてられねぇ!!


「…化け犬っ、師匠が見てる前でアイツに負けるわけにはいかねー。こっちもどんどん狩るぞっ!」


(「ヌイ…ワカッタ。ケド、ムリハスルナ。」)


「…これくらい、余裕だっつーのっ!いくぞっ!!」


同化している化け犬が心配そうにヌイに語り掛けるも、闘争心に火が付いている今の彼女には届いていない。更に霊力の出力を上げ、藻屑霊の方へ向かっていくヌイ。


「お、ヌイのやつ張り切ってるな!こっちもまだまだ行くぜー!!」


ノリノリな様子で再びボールを構える幽霊。そんな彼女を、脳内から思念体としてただ見ていた俺はふと思った。


(「俺、やることなんも無ぇー…。つーか、なんでこんな固定砲台みたいなことやってんだっけ…。」)


この状況に至るまでを説明するには、廃屋敷での一件の翌日まで遡る必要がある。


_______________________

二日前。

昨夜の砂浜でのBBQで師匠から他の暴霊団の話を聞いた俺は、いちはやく憑依戦闘をより確実なものにする事を考えていた。まずは、屋敷での幽霊との憑依戦闘で起きた現象を再確認する必要がある。そう、幽霊の『生身』の体の生成と、俺が何故か思念体となってしまうことだ。


「つーわけで、師匠。今から俺と幽霊で憑依戦闘をはじめるから、ちょっと見てくれないか?」


本日も弟子であるヌイに藻屑霊の駆除を丸投げし、自分はかよっちと2人で砂のお城作りに勤しんでいる師匠に声を掛けてみる。


「_____は?おいおい、BBQはいくらでも食わせてやるが、そこまでしてやる義理はねーぞ?舐めてんのか?俺は今、かよっちと城作りで忙しいんだ、他を当たってくれ。」


「こ、こちら側の土台部分は完成しました!次は正門部分ですね!」


楽しそうな様子のかよっち。それにしても異常なほどハイクオリティーな砂の城。この作業を見るだけで丸一日潰せそうだ。だが、ここは食い下がるわけにはいかない。


「…いいんですかぁー?師匠さーん。おたくのボスに、色々あることない事言っちゃいますよぉー?ねぇ、悪霊。」


「はい、幽霊さん。そうですねー。例えば、大事なご主人さまを殴ってたーとか、ご主人さまの力を独り占めするために、色々悪い事企んでるー、とかなのです!」


幽霊と悪霊の言葉を聞き、青ざめる師匠。たとえ全てが嘘でも、研究会のボスであるキサキの耳に入れば良くない事態になるのでは?と、予測したのだが、効果は予想以上のようだ。


「お前ら…俺を脅迫すんのか?くそ、キサキさんの名前出すとか卑怯だぞ?てめーがあの人に気に入られてさえなけりゃ、この場でボコボコにしてやるのによぉ…!!」


「そう怒るなって。憑依戦闘に詳しそうなの師匠くらいしかいないんだ。ただ見て、感想言ってくれればいいから。お願いします!」


こうして快諾してくれた師匠の前で、いざ幽霊との憑依戦闘を開始する。


ズズズ________バチバチッ________!!

幽霊が俺の体に憑依し、数秒後。昨夜と同じように俺の体は真紅の髪の幽霊の体となる。


「…んっ_______これこれ!!私の体っ!そして溢れる霊力っ!どーよ!」


(「んで、相変わらず俺は思念体か…体の主導権は幽霊のまま…。」)


驚いた表情でこちらを見る師匠。


「とんでもねぇ霊力…!!とんだチート野郎だぜ、生身の体まで生み出しちまうとは…!こんなケースの憑依戦闘は見たことねーぞ…!?どうりで、お前らだけで『おかめ』を倒せた訳だ。だが______」


「ん?『だが』?このパーフェクトな幽霊ちゃんに何か問題でもあるっていうの?いや、無い!」


(「幽霊、お前この状態になったら普段よりウザさが5割増しになるのな…。」)


「たしかに、すごい霊力だが…それは完璧な憑依戦闘じゃねぇな。完成された憑依戦闘は、完全な人格の『同化』だ。お前らの状態だと、そうだな、例えると『素人が高級食材を使って作った料理』だな。」


「…な、何それ。分かりづらっ!」


(「おい幽霊、お前昨日は、『すっごい燃料ですっごいエンジン動かしてる』とか何とか言ってなかったか?師匠、全然逆なこと言ってるんじゃねーか?」)


「だ、だって、わたしはそう思ったんだもん!」


師匠の言いたいことはつまりこういうことだ。いくら素人でも、高級食材を使えばどんな料理でも旨い。旨いが、それは高級食材を最大限生かした料理ではないって事だろう。…たぶん。


「ま、完全な憑依戦闘が出来るやつはそうそういない。ヌイだって、まだまだ発展途上だ。お前らの場合、ちょっとイレギュラー過ぎだがな。とにかく、俺から言えるのはとにかくその状態で場数を踏めってことだな。はい、終わり。分かったらさっさと藻屑霊狩ってこい。そろそろ【WAVE2】だ。ヌイ一人じゃキツくなってくる頃だろ。」


「…うぇーぶつー?」



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