BBQ奉行
ザザザザ_________
森の中を高速で移動する一つの影。先ほど廃屋敷から出たひょっとこ男だ。その手には回収した『おかめ仮面』もある。
「・・・。」
何か違和感に気付いたのか、ピタリと立ち止まる。
「_____はい、ストップー。どうもこんばんわ、『仮面教』のひょっとこさん。人様のナワバリで何企んでたのか、ここで洗いざらい吐いてもらうぜ。」
逃走するひょっとこ男の前に立ち塞がったのは師匠。背後にはかよっちの姿も。かよっちが師匠の影に隠れながらも、精いっぱいの声量で叫ぶ。
「に、逃がしませんよっ!この辺り一帯は、私の能力で封鎖してますので・・・っ!」
師匠・かよっちペアは空間支配を最も得意とする。既にこの場所は海水浴場に面した小さな森ではなく、富士の樹海並みの広さにまで拡張していた。
「・・・。」
「だんまり、か。まぁ、てめーらの目的は分かってんだ。関西最大の暴霊団『仮面教』、最近てめーらが他の暴霊団のナワバリにまで手を出しているのは知っている。大方、今回は威力偵察の前段階の拠点作りってとこだったんだろ?」
今まで無言を貫いていたひょっとこ男だったがついに口を開く。
「_______所詮は田舎の寄せ集め集団。あんた、幹部やろ?大変やなぁ~。こんな辺鄙な場所までご苦労なこって。」
「あぁ?」
「いやいや、気に障ったんならすんまへん。せやかて、うちみたいな下っ端の為に幹部が出て来るやなんて…おたく、人手不足なんやなぁって。」
『まずい』と真っ先に感じたのはかよっちだ。こういうあからさまな煽りに対して自分の主人はめっぽう弱い。すぐに感情的になってしまうのだ。
「てめぇ_______下っ端の割には随分口が達者じゃねぇかよ…!!」
「だ、だめです乗っちゃ…!!」
必死に師匠をなだめるかよっち
「…あぁ、すまない。分かってる、俺の悪い癖だな。このまま仲良くお喋りして奴のペースに飲まれるのも馬鹿らしい。かよっち、さっさと決めるぞ。」
「は、はいっ。」
ズズズ______
憑依戦闘を開始する師匠とかよっち。かよっちが憑依することによって、師匠の容姿は大きく変化する。金髪だった師匠の髪は真っ黒に染まり、グラサンを外したその眼は銀色に発光している。
「_____やっぱ、この姿になると落ち着く。おい、ひょっとこ。残念だがお前とのおしゃべりもそろそろ終わりだ。BBQを待ってる奴らがいるんでな。」
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師匠とかよっちが、屋敷から逃げたひょっとこと戦闘していたことなどつゆ知らず、ほこりと汗でぐしゃぐしゃになりながら海の家に帰還する主人公一行。
「はぁ…はぁ…やっと帰って来た。それにしても、外の時間はそんなに進んでなくてよかったな。もし閉じ込められてた時間と同じように外の時間が進んでいたら、軽く夜が明けてたぞ…」
「…そだねー、やっとBBQにありつける…!けど、あの師匠のことだから、『あ、BBQは嘘。そんなのあるわけねーだろw』とかあり得そう・・・。」
「幽霊、縁起でもないこと言わないでください。もしそんなことがあれば…ヌイの犬を食べ______ぬわぁっ!?」
悪霊が言い終える前にヌイが飛び蹴りを喰らわせる
「何とんでもないこと言ってんだてめぇ!!人が飼ってる犬霊まで手を出すとかどんだけ食い意地汚ぇんだよ!」
「いててて…食べるわけないじゃないですか!犬ですよ!?全く…ヌイは冗談が通じないのです!」
「もー、疲れてんだからアホな言い争いはやめてよー。まぁ、でもこれで師匠が嘘ついてたらさすがに八つ裂きにしてやるわ。」
眼をギラつかせる幽霊。空腹時のうちの居候霊たちは普段より凶暴さが5割増しになる。さすがの師匠もただでは済まないだろう。
ジュー…パチパチッ
「ん?__________こ、この香りは!!!!肉の香りなのです!!!」
「う、嘘でしょ…これは、夢なんじゃ…!?」
疲れ切った俺たちの目の前に広がっていたのは、ここを出発する前に師匠とかよっちによって準備されていたBBQセットの上で焼かれる、いかにも高級そうな肉たち。
「み、見てください幽霊!肉だけじゃなく、え、エビとか!ホタテとか!なんかよく分からないけど高そうな貝とか!シーフードも充実しているのです!」
「しゅ、しゅごい…じゅる___よ、ヨダレが…!!」
目を輝かせる幽霊と悪霊。たしかに、ここまで凄いBBQは見たことがない。
「おぅ、お前ら遅かったな!BBQ奉行の俺様が用意してやったんだ、残さす食えよっ!」
「イエーイっ!!!」
トング片手に自慢げな師匠。先ほどまでの暗い雰囲気は吹っ飛び、一気に肉に飛びつく幽霊たち。
「さっきまで犬食うとか八つ裂きにするとかお前ら言ってなかったっけー?まぁいいや。お言葉に甘えて、俺も肉をいただきますかなーっと_____ん?アレは…?」
せっせと肉を焼く師匠の足元にある空段ボール。その中に、見覚えのあるものが。そう、『おかめ』『ひょっとこ』の2つの仮面が無造作に入れられていたのだ。




