肝試しⅠ
日中あれだけギラギラと砂浜を照らしていた太陽はすっかり水平線に沈み、辺りが暗くなる時刻
ヌイに連れられ海の家の前の砂浜に出ると、そこには炭を起こしながら手慣れた手つきでBBQの準備をする師匠とかよっちの姿が。2人とも妙にエプロン姿が似合っている。
「おー、お前らやっと集まったな。待ちくたびれたぞー。」
「うおぉーーーっ!夜の海を見ながらのBBQとは、なかなかオツな楽しみ方じゃん!!早く肉!肉焼こうよ!」
「この悪霊、もうお腹と背中がくっつきそうなのです!」
かなり本格的なBBQ設備を前にテンションが上がりまくりの幽霊と悪霊。だが次の師匠の言葉で一気に絶望の表情へと変わることになる。
「はい、それじゃ、てめーらにはこれからある仕事をしてもらう。もし達成できなければ、今夜の高級BBQ大会は参加不可だ。俺とかよっちだけで楽しむ。」
「は?仕事?これから?」
「えええええーーーー!!!」「嫌なのですーーーっ!!」
幽霊と悪霊が心の底から悲鳴を上げ、思わず俺も師匠に聞き返してしまう。暗くなったこの時間から仕事だと?たしか師匠の話では、夜の海は泳ぐ客がいないから藻屑霊も現れないんじゃなかったのか?
「…まさかこれから、夜の海に潜って藻屑霊を探してこいとか言うんじゃないだろうな…?俺たちじゃ死んでも無理だぜ?というか、死ぬわ。」
「さすがにそこまで鬼畜じゃない。安心しろ、陸での仕事だ。テメーらには、これからある『廃屋』に行ってもらう。」
廃屋という単語に幽霊が反応する
「廃屋ぅ・・・?そういや、前いった廃病院では死にそうな目にあったの思い出した…うぅ、思い返すだけでもゾッとするわ…。」
師匠が、この砂浜から少し離れた場所にある雑木林の方を指さしながら説明を続ける
「あそこの森の中にな、まぁ、ちょっとした屋敷があるんだが、海に遊びに来たやつらがよく『肝試し』に使ってたんだ。だが、ここ最近に野良霊が住み着いたらしくてな。色々と被害が出てるんだと。んで、ここの海の家の管理者からどうにかしてくれって頼まれたって訳だ。」
「なんでそれを俺たちがするんだよ。師匠も手伝ってくれよ!」
「俺とかよっちは戦闘向きじゃなしな。それに昼間ヌイの馬鹿が派手に暴れたせいで、一般人に気付かれないようずっと結界張ってたんだぜ?もうクタクタだよ。」
あれだけ暴れても何も騒ぎが起きなかったのはそういう事だったのか。相変わらずかよっちの『空間支配』能力は強いな。こんなに広いビーチ全体もカバーできるのか。
「つーわけだ、さっさと行ってこい。じゃないと高級BBQはお預けだぞー。まぁ、お前らだけカップ麺でもいいなら強制しないが?」
どうやら師匠は本気で言っているようだ。高級BBQがかかっている、ここは従うしかない。
「ちっ、まぁ、野良霊なら何とかなるだろ。ほら幽霊、悪霊、行くぞ準備しろー。」
「むぅー…肉の為なら仕方がない…か。すぐ終わらそ!5分で!」
「私たちが戻る前に肉全部食べたら許さないのです!」
肉の魅力を前に目をぎらつかせながらやる気満々な幽霊と悪霊。
「さっさと行ってこい!お前らには肉は残してやんないよーだっ!wフハハハハ!w」
容赦なくこちらを煽って来るヌイ。だがそんな彼女の表情も2秒後には師匠の無慈悲な一言で一転する。
「あ、ヌイ、お前もだぞ?これも修行だ。もちろん、尻尾巻いて戻ってきたりでもしたらお前も飯抜きな。」
「そ…そんな。じょ、冗談ですよね?師匠…??ウソだぁぁぁぁぁ__________!!!!」
そんなこんなで、『俺』『幽霊』『悪霊』『ヌイ』の4人パーティーは、楽しい夏の定番イベント『肝試し』へ繰り出したのだった。




