お見舞いⅢ
お見舞いに来てくれた藤宮が帰ったその後、体の異常を確かめる為の最終的な検査を受けた。医者の見立て通り、酷い筋肉痛以外は何ら体に異常はなく、無事明日の朝には退院できるとのこと。快適な入院生活も残り一泊となってしまった。
「そういや、俺が入院している間、ここにきているとき以外は何してんだ?」
ふと疑問に思い、なんだかんだ毎日お見舞いに来てくれている幽霊と悪霊に聞いてみる。
「へ?ふつーに家にいるけど?早く帰って来てよね、悪霊の面倒見るの大変なんだから!」
「ちょ!食べちゃダメって言われている家のお菓子漁りまくってるのは幽霊さんじゃないですか!部屋も散らかし放題だしっ!」
留守にしている我が家が今一体どんな状況になっているのか…想像したくない。
「にしてもお前ら、いつの間にか自由に外を徘徊できるようになってんのな。ちょっと前までは俺に憑いてないと家からも出れなかったのに。」
「我々はもう立派な上級霊なのです!そのくらい余裕なのです!」
「向かうところ敵なしって感じよ!どんな奴が来てもこの幽霊様が一捻りしてやるんだから!」
確かに、その辺の野良霊なら可能かもしれないが相手が研究会幹部なら話は別だ。奴ら以外にも俺の事を狙っているかもしれない勢力が他にも出て来るかもとサイトウも言っていたし…今後、可及的速やかにちゃんとした『憑依戦闘』を習得しなければいけない。
「はぁ…先が思いやられるなぁ…。」
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その夜
夕食を終え、とっくに消灯時間を過ぎた病室で俺は寝付けないでいた。
「うーん…全然寝れん…。昼にちょっと昼寝したせいか…?今は午前2時、か。くそー、話し相手が欲しいときに限ってあいつらいないんだよなぁ…」
こうして馬鹿みたいに独り言が多いのにも理由がある。『病院』『深夜』そして一人きりの『個室』、怖くなる雰囲気になるのには十分すぎる条件がそろっている。今までの夜はぐっすりと眠れていたから気にしていなかったが、夜の病院というのは妙に恐怖心をそそる。
「むぅー…そしてタイミングを見計らったかのようにすごくトイレに行きたくなってきてしまった…。行きたくねぇー…。」
だがここで漏らすわけにもいかず、仕方なく痛みで重い体をベッドから起こす。
俺がこんなにビビっている理由はもう一つあった。それは、病院にはうじゃうじゃと野良霊がいるという点だ。サイトウは危ない霊はいないと言っていたが、今までの経験上、野良霊は大概が色んな意味でやべー奴ばかりだ。危険性はなくとも、暗い廊下で出くわしたくない。
ガラッ_____
思い切って病室のドアを開けるも、非常灯に照らされた薄暗く不気味な廊下が更に恐怖心を煽る。
「こ…怖えぇ…。やっぱ我慢しようかなー…。」
「______大丈夫?一緒について行ってあげようか?」
「あっ、お構いなくー。すみません、うるさくってー…__________ん?」
突然聞こえてくる背後からの女の声に、思わず普通に答えてしまう。あれ?ここって個室だよな?なんで女の声が聞こえてくるんだ?おかしいよな?いつの間にか看護師さんが来ていた?いやそんな筈は_______などとさまざまな疑問が頭の中で沸き起こるも、更に背後から女の声が続く。
「どうしたの?漏れそう?」
「_______だ…誰ですか!?」
意を決して思い切りって振り返る
「あら、ごめんなさい。ずっと居たんだけど気付いてなかったのね。久しぶりだから私の事忘れちゃった?超常現象研究会のキサキよ。こうして会うのは大学で会った時以来かしら?ふふっ」
「な…なんでアンタがここに…!?」
学生とは思えないほどの妖艶な気配を放つその美しい容姿を忘れるはずは無い。来客用のソファーに座っていたのは、こうして俺が入院する羽目になった元凶である研究会のトップ、キサキだった。




