拉致Ⅰ
突如現れた謎の人形たち。
フランス人形にボコられ、日本人形の黒髪に拘束された俺は成す術もなく床に転がっていた。
「う・・・動けねぇ・・・お、怨霊さーん・・・助けてくれー!!」
部屋の奥にいるはず怨霊さんに助けを求めるが、何の反応もない。
流石にこの状況になって「酒が飲めないから」といった理由で俺を見捨てるほど、怨霊さんは非情じゃないだろう(たぶん)。となると、考えられることは一つ。あっちにも敵が来ているってことだ。恐らく窓から侵入したのだろう。
ギリギリギリ・・・
ゆっくりと締め付けてくる、日本人形の髪
「にしても、この髪・・・ただの人形の髪の毛にしちゃ頑丈すぎる・・。鉄のワイヤー並みだ・・・!何なんだこの人形共は・・??霊体じゃないよな・・・実体だ。何で動いてる・・・?」
無表情で見下ろしてくる人形たちとの睨み合いは、そう長くは続かなかった。
廊下の先から、この人形たちの主人と思われる一人の背の低い少女が現れる。
「_______良くやったわ、2人とも。褒めて差し上げます。」
「嗚呼・・・姫さま・・・!いと美しきこと・・・!」
「Que les mots sont trop bien pour moi!!(勿体なきお言葉!!)」
『姫さま』と呼ばれるゴスロリ風ファッションの少女。
少女の言葉に、ぴょんぴょんと飛び跳ねて反応する2体の人形。ただの操り人形ではないらいしい、明らかな意思を持っているようだ。フランス人形の方は何言ってるのか分かんないけど。
「おい・・・お前がこいつらの親玉か・・・?あんたら、外に集まってんのもまとめて『研究会』の差し金だろ!?これ、普通に犯罪だz________ウグッ!!」
言い終わらないうちに、またもやフランス人形に横腹を蹴られる
「surveille ton langage!!(口を慎め!!)」
痛ぇ・・・。なんて蹴りだ。息が出来ない・・・!!
「こらこら・・・『それ』は大事な『道具』なのですから、壊しちゃだめですよ?」
ゴスロリ少女はうっすらと笑みを浮かべながらも、俺を見下すその眼は冷酷そのもの。完全に俺のことを『モノ』としか見ていない眼だ。こいつ、やばい_________
「さ、部屋の中にいるのはジェイソン達に任せて、私たちはこの『お宝』をお持ち帰りするわよ。」
「いと、かしこまりました。姫さま。」
「D’accord princesse(承知いたしました。姫さま。)」
体を縛っていた髪がそのまま宙に俺を持ち上げ、ゆっくりと部屋から運びだされる。まずい、このまま拉致られたら何されるか分かったもんじゃない。何とか反撃しなければ・・・!!そうだ、いくら実体がある人形でも、その動力は霊力のはずだ。俺の力でこいつらの霊力を暴走させることが出来れば何とかなるかもしれない。
「ぐっ・・・一か八か・・・!!」
人形たちに自分の力を流し込むイメージで念を送る。しかし、変化が起きる様子はない。
「な、何でだ?さっきの裏通りで襲ってきた奴らには上手くいったのに・・??」
「何かしようとしてるみたいだけど、無駄よ。あなたのその『能力』、そんな都合よく何度も引き出せるものでもないのよ?あなた、自分の事何も知らないのね。まぁいいわ。わたくしがあなたの事、十二分に『使って』あげるから。フフッ、楽しみだわ。」
「くそっ・・・離・・・せ・・・!!」
ゆっくりと意識が薄れていく。
「あなた、少しうるさいわね。眠ってなさい。あなたはもう、私の『物』なんだから。」




