カップルが休憩するところⅠ
そんなこんなで、『俺』『藤宮』『怨霊さん』という謎のパーティーは、研究会の連中を警戒しつつ夜明けまで安全に身を隠せる場所を見つけるべく、雨が降る夜の街を歩いていた。
尋問するつもりだった研究会の構成員は、一向に意識を取り戻す気配がなかったのでそのまま捨てて来た。
「・・・それで?怨霊さんが知ってる場所ってどこなんですか?無難にカラオケボックスとか?」
俺が思いつく限りではそのくらいしか思い浮かばない。あとはネカフェとか。こんな時に、以前出会った『地縛霊アリサ』が根城にしているカラオケ店に行けば、少なくとも外部からの侵入者に対しては最強のセキュリティを誇る場所なのだが、ここからでは遠すぎる。
「ふふーん。これから行くところはもっといい場所なのだよ!まぁ、もうすぐだから楽しみについてきなさいっ!」
自信ありげな顔で答える怨霊さん。
「うーん・・・なんか心配だわ。にしても、藤宮はマジで帰らなくて大丈夫なのか?ここから先は何が起こっても安全は保障出来ねーぞ?」
俺の腕をがっちり掴んで無言で付いてくる藤宮。
こっちには『最強』の怨霊さんがいるから、そんじょそこらの野良霊や霊使いには負ける気はしないが、相手はあの『研究会』だ。どんな刺客を送り込んでくるか分からない。
「・・・私の知らないとこで、先輩が何かしてるとか許せないです。先輩の行動は、全部把握しておかないと気が済まないので。っていうか、そんなに私を帰して、あの綺麗な女の人と一緒にいたいんですか?何か怪しいですよ。」
ジト目で睨んでくる藤宮
「綺麗な女の人って・・・いや確かに顔は綺麗だけど、怨霊さんは霊・・・、ま、まぁいいか。」
何か藤宮怖い。思考が完全にヤンデレのそれなんですが。
そうこうしているうちに、怨霊さんが言っている目的地へと到着する。
「ほーい、着いたよー!ここが、今夜泊まる場所っ!」
「おー、ホテルかー・・・って、お、怨霊さん?ここってさぁ・・・」
目に飛び込んできたのは、派手にライトアップされた外装と【休憩〇〇分3000円~】などと値段が書かれた大きな看板。
そう、世にはびこるカップルが『休憩』するために利用するホテル、通称『ラ〇ホ』だ。
「せ、先輩!こ、ここって、ララ・・・ラ〇ホですよね!?」
さすがの藤宮も動揺しているのか、顔を真っ赤にしている。
「わざわざ口に出さなくても分かるわ!・・・この辺はホテル街だし薄々は勘付いていたけど、マジでラ〇ホかよっ!この面子で泊まれるかよ!」
「ん?私は霊だから、フロントの店員が霊感持ってない限りは、君と藤宮ちゃん二人だけしか見られないから、普通のカップルだと思われるんじゃないかな?」
涼しい顔で答える怨霊さん
「いや、でもダメでしょ!藤宮は未成年だし、がっつり制服着てるじゃん!通報されるよ!」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。いやー、一回入って見たかったんだよね!ラ〇ホ!」
駄目だ。怨霊さん、完全にこの状況を楽しんでやがる。
「あんた霊なんだから、いつでも自由に出入りできるでしょーが。追われているこの状況でわざわざラ〇ホ入らなくてもいいでしょ・・・。」
「一人で入ってもつまんないじゃーん。あれ?まさか君、ラ〇ホ入るのビビってるのかなー?これだか、童てi_____」
「だ、誰がビビってるって!?いいでしょう、そこまで言うなら入りましょうか!ほら、いくぞ藤宮!ちぇ、チェックインすっぞ!」
「ふぇ!?は、はい先輩!!」
完全に怨霊さんの煽りに乗ってしまう形となってしまったが、好き勝手に言われ放題なのも癪に障る。それに、歩きっぱなしでそろそろ休みたかったところだ。藤宮の顔にも疲労が出始めていたし・・・決して言い訳ではない。
「ふふーん!そうこなくっちゃ!」
嬉しそうな怨霊さんと恥ずかしがる藤宮とともに、未だかつて入ったことのない『秘境』へと足を踏み入れる俺たちだった。




