長い夜
「ぼ・・・暴走?何言って・・・くそ、にしても何だこの異常な力は!霊を制御出来ねぇ!!」
バチバチと周囲に細い電撃のようなものを飛ばしながら、構成員たちの霊はもがき、暴れている。
『チ・・・チカラ・・・溢レル・・・!!』
構成員たちが動けないのは、自らの契約霊の『金縛り』の力が暴走して、そのまま自分に効果が跳ね返ってしまっているようだ。次々に気絶し、その場に倒れていく。
「せ・・・先輩。一体何したんですか?」
「いやぁ、実のところ、一か八かだったんだよ。でも上手いこと俺らだけ金縛りが解除出来て良かったわ。」
今までも何回かあった、霊力の暴走。初めは師匠とヌイの研究会の幹部ペアが襲ってきた時だった。最近では、露天風呂で幽霊と悪霊が精神支配の影響で暴走した。いずれも、俺の意志とは無関係に起こってしまったが、今回は『相手の霊力を暴走させる』という明確な意思の元、意図的に暴走させることに成功した_____ぶっちゃけ、何で出来たのかはよく分かんないけど・・・。
「ま、まぁ・・・とにかく!今のうちに早く逃げるぞ!いつこいつらの仲間が増えるか分かんねぇし。」
「全く・・・ほんとに意味わかんない事ばっかりですね、先輩は!後で絶対説明してもらいますからね!」
今度こそ藤宮を連れて逃げようとしたとき、気絶している構成員たちの中から、ゆらりと立ち上がる数体の影が。
【ヒヒヒヒ・・・・チカラ・・・テニイレタ。イキタ、ニンゲン、コロス!!!!】
【ギャハハハハ!!!!!】
「なっ・・・これはちょっと・・・やり過ぎたかもしれんな。まずい。またピンチだわ・・・。」
「次から次へと・・・!先輩、何なんですかこいつら!私もう泣いちゃいますよ!?」
纏った禍々しいオーラに、長く伸びた爪。それに、真っ赤に充血した目。構成員たちが連れていた下級霊は、当初の無表情から大きく変貌している。前にも似たようことあったっけ、確か引っ越した直後、俺の部屋に下級霊が出た時だ。どうやら、あの時のように霊力の暴走によって『狂暴化』させてしまったようだ。こうなったら手の付けようがない。手当たり次第に人間に襲い掛かってくる。
【コロスコロスコロス!!!!!ギャハハハハ__________ギャッ!!!?】
飛びかかって来た一体が、見えない壁のようなものにぶつかり反対方向へ吹っ飛ぶ。
「あれ?君たちまだいたの?それより、何なのこいつら。なーんか騒がしいから来てみれば。」
「お、怨霊さん!!助かったぁ~~~。っていうか、もうちょっと早く来てくれても良かったのに!」
怨霊さんが来てからは早かった。あっという間に数体の狂暴化した下級霊たちはねじ伏せられ、消滅していった。
一息ついてから、今起こったことを怨霊さんに話す。
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「なるほどねー。君も狙われる感じになっちゃってるんだね。ほんと次から次へと湧いて出て来るんだから・・・にしても、今夜は数が多いわね。研究会の奴らも追い込みかけてるのかも。」
「もしかして・・・この辺一帯あちこちにいるってことですか・・・?」
「・・・君も、契約霊なしに無事家まで帰るのは難しいかもね。最低でも夜が明けるまでは。」
「う・・・じゃあ、今夜はむしろ怨霊さんと一緒にいたほうが安全・・・か。」
「そゆこと!!今夜は朝まで飲むわよ!!」
何故か嬉しそうな表情の怨霊さん。
現在、研究会が追っている『ターゲットは』怨霊さんだが、さっきみたいに、この厳戒態勢の中研究会の構成員に俺が出くわすと、問答無用で襲われるかもしれない。
「それじゃ、こいつらの尋問もしなきゃだし、場所変えるよ!わたし、いいとこあったの思い出したの!」
「はいはい・・・あ、藤宮は一般人だし、むしろ俺と一緒にいない方が安全だと思うわ。悪いけど、今日は一人で帰ってくれないか?」
「・・・行きます。」
「へ?」
「私も、お二人と一緒に付いていきます!親には、友達の家に泊まるって連絡したので大丈夫です!」
「・・・話聞いてた?俺らと一緒にいたら、さっきみたいに危険な目に合うよ?」
「いや、もう決めました!今夜は最後まで先輩についていきます!」
今夜は長い夜になりそうだ_________




