不穏な街
ザー・・・・・
「うわー、今日雨降るとか聞いてないぞ・・・。傘持ってないしどうするかな。」
休憩室を出て裏口の扉を開けると、地面を叩きつける雨音が俺と藤宮を出迎えた
「あ、先輩。ここに置き傘がありますよ。1本だけだけど。仕方ないですね、先輩と二人で相合傘で帰りましょう。」
傘立てに残された1本の傘を手に取りながら嬉しそうにする藤宮
あぁ・・・この顔はアレだ。いつもの俺をからかうときの顔だ。
「もしかして、先輩照れてるんですかぁー?そっかー、今まで女の子と相合傘なんてしたことないですもんねー。」
「は?てっ、照れてねーし!ってか、なんでお前が俺の相合傘経験を知ってるんだよ・・・もういい、ほら、さっさと帰るぞ。」
半ば強引に藤宮の手から傘を取り、俺たちは雨が降る夜の町へと繰り出した。相合傘で。
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時刻は午前0時前。雨が降っていることもあり、駅前の繁華街を歩く人々はいつもよりまばらだ。急に降り出した雨のため、皆小走りで家路を急いでいる。
「ちょ、藤宮さん?さっきからちょっと引っ付きすぎじゃないですかね・・・?」
「だってこの傘小さいんですもん、先輩もちょっとこっちに寄ったらいいのに。そんなんじゃ、肩濡れますよー?」
いかん、さっきからずっと藤宮のペースだ。このまま年下の生意気な後輩にイジられるのは避けなければ。何とか話題を逸らさないと・・・。
「あぁ、そういえば。さっき言ってた変な人たちって何なんだよ。・・・もしかして、こうして俺をからかうための口実の嘘とか言うなよ?さすがに怒るぞ。」
「嘘とか酷いこといいますね先輩!最近、この駅周辺ほんとに変な人多いんですよ?」
「ほーぅ。多いって、いっぱいいるのか?どんなとこが変なんだ?」
「急に呼び止められて、じっと顔を覗き込まれるんですよ。わたしの友達とかも、結構同じ目に遭ってるらしいです。まだ、この辺りの繁華街とかなら人がいっぱいいるしいいんですけど、人通りが少ないところで出くわしたらと思うと、さすがに怖くて・・・。」
藤宮は、少しおびえた様子で下を俯きながら話を続ける
「しかもその不審者、単独犯じゃなくて集団でこの街に出没してるっぽいんですよ。なんか、『誰かを探してる感じ』って友達とか他の高校の子が言ってました・・・。」
話を聞いているうちに、俺たちは繁華街から駅裏の方へとさしかかる。この辺りは、居酒屋等が入っている雑居ビルが多く立ち並んでおり、ビルとビルの間の裏路地など女子が一人で夜歩くには、いささか危険な場所である
「何だその不気味な集団は・・・。そんな噂聞いたことないぞ?」
「・・・でしょーね。どうせ先輩、話し相手が私くらいしかいないんでしょ?悲しいですね。」
話し相手くらいいるわ!と言いたいところだが、その話し相手は『居候の霊2人』とは言えない。生きている話し相手は藤宮くらいだ・・・。あ、ハルカがいたがあいつは除外。
「まぁ確かに、この辺りはそんな噂無くても、夜一人で歩くのはちょっと怖いよなー。でも流石に毎回送るのは無理だぞ?そういうのは親とかに頼めって。」
「うちの親、私にあんま関心無いんでそれは無理かもですねー・・・。」
「そんなことないだろ。まぁ、家族関係最悪な俺が言える立場じゃないが。」
「えっ、それってどういう____________」
ヒュッ
バァァンッ!!!!!!
「「!?」」
突如、路地裏から何かが吹っ飛んできた________人だ。吹っ飛んできた男2人は、路肩に停めてあった車に激突し、その場で揃ってダウンしている。
「ふぅーー・・・ほんっと、次から次へとキリがないんだから________ん?おやおやー?君はいつぞやの!久しぶりじゃーん。」
恐る恐る路地裏を覗くと、そこにいたのは最近見かけなかった俺の知る中で最強の霊、怨霊さんだった。
「こんなところで何してるんすか、怨霊さん・・・。」




